2019/6/25 アメリカ合衆国・ローレンスリバモア国立研究所 (LLNL)
(High-powered laser diodes can reduce residual stress in metal 3D printed parts)
・ LLNL とカリフォルニア大学デービス校が、金属 3D プリンティングで課題となっている残留応力を大幅に低減する技術を開発。
・ 特に金属材料の 3D プリンティング過程において、 残留応力は材料の加熱と冷却による膨張と収縮でプリントパーツに蓄積される力を生成し、パーツの脆弱化や割れの原因となる歪みやき裂を発生させる。
・ 今回、LLNL の国立点火施設(NIF)の高出力レーザー技術のレーザーダイオードを活用した温度勾配の低減と冷却速度の制御により、3D プリントした金属パーツの残留応力を 90%低減。新技術はプリント中に起こる残留応力を効果的に除去する。
・ 新技術の実証では、レーザー粉末床熔融結合法(LPBF)による 316L ステンレス鋼を用いた小型の橋梁状の構造の 3D プリント工程で、各プリント層の硬化後、その表面にまずフル出力でレーザーダイオードを照射してから直ちに強度を 20 秒内で弱めた。このプロセスでプリントした各層の表面温度は約 1,000℃(1,832℉)に達し、プリント後各層を炉に入れたような効果をもたらす。
・ 完成したパーツの太い脚部の一本を切り取り、細く弱い上部パーツの移動量を分析して残留応力の除去程度を測定した結果、オーブンでのアニーリングによる従来方法で得られるような優れた効果を確認。同技術ではパーツの最上部から加熱するため、パーツの高さを制限しない。
・ 同技術は、現時点では比較的小さな面積のみの対処のため改善の余地があり、今後のスケールアップが見込めると考える。プリント面積がより大きなシステムに同技術を導入する場合には、レーザーダイオードの増設による加熱面積の拡大で対応が可能。
・ また、チタン合金(Ti64)の相転移の制御について研究予定。Ti64 を使用したプリンティングでは、相転移により金属が著しく脆弱化してパーツの割れを起こす。パーツの緩慢な冷却により相転移が回避できれば、航空機産業の標準に見合った展延性が獲得できると考える。
・ 次には、加熱サイクル毎のプリント層数の増加に注視し、今回と同等の残留応力低減効果の有無の確認、より複雑なパーツの作製、同技術のプロセスの理解を深めるためのより定量的な技術の利用の可能性について、詳細な研究を実施する。
・ 本研究は、米エネルギー省(DOE)による Laboratory Directed Research and Development program の資金により実施された。
URL: https://www.llnl.gov/news/high-powered-laser-diodes-can-reduce-residual-stress-metal3d-printed-parts
(関連情報)
Additive Manufacturing 掲載論文(フルテキスト)
Reducing residual stress by selective large-area diode surface heating during laser powder bed fusion additive manufacturing
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2214860419300867?via%3Dihub
<NEDO海外技術情報より>