地下深くの亀裂の連結性を地上から評価する方法を開発

地層処分の候補地選定に係わる調査技術に大きな進展

2018/05/18 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

【発表のポイント】

  • 高レベル放射性廃棄物の地層処分の候補地選定に係わる調査では、地下深くの亀裂の連結性を適切に評価することが重要だが、これまでに特段の良い評価方法は見つかっておらず、地上から地下深くの亀裂の連結性を適切に評価することは困難とされてきた。
  • 幌延深地層研究センターは、水圧挙動の特性など従来から知られている知見を融合させた新たな評価方法を考案。これを用いて日本を含む複数の地層に適用し、その高い実用性を確認した。
  • 本研究の成果は、地層処分の候補地選定に係わる調査に役立つだけでなく、地層の亀裂中に貯留する資源の探査などへの応用も期待される。
  • 本研究の成果は米国の学術誌「Water Resources Research」に掲載予定。電子版には5月12日(日本時間)に掲載。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)幌延深地層研究センター(以下、センター)は、地下深くの亀裂の連結性を、各専門分野で従来から知られていた個別の知見を融合させ、適切に評価する方法を開発しました。

高レベル放射性廃棄物の地層処分の候補地選定に係わる調査では、地層中の亀裂の連結性を適切に評価することが重要になります。そのためにはなるべく亀裂の連結性に直接関係するようなデータに基づいて推定することが重要ですが、これまでに特段の良い評価方法は見つかっておらず、地上からの調査により地下深くの亀裂の連結性を適切に評価することは現行の評価方法では困難とされてきました。

センターは、亀裂の連結性が限定的である場合に透水試験1)で得られる独特な水圧挙動に着目し、この水圧挙動特性に基づいた亀裂の連結性の推定結果を他の関連する情報(地質情報や地下水の水圧分布、水質・年代データなど)と比較し、その整合性を確認することにより検証するという新たな評価方法を考案しました。

本研究の成果は、今後、地層処分の候補地選定における調査に役立つことが期待されます。また、地層の亀裂中に貯留する資源の探査や二酸化炭素の地中貯留など、地下の亀裂が関係する様々な事業に幅広く貢献することが期待されます。

【研究開発の背景】

高レベル放射性廃棄物の地層処分の候補地選定に係わる調査では、地下300mより深い所における、水を通しにくい地層の拡がりを地上から把握することが重要になります。地層が水を通しにくい状態にあるためには、地層中に亀裂が全くないことが理想的です。しかし、そのような地層が自然界に存在することはまれで、大抵はいくらかの亀裂が地層中に存在します(写真1)。しかし、たとえ地層中に亀裂があったとしても、それらの亀裂の連結性が限定的であれば、巨視的には水を通しにくいことになります。したがって、地層処分の候補地選定に係わる調査ではこのような亀裂の連結性を適切に評価することが重要になります。

しかし、地上からの調査により地下深くの亀裂の連結性を適切に評価することは容易ではありません。何故ならば、地上から地下深くの亀裂の連結性を実際に観察することは出来ないからです。したがって、何らかのデータを用いて亀裂の連結性を推定する必要があります。これまで、地下水の水圧分布や水質・年代といったデータがその領域の亀裂の連結性を評価するための一つの指標と考えられてきました。しかし、地下水の水圧分布や水質・年代は、亀裂の連結性を直接的に示すものではなく、その地域の地史などに大きく依存します。したがって亀裂の連結性を適切に評価するためには、なるべく亀裂の連結性に直接関係するようなデータに基づいて推定することが重要です。しかし、これまでに特段の良い評価方法は見つかっておらず、地上からの調査により地下深くの亀裂の連結性を適切に評価することは現行の評価方法では困難とされてきました。

