星の卵の「国勢調査」~アルマ望遠鏡が追う星のヒナ誕生までの10万年

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2020-08-07 国立天文台

おうし座分子雲とそれに含まれる多数の分子雲コアおうおうし座分子雲とそれに含まれる多数の分子雲コア。欧州宇宙機関(ESA)のハーシェル宇宙天文台が遠赤外線で観測したおうし座分子雲(背景)に、アルマ望遠鏡で観測した星のない分子雲コア12天体(ファーストコア候補1天体を含む)を合成した画像。(クレジット:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tokuda et al. ESA/Herschel) オリジナルサイズ(754KB)

おうし座分子雲の中で、「星の卵」(分子雲コア)から「星のヒナ」(原始星)へと成長する各段階が捉えられました。多数の「星の卵」の観測から、星が誕生する道筋の解明がまた一歩進んだのです。観測には、アルマ望遠鏡を構成する一部で日本が開発を担当したアタカマ・コンパクト・アレイ(ACA)が用いられました。

恒星は、星々の間に漂うガスや塵(ちり)が自らの重力によって集まることで誕生します。このような領域は天の川に沿って存在していますが、おうし座の方向にある「おうし座分子雲」は、地球から450光年と距離が近く、これまで盛んに観測されています。この分子雲には、ガスが特に濃い「星の卵」(分子雲コア)が多数存在し、その一部の中心では「星のヒナ」(原始星)が誕生しています。この「星の卵の孵化(ふか)」には10万年単位の時間がかかるため、人間が一つの天体の「孵化」をずっと追いかけて観測することはできません。その代わりに、さまざまな成長段階にある天体を詳細に調べ、「孵化」の道筋を理解するという研究が進められています。

大阪府立大学、名古屋大学、国立天文台などの研究者から成る研究チームは、アルマ望遠鏡の一部を構成するアタカマ・コンパクト・アレイを用い、おうし座分子雲内にある「星の卵」のほぼ全てにあたる39天体を観測しました。このうちの7天体ではすでに「星のヒナ」が存在し、32天体ではまだ「星のヒナ」に成長する前の段階でした。前者および後者のうちの12天体からは電波が検出されましたが、後者の残り20天体からは検出されませんでした。詳しい解析の結果、ガスがある限界の密度を超えると、星の卵が急速に収縮して星の形成が始まることが明らかになりました。また、「星のヒナ」がまだ存在しないと考えられていた「星の卵」の中で、生まれたばかりの星に特有なガスの流出が観測されました。その広がりと流出速度から、ガスは数千年以内に放出されたと推定できます。10万年にもわたる「孵化」の過程で、まさに星が誕生した瞬間である「ファーストコア」を捉えたものと考えられます。

おうし座分子雲は、国立天文台 野辺山宇宙電波観測所の45メートル電波望遠鏡をはじめ、多くの電波望遠鏡を駆使して、日本の研究者が長年にわたり観測を続けてきた対象です。今後、より解像度の高い観測や、環境の異なる他の分子雲の観測を進め、星の多様性の起源に迫りたいと研究チームは考えています。

この研究成果は2020年8月7日付で、

K. Tokuda et al. “FRagmentation and Evolution of Dense Cores Judged by ALMA (FREJA). I (Overview). Inner ~1,000 au Structures of Prestellar/Protostellar Cores in Taurus”

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