2020-08-12 東北大学 金属材料研究所,東京大学 大学院工学系研究科,科学技術振興機構
ポイント
- 真空成膜技術を駆使して、天然に存在しないハニカム(蜂の巣)格子イリジウム酸化物の人工超格子を合成することに成功。
- 量子スピン液体と呼ばれる特殊な磁気状態実現への新たなアプローチ。
- 薄膜・界面の自由度を活用した磁気特性の理解や制御技術の開発に貢献し、将来的な量子状態制御素子への応用展開も期待。
量子コンピューターなどの量子状態制御への応用可能性から、量子スピン液体が注目されています。イリジウムイオンがハニカム格子状に並んだ化合物は、この量子スピン液体をもたらす物質として素子への展開が期待されています。
東北大学 金属材料研究所の藤原 宏平 准教授、三浦 径 大学院生(研究当時)、塚﨑 敦 教授、東京大学 大学院工学系研究科の柴田 直哉 教授らの共同研究グループは、イリジウムイオンがハニカム格子状に配列した新規酸化物Mn-Ir-Oの人工超格子を合成することに成功しました。本研究の意義は、1.真空成膜条件下でも安定な結晶構造を保つイルメナイト型酸化物に着目してIrO6ハニカム格子の薄膜合成に成功したこと、さらに、2.人工超格子技術を用いることによって、真空成膜手法が新物質合成技術として有用であることを示したことにあります。
この成果は、量子スピン液体の物質開発に新たなアプローチを提供するだけでなく、薄膜試料を用いた機能素子の開発にも役立つものと期待されます。
本研究成果は2020年8月12日(英国夏時間)、国際科学誌「Communications Materials」オンライン版に掲載されます。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「トポロジカル機能界面の創出」(研究代表者:塚﨑 敦、課題番号:JPMJCR18T2)、科学研究費補助金(課題番号:15H058053、19H02423、19H05788)、東北大学 金属材料研究所 新素材共同研究開発センター(課題番号:19G0410)、文部科学省 ナノテクノロジープラットフォーム事業 微細構造解析プラットフォーム(課題番号:12024046)からの支援を受けて実施されました。
<論文タイトル>
- “Stabilization of a honeycomb lattice of IrO6 octahedra by formation of ilmenite-type superlattices in MnTiO3”
- DOI:10.1038/s43246-020-00059-1
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
藤原 宏平(フジワラ コウヘイ)
東北大学 金属材料研究所 低温物理学研究部門 准教授
塚﨑 敦(ツカザキ アツシ)
東北大学 金属材料研究所 低温物理学研究部門 教授
柴田 直哉(シバタ ナオヤ)
東京大学 大学院工学系研究科 総合研究機構 機構長・教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東北大学 金属材料研究所 情報企画室 広報班
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
科学技術振興機構 広報課