1.概要
海を漂流・漂着するプラスチックごみは、時間が経つにつれ劣化と破砕を重ねながら、次第にマイクロプラスチックと呼ばれる微細片となり、漂流の過程で誤食により海洋生物の体内に取り込まれることが知られています。
このたび、環境省環境研究総合推進費(SII-2および4-1502)の助成を受けて、マイクロプラスチックによる海洋汚染を調査している九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授と東京海洋大学の東海正教授・内田圭一准教授、そして寒地土木研究所の岩﨑慎介研究員らの研究グループは、南北太平洋で東京海洋大学「海鷹丸」が2016年に観測したマイクロプラスチック浮遊量や既往研究で報告された浮遊量をコンピュータ・シミュレーションで再現し、50年先までの太平洋全域における浮遊量を予測しました。
その結果、特に夏季の日本周辺や北太平洋中央部で浮遊量が多くなること、プラスチックごみの海洋流出がこのまま増え続けた場合、これらの海域では2030年までに海洋上層でのマイクロプラスチックの重量濃度が現在の約2倍になること、さらに2060年までには約4倍となることが示されました。
2.研究論文の公表
この研究成果は”Abundance of non-conservative microplastics in the upper ocean from 1957 to 2066″としてNature Communications誌にて1月24日に掲載されます。マイクロプラスチック浮遊量の将来予測は本研究が世界で初めてのものです。
当該論文のURLはこちらになります。
<https://www.nature.com/articles/s41467-019-08316-9>
写真 太平洋観測での浮遊マイクロプラスチック採取の様子
図 コンピュータ・シミュレーションで求めた2016年現在とその50年後に海面近くを浮遊するマイクロプラスチックの重量濃度(海水1m3あたりの浮遊重量)分布。左側は2月で右側は8月の分布を示す。最も濃い赤のトーンは1000 mg/m3以上の重量濃度を示す海域を表している。
【お問い合わせ先】
国立大学法人 九州大学 応用力学研究所
教授 磯辺 篤彦
国立大学法人 東京海洋大学
学術研究院 海洋生物資源学部門 教授 東海 正
学術研究院 海洋資源エネルギー学部門 准教授 内田 圭一
連絡先
環境省水・大気環境局水環境課海洋環境室
室長 中里 靖
室長補佐 矢野 克典
室長補佐 福井 和樹
係長 佐藤 佳奈子