129億年前から銀河は回転していた

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アルマ望遠鏡と天然のレンズが捉えた宇宙初期の小さな銀河とその内側

2021-04-22 国立天文台

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した遠方銀河団「RXCJ0600-2007」の画像に、アルマ望遠鏡で観測した129億光年彼方の遠方銀河「RXCJ0600-z6」の重力レンズ像を赤色で合成した画像
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した遠方銀河団「RXCJ0600-2007」の画像に、アルマ望遠鏡で観測した129億光年彼方の遠方銀河「RXCJ0600-z6」の重力レンズ像を赤色で合成した画像。銀河団による重力レンズ効果で、RXCJ0600-z6からの光は増幅され像も拡大されたため、3つ以上に分かれて見えていました。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Fujimoto et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope) オリジナルサイズ(1.2MB)

アルマ望遠鏡を使った観測で、ビッグバン後9億年の宇宙に、天の川銀河のわずか100分の1の質量という小さな銀河が発見され、さらにこの銀河が回転によって支えられていることが分かりました。この小さな銀河よりも手前にある銀河団の重力によって光が増幅される「重力レンズ効果」を活用した画期的な成果です。

宇宙は138億年前にビッグバンによって誕生し、その数億年後に最初の小さな銀河が作られ始めたと考えられています。宇宙初期の銀河進化の全体像をつかむ上では、この時期の銀河の姿を明らかにすることが欠かせません。しかし、宇宙初期に作られた銀河は小さなものが多く、しかも小さな銀河は星もガスも少なく暗いために、従来の観測では調べることが困難でした。

こうした暗い銀河を研究するため、重力レンズ効果で拡大された宇宙初期の銀河を多数探し出す大規模な観測が、アルマ望遠鏡を使って実行されました。重力レンズ効果は、天体から出た光が途中にある大質量天体の重力によって曲げられて地球に届く現象で、遠くの天体の光が増幅されたり、天体の姿が引き伸ばされたりするため、暗い天体を探し出すのに有効です。

この研究では、アルマ望遠鏡としては非常に長い95時間という観測時間を費やし、重力レンズを引き起こしている33の銀河団の中心領域をくまなく調べました。そのうちの一つであるうさぎ座の方向にある銀河団の背後に、重力レンズ効果を受けた遠方銀河を発見し、その銀河からの光が129億年前に発せられたことが分かりました。これは、宇宙の誕生後9億年という早い時期に当たります。またこの銀河の像を、重力レンズ効果を受ける前の姿に復元した結果、総質量が太陽の約20億ないし30億倍程度であることが分かりました。天の川銀河の約100分の1の質量に当たるたいへん小さな銀河です。さらに、銀河の内部構造を約1000光年という高い分解能で描き出し、この銀河が回転によって支えられていることを明らかにしました。これほど早い時代の宇宙で、このような小さな銀河が回転によって支えられていることが分かったのは、今回が初めてです。

この遠方銀河は、2021年秋に打ち上げを迎える米国のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使った観測も予定されています。アルマ望遠鏡の電波観測とJWSTの赤外線観測を組み合わせた、より詳細な銀河の構造と運動の様子の解明が期待されます。

この研究成果は、Seiji Fujimoto et al. “ALMA Lensing Cluster Survey: Bright [CII] 158 μm Lines from a Multiply Imaged Sub-L* Galaxy at z = 6.0719”として米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に、またNicolas Laporte et al. “ALMA Lensing Cluster Survey: a strongly lensed multiply imaged dusty system at z > 6”として『英国王立天文学会誌』に、それぞれ2021年4月22日付で掲載されました。

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