廃棄物を対象とした93Zr, 93Mo, 107Pd 及び126Sn の分析マニュアルの整備

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測定が難しい放射性核種のルーチン分析に向けて

福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発

JAEA原子力機構の研究開発成果2019-20 p.19

東京電力福島第一原子力発電所(1F)の廃止措置を進めるにあたり、今後、発生するがれき等を含め、放射性廃棄物の処理処分方策の整備が喫緊の課題となって います。このためには、放射能データの収集・蓄積が必要であり、分析手法が定まっていない核種については、 新たに分析手法を確立することが求められています。 そこで私たちは、分析手法が定まっていない核種のうち、ジルコニウム93(93Zr)、モリブデン93(93Mo)、パラ ジウム107(107Pd)及びスズ126(126Sn)の4核種を対象として、実廃棄物のルーチン分析にも適用できるように、できる限り簡易な分析法を開発しました。

図1-19 陰イオン交換樹脂を用いた妨害核種分離作業
塩酸を使用して陰イオン交換樹脂にSn を吸着させ、塩化物イオンと錯体を形成しない妨害核種と分離しています。

図1-20 低エネルギー光子検出器(Ge-LEPS)
検出器入射窓は薄いベリリウム膜であり、低エネルギーの光子(γ線)を高効率で測定可能です。

図1-21 Ge-LEP を使用した126Sn 測定スペクトル
126Sn の壊変時に放出される64 keV と87 keV の2 本のγ線がピークとして確認できます。


開発した分析法のうち126Snの例を示します。Snは 2価と4価のイオンとして共存するため、前処理として過酸化水素を用いて4価に調整します。塩酸溶液中で、Snは塩化物イオンと錯形成(クロロ錯体を形成)し、陰イオンとなるため、陰イオン交換樹脂に吸着させ(図1-19)、陰イオンとならない妨害核種(β線を放出して制動放射によるバックグラウンドを上昇させるセシウム137(137Cs)、ストロンチウム90(90Sr)等)と分離することができます。
放射能は、低エネルギー光子検出器(Ge-LEPS)(図1-20)を使用して、γ線を測定して求めます(図1-21)。
93Zrと 93Moについては固相抽出剤(TEVAレジン)に薄い濃度のフッ化水素酸を用いて吸着させた後、濃い濃度のフッ化水素酸及び塩酸で溶離し、質量分析法または放射線測定法により定量しました。107Pdについては陰イオン交換樹脂に塩酸を用いて吸着させ、アンモニア水で溶離させることで妨害核種から効率良く分離させることができ、質量分析法により定量しました。
開発した分析法については、1Fで採取された滞留水を用いて適用性確認を行い、十分な精度で分析ができることを確認しました。また、ルーチン分析への適用に向けて、手順等を書き連ねるのみではなく、作業者により分かりやすいよう、チェックシートを取り入れた分析マニュアルを完成させました。
現在建設中の大熊分析センターが運用を開始した際には、本分析マニュアルを利用して、多数の放射能データを収集・蓄積することにより、処理処分方策の整備を加速できると期待されます。
本研究は、経済産業省資源エネルギー庁の平成28年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金(固体廃棄物の処理・処分に関する研究開発)」の成果の一部です。

●参考文献
青野竜士ほか, 福島事故廃棄物を対象とした93Zr, 93Mo, 107Pd 及び126Sn 分析法の開発, JAEA-Technology 2017-025, 2017, 32p.

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