2020-01-17(2020-10-09更新) 国土地理院
だいち2号干渉SARによる変動について
日本の地球観測衛星「だいち2号」(ALOS-2)に搭載された合成開口レーダー(SAR)のデータを使用して画像の分析を行いました。SARで用いられる電波は噴煙を透過するため、噴火中であっても火山の地形変化の状況を把握することができます。
2020年11月以降の観測結果はこちらをご覧ください。SAR強度画像の比較アニメーション
(2019年11月22日~2020年10月9日)
SAR強度画像から抽出した海岸線【暫定※】
※結果は速報であり、より詳細な分析等により、今後内容が更新されることがあります。
※ 海岸線の位置は,数十mほどの誤差が含まれる場合があります。西之島の成長
~長期間のSAR強度画像の比較アニメーション(2015年~)~
URL: https://www.youtube.com/watch?v=iCHZ8B0QMy4 全解析結果
(2019年11月22日~2020年10月9日) PDF形式(1968KB)〇解析結果一覧
図 | 1回目 ~ 2回目 |
衛星進行方向 | 電波照射方向 (照射方位) |
観測モード※ | 入射角 (中心) |
1 | 2019年11月22日 ~ 2019年 12月 6日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
2,3 | 2019年11月17日 ~ 2019年12月15日 |
北行 | 右(東) | 高分解能(3m) | 34.3° |
4,5 | 2019年12月 6日 ~ 2019年12月20日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
6,7,8 | 2019年12月20日 ~ 2020年 1月 3日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
9,10,11 | 2020年 1月 3日 ~ 2020年 1月17日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
12,13,14 | 2020年 1月17日 ~ 2020年 1月31日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
15,16,17,18 | 2020年 1月31日 ~ 2020年 2月14日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
19,20,21,22 | 2020年 2月14日 ~ 2020年 2月28日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
23,24,25,26 | 2020年 2月28日 ~ 2020年 3月13日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
27,28,29,30 | 2020年 3月13日 ~ 2020年 3月27日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
31,32,33,34 | 2020年 3月27日 ~ 2020年 4月24日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
35,36,37,38 | 2020年 4月24日 ~ 2020年 5月 8日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
39,40,41,42 | 2020年 5月8日 ~ 2020年 5月22日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
43,44,45,46 | 2020年 5月22日 ~ 2020年 6月5日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
47,48,49,50 | 2020年 6月 5日 ~ 2020年 6月19日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
51,52,53,54 | 2020年 6月 19日 ~ 2020年 7月3日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
55 | 2020年 7月 10日 | 北行 | 左(西) | 高分解能(3m) | 48.6° |
56,57,58,59 | 2020年 7月 10日 ~ 2020年 7月17日 干渉SAR及びコヒーレンス は7月3日との比較 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
60,61,62 | 2020年 7月17日 ~ 2020年 7月31日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
63,64,65 | 2020年 7月31日 ~ 2020年 8月14日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
66,67,68 | 2020年 8月14日 ~ 2020年 8月28日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
69,70,71 | 2020年 8月28日 ~ 2020年 9月11日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
72,73,74 | 2020年 9月11日 ~ 2020年 9月25日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
75,76,77 | 2020年 9月25日 ~ 2020年 10月9日 |
南行 | 右(西) | スポットライト | 58.7° |
※参考:ALOS-2プロジェクト/PALSAR-2(JAXA)
※2020年1月31日までのSAR干渉解析結果では、2018年1月時点の海岸線を越えた領域の位相情報は表示されていません。
※今回の結果は速報であり、より詳細な分析等により、今後内容が更新されることがあります。
