スマートセル開発に寄与するデータ群をデータベースとして整備

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スマートセルを高速に構築、「スマートセルインダストリー」創出を目指す

2021-06-10 新エネルギー・産業技術総合開発機構,製品評価技術基盤機構

NEDOと製品評価技術基盤機構(NITE)は、「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」(スマートセルプロジェクト)の一環で、このたび本プロジェクトで蓄積した基盤技術や有用物質生産に関するデータをNITEの生物資源データプラットフォーム(DBRP)に集積して整備しました。

これらのデータは、スマートセルの構築・評価を行うための基盤技術に関するデータや、コレステロールエステラーゼなど有用物質生産に関するデータで構成されています。今後、企業や大学、研究機関などがスマートセル設計のための情報解析やデータを介した技術マッチングに用いることで、ターゲットとする特定の物質に対するスマートセルを高速で構築することが可能となります。これにより、高機能な化学品や医薬品原料などをバイオプロセスによって効率よく生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」の創出を目指します。

なお、これらのデータはNITEのDBRPウェブサイトで6月11日から参照できます。

1.概要

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2016年度から2021年度まで植物や微生物の細胞が持つ物質生産能力を人工的に最大限引き出した「スマートセル」によるものづくりの実現を目指して「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発※1」(以下、スマートセルプロジェクト)に取り組んでいます。このプロジェクトは、化学合成では生産が難しい有用物質の創製や、従来以上の生産性を実現することなどを目的に、スマートセルを構築する基盤技術および特定の生産物質における実用化技術の開発を推進しています。先端的なバイオテクノロジーと計算科学を組み合せることで、設計(Design)、構築(Build)、試験(Test)、学習(Learn)のワークフロー(DBTL)を展開し、医薬品を含むファインケミカルやバイオベース化学品、バイオ燃料などのさまざまな有用物質生産にバイオプロセスを取り入れ、ものづくりを加速させることを目指しています。

このたびNEDOと独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は、本プロジェクトで蓄積した基盤技術や有用物質生産に関するデータを重要な成果ととらえ、プロジェクト終了後も成果を散逸させることなく活用する形態として、NITEの生物資源データプラットフォーム(DBRP:Data and Biological Resource Platform、図1)※2への集積・整備を完了しました。プロジェクトで得られた解析データや実験結果を活用できます。DBRPにスマートセルの構築・評価を行うための基盤技術に関するデータや、コレステロールエステラーゼ※3など有用物質生産に関するデータを多数収載し、一元的に集約・公開することで、スマートセル設計のための情報解析や、データを介した技術マッチングに用いられることを想定しています。今後、企業や大学、研究機関などがデータを広く活用することにより、ターゲットとする特定の物質に対するスマートセルを高速で構築することが可能になります。これにより、高機能な化学品や医薬品原料などをバイオプロセスによって効率よく生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」の創出を目指します。同時に協業を促進し、微生物を活用したものづくりの社会実装やバイオエコノミーの拡大に貢献します。

なお、今回集積したデータはNITEのDBRPウェブサイトで6月11日から参照することができます(リンク:DBRPウェブサイト)。

図1 DBRPに含まれる情報の概念図

2.今回の成果

国家プロジェクトで取得されたデータは保管と活用の重要性が指摘されており、政府の統合イノベーション戦略推進会議がまとめたバイオ戦略2020ではバイオ製品開発におけるデータ基盤構築「ビッグデータ利活用プラットフォーム」を整備することが掲げられています。本プロジェクトでは、バイオテクノロジーと計算科学を組み合せることで有用物質を生産するスマートセルを創出する基盤技術を構築するとともに、これらを複数設定したターゲット物質に適用して有効性を明らかにしてきました。その過程で得られたさまざまなデータは、これからの情報解析技術の深化やスマートセルの設計指針を導き出す上で有用です。そこで、プロジェクト終了後もデータが各企業や大学、研究機関に散逸することなく利用しやすい形で集積する手法を検討し、NITEのDBRP(図2)に収載することとしました。これにより安全保障貿易の管理体制を整えた機関を通じて、適切に情報を管理・活用する体制を構築できました。

