CIS系薄膜太陽電池セルで世界最高変換効率23.35％を達成

2019-01-17

2019-01-17 新エネルギー・産業技術総合開発機構,ソーラーフロンティア株式会社

NEDOとソーラーフロンティア（株）は、カドミウムを含まないCIS系薄膜太陽電池セル（約1cm²）によって、CIS系薄膜太陽電池で世界最高のエネルギー変換効率となる23.35％を記録しました。

本成果は、CIS光吸収層の高品質化に係る技術や、カドミウムを含まないセル作製技術など、これまでNEDOプロジェクトで推進してきたCIS系薄膜太陽電池に係る技術の融合によって達成されたものであり、高い変換効率と優れた環境特性を両立しています。

1．概要

太陽電池のエネルギー変換効率向上は、太陽光発電のコスト低減に大きく寄与するため、世界中の企業、研究機関が取り組んでいます。国立研究開発法人　新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）のプロジェクト^※1では、高性能と高信頼性を兼ね備えた太陽電池によって発電コストを低減すべく、技術開発を推進してきました。

また太陽電池の中でも特に、CIS系薄膜太陽電池^※2は、現在主流である結晶シリコン系太陽電池よりも薄く成膜できるという特長があることから、省資源で製造に要するエネルギーも抑えられるとして、さらなる変換効率向上が期待されています。

今回ソーラーフロンティア株式会社は、NEDOプロジェクトにおいてカドミウムを含まないCIS系薄膜太陽電池のうち約1cm²のセルで、世界最高^※3のエネルギー変換効率である23.35％^※4を記録しました。

この値は、2017年11月に同社が記録したカドミウムを含むCIS系薄膜太陽電池セル（約1cm²）での世界最高変換効率22.92％をも約0.4ポイント上回り、全てのCIS系薄膜太陽電池において世界最高の変換効率^※5となるものです。

本成果は、同社がこれまでNEDOプロジェクトで取り組んできた、CIS光吸収層の改良や光吸収層表面処理などのCIS光吸収層の高品質化技術と、環境負荷の大きいカドミウムを含まないセル作製技術などについてそれぞれ高度化を行い、それらを最適な条件で融合させることで達成されたものです。これは、NEDOが目指す高性能と高信頼性を兼ね備えた太陽電池による発電コストの低減に向けて、大きな前進となります。

2．今後の予定

NEDOとソーラーフロンティア（株）は、NEDOが掲げる発電コスト目標の実現に向け、引き続き、変換効率向上、製造コスト低減、信頼性向上などの技術開発に取り組みます。

またソーラーフロンティア（株）は今後も、このたび達成された基礎技術の応用により、CIS系薄膜太陽電池モジュールの高出力化による低コスト化の実現に取り組みます。

【注釈】

※1 プロジェクト: 事業件名：高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発
事業期間：2015年度～2019年度
※2 CIS系薄膜太陽電池: 銅（Cu）、インジウム（In）、セレン（Se）他による化合物を光吸収層とした太陽電池です。
基本的なCIS系薄膜太陽電池の構造は、透明導電膜／バッファ層／光吸収層／裏面電極をガラス基板上に積層したものです。
※3 世界最高: 2019年1月17日現在、研究レベルにおけるCIS系薄膜太陽電池セルにおいてのものです。
ソーラーフロンティア（株）調べ。
※4 エネルギー変換効率である23.35％: 2018年11月、国立研究開発法人産業技術総合研究所において確認されました。
※5 全てのCIS系薄膜太陽電池において世界最高の変換効率: ガリウム砒素（GaAs）またはIII-V族系を除く、すべての薄膜系太陽電池においても、1cm²以上の面積を有するセルで世界最高の値を記録しました。