二次元半導体ゲルマナンで高移動度のトランジスタを実現~次世代の層状半導体トランジスタの実現に道

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2019-09-17   東京大学

東京大学総合文化研究科の上野和紀准教授、深津晋教授らのグループは、ゲルマニウム原子を二次元シート状に配列して水素終端した構造をもつ層状半導体ゲルマナンを用いて p 型、n型の両側で動作するトランジスタを開発しました。原子が二次元のシート状に積み重なった構造をもつ層状物質は印刷可能な半導体デバイスやフレキシブルなトランジスタなどへの応用が期待されます。ゲルマナンは半導体として広く使われるゲルマニウム原子を層状に並べ、水素を添加して安定化した物質であり、理論計算から高性能なトランジスタが実現できると予想されてきました。

研究グループはこのゲルマナンをエピタキシャル薄膜として作成し、その上にイオン液体をゲートとした電気二重層トランジスタを作成しました。その結果、ゲルマナンで p型、n型の両側でのトランジスタ動作の観測に初めて成功しました。さらに、電気伝導を担う伝導キャリアが電子の時には200K で移動度800 cm2/Vs, 120Kで移動度6,500 cm2/Vsと、シリコンやゲルマニウムの単結晶に近くバンドギャップの広い層状物質としては非常に高い値が得られました。薄膜の高い品質と、半導体・絶縁体界面の欠陥に影響されにくいデバイス構造が高移動度への鍵になったと考えられます。本研究で得られた高品質のゲルマナン薄膜をフレキシブル基板へ転写するなどの応用技術を進めることで、層状物質を用いてシリコントランジスタに並ぶ性能を持つトランジスタが実現できると期待されます。

「グラフェンをはじめとする層状半導体は印刷可能なデバイスや折り曲げできるフレキシブルな機能性デバイスなど次世代の半導体デバイスへの応用が期待される材料です。しかし、グラフェンは電流をON/OFFするスイッチ素子には不向きなため、グラフェンの炭素をシリコン、ゲルマニウムなどで置き換えればスイッチ素子に使えるようになるのではないかと世界中で研究がおこなわれてきました」と上野准教授は話します。「深津研では半導体薄膜を作る技術を生かして新しい層状半導体であるゲルマナンの単結晶薄膜を開発しました。これを上野研がもつトランジスタデバイスへの応用技術と組み合わせたら面白いことができるのではないかと研究を始めました。層状物質なのにまるで単結晶のゲルマニウムを使ったトランジスタのような特性が出た時には大変興奮しました」と続けます。

「ゲルマナンは理論計算からは室温でもゲルマニウムを上回る性能が出るとされています。さらに技術を磨くことで層状物質を用いたトランジスタがシリコンやゲルマニウムなどの単結晶で作製する最先端のトランジスタに並ぶ性能を持つようになると期待しています」と深津教授は話します。ゲルマナン単結晶薄膜を用いた電気二重層トランジスタの構造と特性

ゲルマナン単結晶薄膜を用いた電気二重層トランジスタの構造と特性
(a) ゲルマナンの結晶構造。大きい球で表したゲルマニウム原子が二次元シートを作り、その上下に黒い小さい球で表した水素原子が配位する。(b) ゲルマナン単結晶薄膜の表面を原子間力顕微鏡で観測した像。六角形の粒が一つ一つの単結晶。(c) イオン伝導性のイオン液体を FET の絶縁層として用いた電気二重層トランジスタの概念図。ゲート電極に電圧を印加するとイオンが動き、電気が流れるチャネルの上に電気二重層を作る。その結果、チャネルには電気を流す伝導キャリアが蓄積する。(d) 実際に作成したデバイスの写真 (e)ゲルマナン電気二重層トランジスタの移動度の温度依存性。トランジスタとしての特性の良さを表す移動度は既報よりずっと大きく、ゲート電圧が正、電子が蓄積した領域で最高 6,500cm2/Vsに達した。これはゲルマニウム単結晶の移動度に近い値である。
© 2019 片山裕美子

論文情報

Yumiko Katayama, Ryoto Yamauchi, Yuhsuke Yasutake, Susumu Fukatsu, Kazunori Ueno, “Ambipolar transistor action of germanane electric double layer transistor,” Applied Physics Letters: 2019年9月16日, doi:10.1063/1.5094817.
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