すばる望遠鏡、木星の新衛星発見に貢献

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2018/07/23 国立天文台

2018年7月20日 (ハワイ現地時間)

木星の周りを回る衛星が新たに 12 天体発見され、その観測にすばる望遠鏡が大きく貢献しました。12 のうち1天体は、他と逆行して運動する「変わり者」です。今回の発見により、木星の衛星の数は 79 になりました。

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図1: すばる望遠鏡 HSC が撮影した木星の新衛星 S/2017 J2。背景の天体に対して動くように、画像の中央付近に写っています。(クレジット:ハワイ大学/カーネギー研究所)

米国のカーネギー研究所、ハワイ大学、北アリゾナ大学の研究者からなる研究チームは、太陽系外縁部に存在すると理論的に予測されている「プラネット・ナイン」を、すばる望遠鏡などを使って探査しています。探査では、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム, HSC) がその威力を発揮します。満月9個分に相当する広い視野が、どこにあるかわらかない天体を探すのにとても役に立つからです。

研究チームは、木星の近くの天域を探査することで、遠方の「プラネット・ナイン」に加えて木星の近くに存在する天体をも探し出す「一石二鳥」の観測を狙っていました。そして2017年、まずは南米チリにある口径4メートルの望遠鏡で新しい衛星の候補天体を見つけ出しました。

見つかった天体が本当に木星の衛星であることを確認するためには、その動きを追跡する必要があります。この観測には通常1年ほどかかりますが、その間に天体を見失う可能性もあるためにのんびりしてはいられません。そこで研究チームは、候補天体の発見後速やかにマウナケアにあるハワイ大学の口径 2.2 メートル望遠鏡を使って追観測を行い、これらの天体が確かに木星の衛星であることを確認しました。

さらに研究チームは、すばる望遠鏡 HSC を使った広視野観測によって、衛星の動きを追跡して軌道の精度を高めました。これらの天体は太陽系内にあるにもかかわらず、観測は困難なものでした。なぜならばこの観測の際、地球の衛星である月がちょうど木星のすぐそばにあったため、露出時間を短くしなければならなかったからです。木星の新衛星はとても暗いために、複数の画像を重ね合わせて初めて確認することができました。

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図2: 新たに見つかった衛星の軌道。(クレジット:カーネギー研究所)

すばる望遠鏡を使った観測の研究責任者であるハワイ大学の Dave Tholen さんは語ります。「このような新発見はいつもエキサイティングです。新たな発見をし、さらにそれを確かなものとする。この間、その新発見を発表できることへの期待が高まっていき、感慨にひたるのです。特に、『普通ではないもの』を見つけた時の感動は大きいものです。今回は、他の天体に対して逆行する天体を1つ見つけ出すことができました。」

さらにカーネギー研究所の Scott Sheppard さんは付け加えます。「広い視野を持つ最新鋭のカメラ HSC を備えるすばる望遠鏡は、世界最強の探査望遠鏡です。広い天域を、しかも他の望遠鏡よりも暗い天体まで写し出すことができるからです。広い視野と高い感度、その両方が新衛星の探査において欠かせないのです。」

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図3: すばる望遠鏡の観測室で記念撮影をする研究チームメンバーの Dave Tholen さん (ハワイ大学)、Chad Trujillo (北アリゾナ大学)、Scott Sheppard さん (カーネギー研究所)。(クレジット:カーネギー研究所)

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