CMグループに属する最も始原的な隕石の発見: Asuka 12085、12169、および12236

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はやぶさ2をはじめとする太陽系形成の研究に貢献

2020-11-10 国立極地研究所

国立極地研究所の木村眞特任教授、山口亮准教授、今栄直也助教らの研究グループは、南極で最も始原的な隕石を発見しました。これらは、Asuka 12085、12169、および12236隕石で、第54次南極地域観測隊とベルギー南極観測隊の合同ナンセン氷原隕石探査(2012~13年)で採集されたものです。組織観察やX線回折による分析の結果、これらの隕石はCMコンドライトに分類され、かつ、水による変質作用をほとんど受けていないことが明らかになりました。このようなCMコンドライトはこれまでには南極、非南極を通して見つかっておらず、太陽系の誕生や進化を知るための重要な試料となります。この成果はPolar Science誌で公表されました。

裸氷上でのAsuka 12236

これらの隕石は、CMコンドライトとよばれるグループに分類されます。CMコンドライトは、太陽系で最も古い物質と考えられている炭素質コンドライトの中で、最も多く発見されているグループで、これまで648個が見つかっています(国際隕石学会データベース)。極地研も140個のCMコンドライトを所有しています。これらの隕石は、直径0.3ミリメートル前後の主にマグネシウムに富む珪酸塩鉱物から構成される球粒(コンドルール)が全体の4割ほどを占めます。残りの大部分は微細な物質の集合体(マトリックス)から構成されています。従来知られていたCMコンドライトは、水による変質作用を受けており、その程度はCMコンドライト隕石ごとに様々であることが知られています。そのため、CMコンドライトは水の含有量や変質鉱物の量などにより、サブタイプ2.7から2.0に区分されていました。また、2次的な加熱により脱水作用を受けている試料が認められることもこれらCMコンドライトの特徴の一つです。

今回研究された3つの隕石については組織観察、X線回折、ラマン分光分析、元素組成分析、酸素同位体分析がなされました。その結果、これらの隕石はいずれもCMコンドライトですが、水による変質作用をほとんど受けていないことが明らかになりました。このような始原的隕石(形成当時から変化を受けていない隕石)は従来報告されておらず、新発見となりました。分析結果から、Asuka 12085をサブタイプ2.8、Asuka 12169を3.0、Asuka 12236を2.9に分類しました。これにより、サブタイプ3.0から2.8がCMコンドライトの分類基準に加わることになりました。こうして今回の研究ではじめてCMコンドライトの変質作用以前の状態が明らかになりました。

これらの隕石に含まれるコンドルールやマトリックスは、原始太陽系星雲内での生成物であり、その形成に関わる条件や環境は、その後の変化を免れた試料からのみ明らかにすることができます。そのためこれらの始原的隕石の発見は非常に重要で、太陽系誕生当時、どのような物質が存在し、どのようなプロセスを経たかを解き明かす最良の試料になると考えられます。

すでに、国内外の多くの研究者がこれらのCMコンドライトに着目しており、研究がなされ始めています。その結果、生命の起源とも関わりのある有機物(アミノ酸)や(文献1)、プレソーラー粒子(太陽系形成以前の物質)が、従来知られていたどのCMコンドライトよりも多く含まれるという結果も得られています。また、マトリックスが高解像度の電子顕微鏡により調べられ、他のCMと異なって変質鉱物がほとんど含まれないことも明らかになっています。これらの結果は今回発見されたCMコンドライトが太陽系始原物質の一つであることを裏付けると同時に、太陽系初期の物質がどのようなものであったかに関する貴重な情報を提供するものとなっています。今後のさらなる研究により、太陽系初期の特徴がこれらの隕石から明らかになると期待されます。

また、はやぶさ2探査機が持ち帰る予定のリュウグウの試料もこのCMグループが有力候補の1つなので、回収試料から今回のCMコンドライトのような岩片が発見される可能性もあります。両試料を比較検討することにより、太陽系初期の物質や小惑星の形成環境に関する知見が得られることも期待されます。そのため今回の隕石は惑星探査の観点からも注目されます。今回の発見は近年の南極隕石探査により回収された試料であり、このような生命の起源や惑星の始原物質とも関わりのある貴重な隕石が発見されたことは、今後も隕石の探査を継続し未知の隕石種を発見する意義があることを示唆しています。

発表論文

掲載誌: Polar Science
タイトル: The most primitive CM chondrites, Asuka 12085, 12169, and 12236, of subtypes 3.0-2.8: Their characteristic features and classification
著者:
木村眞(国立極地研究所 極域科学資源センター 特任教授)
今栄直也(国立極地研究所 地圏研究グループ 助教)
小松睦美(総合研究大学院大学 教育開発センター 助教)
Jean-Alix Barrat(Université de Bretagne Occidentale、フランス)
Richard C. Greenwood(Open University、イギリス)
山口亮(国立極地研究所 地圏研究グループ 准教授)
野口高明 (九州大学 基幹教育院 教授)
DOI: 10.1016/j.polar.2020.100565
URL: https://doi.org/10.1016/j.polar.2020.100565
公開日: 2020年8月13日

参考文献

文献1
Glavin, D.P., McLain, H.L., Dworkin, J.P., Parker, E.T., Elsila, J.E., Aponte, J.C., Simkus, D.N., Pozarycki, C.I., Graham, H.V., Nittler, L.R. and Alexander, C.M. (2020) Abundant extraterrestrial amino acids in the primitive CM carbonaceous chondrite Asuka 12236. Meteoritics & Planetary Science, 55: 1979-2006. doi:10.1111/maps.13560.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/maps.13560

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