電池材料粒子内部の高精細な可視化に成功~多次元イメージング計測とデータ科学の連携~

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2021-06-30 東北大学

【本学研究者情報】〇多元物質科学研究所 助教 石黒志

【発表のポイント】

  • 電池材料など複雑・不均一な内部構造を分析するナノ顕微鏡や化学分析ツールが求められている
  • リチウム電池正極活物質粒子内部の化学状態を高分解可視化
  • 放射光計測データのデータクラスタリングにより構造の抽出・分類に成功
  • 先端材料のナノ機能分析の効率化に期待

【概要】

電池材料などとして使われる、内部構造が複雑な先端材料の働きについては未だ不明な点が多く、内部の形状だけでなく化学状態を高解像で可視化するツールの確立が急務です。東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 石黒志助教(理化学研究所放射光科学研究センター 客員研究員)、高橋幸生教授(理化学研究所放射光科学研究センター チームリーダー)、東北大学大学院工学研究科 上松英司大学院生(理化学研究所放射光科学研究センター 研修生)、早稲田大学 大久保將史教授、産業技術総合研究所 細野英司博士、北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 ダム ヒョウ チ教授らの共同研究グループは、リチウム電池正極材料の一つであるニッケル−マンガン酸リチウム粒子の1粒に対して、2次元空間での試料の高空間分解能化学状態可視化技術である「タイコグラフィ-XAFS法」[1][2] 測定を大型放射光施設「SPring-8」[3] で行い、計測データを粒子内部のマンガンとニッケルの元素分布や価数分布のデータマイニングと連携させることで、粒子内部の複数の不均一な構造の可視化に成功しました。

本研究成果は今後、さまざまな先端機能性材料のナノ構造・化学状態分析に応用されるものと期待できます。

本研究成果は、米国現地時間令和3年6月17日に、学術専門誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」のオンライン版に掲載されました。

図 スピネル型LNMO粒子内化学状態パラメータ間の相関散布図(左)と
データクラスタリングによる分類・抽出により得られた相関グループの2次元実空間内の分布図(右)。

【用語解説】

[1] X線タイコグラフィ
コヒーレントX線回折イメージング手法の一つ。X線照射領域が重なるように試料を二次元的に走査し、各走査点からのコヒーレント回折パターンを測定する。そして、回折パターンに位相回復計算を実行し、試料像を再構成する手法。

[2] X線吸収微細構造(XAFS)
X線吸収スペクトルの吸収端付近にみられる固有の構造。XAFSの解析によって、X線吸収原子の電子状態やその周辺構造などの情報を得ることができる。XAFSは、X-ray Absorption Fine Structureの略。

[3] 大型放射光施設「SPring-8」
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その利用者支援は高輝度光科学研究センターが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する強力な電磁波のこと。SPring-8では、遠赤外から可視光線、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光を得ることができるため、原子核の研究からナノテクノロジー、バイオテクノロジー、産業利用や科学捜査まで幅広い研究が行われている。

詳しい資料は≫

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター
(東北大学多元物質科学研究所 兼務)
助教 石黒 志(いしぐろ のぞむ)
教授 高橋 幸生(たかはし ゆきお)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
広報情報室

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