DBRPのトップ画面

図2 DBRPのトップ画面

今回提供を開始したデータは、スマートセルプロジェクトの16課題(表1)で得られたゲノム解析※4、トランスクリプトーム解析※5、プロテオーム解析※6、メタボローム解析※7など合わせて1,262件の解析データです。ここには酵素の生産性向上を目指してアミノ酸変異を導入した生物資源のデータやそれらの株のゲノム上の遺伝子配列データ、有用物質の生産性に関するデータも含まれます。これらの有用な解析データにDBRPを通じてアクセスできることで、スマートセル技術による有用物質生産の加速と、データを介した技術マッチングによる新たな価値創出が期待されます。

表1 収載されるスマートセルプロジェクト課題

課題名(プロジェクト名)
実施機関名

コレステロールエステラーゼの生産性向上による有効性検証
旭化成ファーマ株式会社

コリネ菌を用いた有用芳香族化合物の生産性向上による代謝解析技術の有効性検証
公益財団法人地球環境産業技術研究機構

紅麹菌を用いた色素生産制御による有効性検証
国立研究開発法人産業技術総合研究所

情報解析に適したゲノム・トランスクリプトーム解析技術の開発
国立研究開発法人産業技術総合研究所

微生物を用いたパプリカ由来カロテノイドの新規生産法の有効性検証
国立研究開発法人産業技術総合研究所

有用イソプレノイドの生産性向上による代謝解析技術の有効性検証
三菱ケミカル株式会社

ω-3系多価不飽和脂肪酸含有油脂の生産性向上による有効性検証
学校法人新潟科学技術学園 新潟薬科大学
国立大学法人長岡技術科学大学

ハイスループット微生物構築・評価技術の開発
国立大学法人神戸大学

メタボローム解析技術開発
国立大学法人神戸大学

リモネンをはじめとするモノテルペノイド酸化酵素を用いた酵素設計技術の有効性検証~MDシミュレーションを利用した酵素改変技術の開発~
神戸天然物化学株式会社
国立研究開発法人産業技術総合研究所

微生物を用いたアルカロイド等の新規生産法の有効性検証
石川県公立大学法人石川県立大学
国立大学法人神戸大学

プロテオーム解析技術開発
国立大学法人大阪大学

自家蛍光顕微鏡開発
国立大学法人筑波大学
株式会社ニコンソリューションズ

糸状菌を用いた有用タンパク質同時生産制御による有効性検証
国立大学法人長岡技術科学大学

新規代謝経路の設計・最適化手法の開発
国立研究開発法人理化学研究所

Combi-OGAB法と機械学習による迅速なDNA配列因子組み合わせの探索技術の開発
味の素株式会社

DBRPのタグリスト画面上部の「プロジェクト」のリストで、各登録課題がご確認いただけます。

【注釈】
※1 植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発
研究開発項目:高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発
プロジェクト期間:2016~2021年度
プロジェクト概要: 植物等の生物を用いた高機能品生産技術開発
※2 NITEの生物資源データプラットフォーム(DBRP)
生物資源とその関連情報(生物の特性情報、オミックス情報など)が利用できるデータプラットフォームです。
※3 コレステロールエステラーゼ
コレステロールエステルを加水分解してコレステロールと脂肪酸にする酵素です。体外診断薬などに用いられています。
※4 ゲノム解析
ゲノム(genome)は生物がもつDNA上のすべての塩基配列のことです。このゲノムの配列情報を調べ、その配列情報から機能を推定する解析を行うことです。
※5 トランスクリプトーム解析
細胞に含まれるmRNAの種類や蓄積量を網羅的に測定し解析することです。
※6 プロテオーム解析
細胞に含まれるタンパク質の種類や蓄積量を網羅的に測定し解析することです。
※7 メタボローム解析
細胞に含まれる低分子化合物(代謝物)の種類や蓄積量を網羅的に測定し解析することです。
3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 材料・ナノテクノロジー部 バイオエコノミー推進室 担当:林、金田
NITE バイオテクノロジーセンター 計画課バイオデジタル推進室 担当:市川、木村

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、橋本

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