写真1 ボーリングコアで認められる天然の亀裂

【研究の成果】

センターは、亀裂の連結性を地上からのボーリング調査から適切に評価するために、透水試験で付随的に得られる水圧の挙動に着目しました。何故ならば、亀裂の連結性が限定的である場合、透水試験で独特な水圧挙動が観測できる可能性が石油探査の分野で指摘されていたからです(図1)。透水試験で得られる水圧挙動は、亀裂の連結性のような構造的な要素に直接関係するため、亀裂の連結性の評価に用いる指標としては適当です。しかし、この水圧挙動の評価も単純ではありません。何故ならば、仮にある時間まで亀裂の連結性が限定的であることを示唆する水圧挙動が透水試験で確認できていたとしても、その後、亀裂の連結性が良いことを示唆する水圧挙動に転じ始めることもあるからです。つまり、この評価方法は透水試験の試験時間に強く依存します。したがって、通常の試験時間(数時間~数日)で試験を終了した場合、場合によっては試験時間が短いために、亀裂の連結性を誤って評価してしまう可能性もあります。より確かな評価を行うためには、試験1点当たりに極めて長い時間(数週間~数か月)が必要となりますが、これは多くの労力や費用を要するだけでなく、地層内の地下水環境を大きく乱し、他の試験にも影響を及ぼす可能性があります。また、亀裂の連結性は深度(力学条件)によって変化し得ることが最近の力学的検討から分かってきており、地層内の亀裂の連結性を適切に評価するためには、そのような深度依存性も考慮する必要があります。

今般、センターではこれらの技術的課題を解決できる評価方法として、図2に示すような新たな方法を考案しました。つまり、まず地層を力学的な検討により亀裂が連結しやすい領域とそうでない領域に区分し、それぞれの領域について透水試験で得られる水圧挙動の特性に基づいて亀裂の連結性を推定します。そして、その推定結果を他の関連する情報(地質情報や地下水の水圧分布、水質・年代データなど)と比較し、その整合性を確認することにより検証するという方法です。すなわち、各専門分野で従来から知られていた個別の知見を融合させた方法を考案したというわけです。この評価方法の実用性が確認できれば、今後、同評価方法を標準的な評価方法として、亀裂の連結性を適切に評価することが可能になります。

実際にこの評価方法をセンター周辺に分布する地層(稚内層2))や、スイスのウェレンベルグ地域に分布する地層(Palfris層3))に適用した結果、複数のボーリング孔から得られた関連する全てのデータを統一的に説明することができました(詳細は学術誌に掲載)。これはこの評価方法が高い実用性を有していることを表しています。この結果によれば、例えばセンター周辺の深度350mに分布する地層の亀裂は数十メートル以上にわたって良く連結するのに対し、深度500mに分布する地層の亀裂の連結性は数メートル以下と限定的であることが推定されます。前者の深度350mに分布する地層の亀裂については、既に地下施設の建設に伴って得られたデータからその連結性の良さが確認できています。

図1 (a)亀裂の連結性が良い場合の水圧変化の一例
(b)亀裂の連結性が限定的である場合の水圧変化の一例

図2 本研究で考案・実証したボーリング調査において亀裂の連結性を評価する方法

【今後の期待】

本研究で考案した評価方法は、地層処分の候補地選定において、地上からの調査計画の立案や調査を効率的に行うために役立つことが期待されます。また、本評価方法は資源探査や二酸化炭素の地中貯留などの分野において地層の閉じ込め/貯留性能を評価する際にも役立てることができ、地下の亀裂が関係する様々な分野に幅広く貢献することが期待されます。

【論文掲載情報】

雑誌名:Water Resources Research

論文タイトル:Assessment of hydraulic connectivity of fractures in mudstones by single-borehole investigations

著者:石井英一

電子版URL:https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2018WR022556

【用語解説】

1) 透水試験

地下水の水圧に変化を与え、その過程で得られる流量や水圧から地層や岩盤の透水性を評価する試験。ここでは単孔ボーリング孔を用いた透水試験を指す。

2) 稚内層

亀裂が発達する地層。センターは主に同層を対象とした事例研究を通じて、地層処分に係わる調査技術開発を行っている。

3) Palfris層

亀裂が発達する一方で、巨視的には非常に水を通しにくいことが世界的によく知られる地層。