※衛星SAR干渉解析の精度は一般的には数cm 程度とされています。
また、SAR衛星の観測条件が異なる場合、同じ地殻変動であっても、解析結果の見え方に違いが生じます。
※本解析で使用したデータの一部は、火山噴火予知連絡会衛星解析グループの活動を通して得られたものです。
解析:国土地理院 原初データ所有:JAXA
2019年11月22日~2019年12月6日
2019年11月17日~2019年12月15日
また、北東側および南東側で収縮とみられる衛星から遠ざかる変動が見られます。(図2)
・噴火後のSAR強度画像では、西之島の東側および北西側で火山噴出物とみられる地形変化が見られ、海岸線まで到達しています。(図3)
2019年12月6日~2019年12月20日
・12月20日のSAR強度画像では、12月15日時点で西之島の北西側海岸線まで到達していた地形の変化が、更に広がっていることが見られます。(図5)
2019年12月20日~2020年1月3日
また、火砕丘の東側で堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる最大数10cm程度の複雑な変動が見られます。(図6)
・1月3日のSAR強度画像では、西之島の北東側で12月20日以降の溶岩等によるものとみられる地形変化が見られ、海岸線まで到達しています。(図7、図8)
2020年1月3日~2020年1月17日
・1月17日のSAR強度画像では、西之島の北東側で溶岩等によるものとみられる地形変化が1月3日以降も継続しており、海岸線が変化しています。(図10、図11)
2020年1月17日~2020年1月31日
また、火砕丘の東側にも非干渉領域が見られ、海岸線まで到達しています。(図12)
・1月31日のSAR強度画像では、西之島の北東~東側で溶岩等によるものとみられる地形変化が1月17日以降も継続しており、海岸線が変化しています。(図13、図14)
(図12)2020年1月17日~2020年1月31日のSAR干渉解析結果
(図13)2020年1月31日(左)および2020年1月17日(右)のSAR強度画像
(図14)2020年1月31日のSAR強度画像の東部を拡大した図。水色線が2020年1月3日から2020年1月17日までに地形変化が見られた領域を、赤線がそれ以降に地形変化が見られた領域を示す。
2020年1月31日~2020年2月14日
また、火砕丘の北東側で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図15、図16)
・2月14日のSAR強度画像では、西之島の北から東側で溶岩等によるとみられる地形変化が見られ、東側では海岸線がわずかに変化しています。(図17、図18)
2020年2月14日~2020年2月28日
また、火砕丘の北東側の広い範囲で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図19)
・火砕丘から北側、南東側及び南西側で溶岩等によるとみられる干渉性の低下が見られ、北側と南東側は海岸線まで達しています。(図20)
・2月28日のSAR強度画像では、火砕丘の北側及び東側で溶岩等によるとみられる地形変化が見られ、西之島の北側で海岸線の変化が見られます。
また、新たに火砕丘の南西側で溶岩等によるとみられる地形変化が見られます。(図21、22)
(図19)2020年2月14日~2020年2月28日のSAR干渉解析結果
(図20)図19の干渉性の高さ(コヒーレンス)を示した図。干渉性が低い青色の領域は溶岩の堆積等を示しているとみられる。
2020年2月28日~2020年3月13日
また、火砕丘の北東側の広い範囲で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図23)
・火砕丘から北側及び東側で溶岩等によるとみられる干渉性の低下が見られ、海岸線まで達しています。(図24)
・3月13日のSAR強度画像では、火砕丘の北側及び東側で溶岩等によるとみられる地形変化が見られ、海岸線の変化が見られます。(図25、26)
2020年3月13日~2020年3月27日
また、火砕丘の北側から東側にわたる広い範囲で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図27)
・火砕丘の北側から東側にかけて溶岩等によるとみられる干渉性の低下が見られ、海岸線まで達しています。(図28)
・3月27日のSAR強度画像では、火砕丘の北側及び北東側で溶岩等によるとみられる地形変化が見られ、海岸線の変化が見られます。(図29、30)
2020年3月27日~2020年4月24日
また、火砕丘の北側から東側にわたる広い範囲で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図31)
・火砕丘の北側から東側にかけて溶岩等によるとみられる干渉性の低下した地域が見られ、海岸線まで達しています。(図32)
・4月24日のSAR強度画像では、火砕丘の北側から東側で溶岩等によるとみられる地形及び海岸線の変化が見られます。(図33、34)
2020年4月24日~2020年5月8日
また、火砕丘の北側から東側にわたる広い範囲で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図35)
・火砕丘の北側から東側にかけて溶岩等によるとみられる干渉性の低下した地域が見られ、海岸線まで達しています。(図36)
・5月8日のSAR強度画像では、火砕丘の北側から東側で溶岩等によるとみられる地形及び海岸線の変化が見られます。(図37、38)
2020年5月8日~2020年5月22日
・火砕丘の北側から北西側及び東側に溶岩等によるとみられる干渉性の低下した地域が見られ、海岸線まで達しています。(図40)
・5月22日のSAR強度画像では、火砕丘の北側から北西側で溶岩等によるとみられる地形及び海岸線の変化が見られます。(図41、42)
2020年5月22日~2020年6月5日
・火砕丘の北西側から北東側にかけて溶岩の堆積等によるとみられる非干渉領域(砂目の場所)が見られ、北西側、北東側で海岸線に達しています。また、火砕丘の北西側から東側にわたる広い範囲で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図43)
・火砕丘の北西側から北東側に溶岩等によるとみられる干渉性の低下した地域が見られ、海岸線まで達しています。(図44)
・6月5日のSAR強度画像では、火砕丘の北西側から北東側で溶岩等によるとみられる地形及び海岸線の変化が見られます。(図45、46)
(図43)2020年5月22日~2020年6月5日のSAR干渉解析結果
(図44)図43の干渉性の高さ(コヒーレンス)を示した図。干渉性が低い青色の領域は溶岩の堆積等を示しているとみられる。
(図45)2020年6月5日(左)及び2020年5月22日(右)のSAR強度画像
(図46)2020年6月5日の強度画像。水色線が2020年5月8日から2020年5月22日までに地形変化が見られた領域を、赤線がそれ以降に地形変化が見られた領域を示す。
2020年6月5日~2020年6月19日
また、火砕丘の北西側から東側にわたる広い範囲で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図47)
・火砕丘の北西側から東側にかけて溶岩等によるとみられる干渉性の低下した地域が見られ、海岸線まで達しています。(図48)
・6月19日のSAR強度画像では、火砕丘の北西側から東側で溶岩等によるとみられる地形及び海岸線の変化が見られます。(図49、50)
2020年6月19日~2020年7月3日
・島の広い範囲で溶岩や降灰等によるとみられる非干渉領域(砂目の場所)が見られます。火砕丘の北側や南西側を中心に非干渉領域が海岸線まで達しています。また、火砕丘の南東側及び西側で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる複雑な変動が見られます。(図51)
・島の広い範囲で溶岩や降灰等によるとみられる干渉性の低下した地域が見られ、火砕丘の北側や南西側を中心に海岸線まで達しています。(図52)
・7月3日のSAR 強度画像では、火砕丘の南西側及び西側で溶岩等によるとみられる地形の変化が見られ、南西側では海岸線が変化しています。また、火砕丘の直径が6月19日から1.5倍程度に拡大し、南側斜面の地形変化が見られます。火砕丘の北側から東側にかけて降灰の影響とみられる反射強度※の低下が見られます。(図53、54)
※ 反射強度が低い領域では、画像が暗くなります。
(図51)2020年6月19日~2020年7月3日のSAR干渉解析結果
(図52)図51の干渉性の高さ(コヒーレンス)を示した図。干渉性が低い青色の領域は溶岩や降灰等を示しているとみられる。
(図53)2020年7月3日(左)及び2020年6月19日(右)のSAR強度画像
(図54)2020年7月3日の強度画像。水色線が2020年6月5日から2020年6月19日までに地形変化が見られた領域を、赤線がそれ以降に地形変化が見られた領域を示す。
2020年7月10日
2020年7月10日~2020年7月17日
・島の広い範囲で降灰や溶岩等によるとみられる非干渉領域(砂目模様の場所)が見られます。火砕丘の南西側及び北側の広い範囲で非干渉領域が海岸線まで達しています。また、火砕丘の南東側及び西側で、堆積した溶岩の経時変化等によるとみられる変動が見られます。(図56)
・島の広い範囲で降灰や溶岩等によるとみられる干渉性の低下した地域が見られ、火砕丘の南西側及び北側の広い範囲で海岸線まで達しています。(図57)
・7月17日のSAR 強度画像では、火砕丘内部の地形の変化が見られます。火砕丘より北側の広い範囲で降灰の影響とみられる反射強度※の低下が見られます。(図58、59)
※ 反射強度が低い領域では、画像が暗くなります。
(図56)2020年7月3日~2020年7月17日のSAR干渉解析結果
(図57)図56の干渉性の高さ(コヒーレンス)を示した図。干渉性が低い青色の領域は降灰や溶岩等を示していると見られる。
(図58)2020年7月17日(左)及び2020年7月10日(右)のSAR強度画像
(図59)2020年7月17日の強度画像。水色線が2020年6月19日から2020年7月3日までに地形変化が見られた領域を、赤線がそれ以降に地形変化が見られた領域を示す。
2020年7月17日~2020年7月31日
2020年7月31日~2020年8月14日
・島のほぼ全域で主に降灰によるとみられる非干渉領域(砂目模様の場所及び島内の暗い場所)が見られます。(図63)
・島のほぼ全域で干渉性が大幅に低くなっており、規模の大きな降灰等の影響があったと考えられます。(図64)
・8月14日のSAR 強度画像では、火砕丘の火口の拡大が見られます。島のほぼ全域で降灰の影響とみられる反射強度※の低い領域が見られます。(図65)
※ 反射強度が低い領域では、画像が暗くなります。
(図63)2020年7月31日~2020年8月14日のSAR干渉解析結果
2020年8月14日~2020年8月28日
・島のほぼ全域で主に降灰によるとみられる非干渉領域(砂目模様の場所及び島内の暗い場所)が見られます。(図66)
・島のほぼ全域で干渉性が大幅に低くなっており、規模の大きな降灰等の影響があったと考えられます。(図67)
・8月28日のSAR 強度画像では、島のほぼ全域で降灰の影響とみられる反射強度※の低い領域が見られます。火砕丘の北西側の一部では反射強度の高くなった箇所が見られます。(図68)
※ 反射強度が低い領域では、画像が暗くなります。
(図66)2020年8月14日~2020年8月28日のSAR干渉解析結果
2020年8月28日~2020年9月11日
2020年9月11日~2020年9月25日
2020年9月25日~2020年10月9日
・火砕丘の周辺の広範囲で衛星から遠ざかる変動が見られます。また、火砕丘の北東斜面で変動が見られます。(図75)
・大きな干渉性の変化は見られません。(図76)
・10月9日のSAR 強度画像では、9月25日に比べて海岸線及び火砕丘の形状に変化は見られません。(図77)
(図75)2020年9月25日~2020年10月9日のSAR干渉解析結果
(図77)2020年10月9日(左)及び2020年9月25日(右)のSAR強度画像
2020年11月以降の観測結果はこちらをご覧ください。
参考資料
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地殻変動研究室長 宗包浩志