ロボット・福祉 イノベーション実用化ベンチャー支援事業 課題解決型福祉用具実用化開発支援事業
2017-11 WHILL株式会社
November 2017
乗って楽しい、次世代パーソナルモビリティ
既存の車いすに抵抗を感じていた人たちにも喜ばれる、画期的な電動車いすが生まれました。「WHILL(ウィル)」と名付けられた製品で、車いすというより次世代パーソナルモビリティと呼ぶのがふさわしい乗り物です。WHILL株式会社が、NEDOプロジェクト「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」(2013年度)及び「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」(2015~2016年度)にて、開発しました。見た目も格好良く、操作性に優れ、段差や砂利道のような悪路でも振動の少ない乗り心地を実現しています。
7.5cmの段差、10度の坂道も難なく走れる
従来の電動車いすは、ちょっとした段差や砂利道のような悪路に弱く、小回りもききませんでした。また、手動式でも電動式でも、車いすそのものに乗りたくないという人たちもいました。
WHILL株式会社創業者の1人である内藤淳平さん(最高開発責任者)は、こうした声に応え、「乗ってみたくなる」「ワクワクする」電動車いすを開発したいと思っていました。仲間2人と共に起業し、2014年に会社名を冠した「WHILL Model A」(以下、Model A)を発売。2017年までに世界で累計1,000台以上を出荷しています。
「Model A」は、電動車いすというよりは次世代パーソナルモビリティという位置づけで、スタイリッシュなデザインと機能を兼ね備えた、かつてない製品です。
7.5cmまでの段差を超え、斜度10度の坂を登れる上に、でこぼこ道や砂利道も難なく進むことができます。フル充電で20kmを走り、振動を抑える仕組みが施されているので、乗り心地もよく、まさに「乗ってみたくなる」モビリティと言えるでしょう(写真1)。
内藤さんは言います。「車いすの見方が変わったというお客様が多く、それまで車いすを使っていなかった方々にも購入していただいています。電動車いすでは人の目が気になって乗る気になれなかったという男性の方が、奥様に『WHILL』なら乗ってほしいと言われて、購入したというお話もありました。その奥様は、町中で『WHILL』を見かけたことがきっかけで、ネットで『近未来車いす』と検索したら、『WHILL』を見つけることができたそうです」
大手企業から独立して車いすユーザーのために起業
内藤さんは1983年生まれ。名古屋大学大学院工学研究科を修了して、2008年に総合電機メーカーに入社、車載カメラなどの開発に携わっていました。当時は独立して起業することなど考えていなかったと言います。
しかし、大学在学中から友人と開いていた勉強会が運命を変えました。WHILLの共同創業者の1人である福岡宗明さん(最高技術責任者)もそのメンバーで、企業で医療機器の開発を担当していました。
勉強会は卒業後も続き、お互いの仕事や会社での思いなどを話しているうちに「社会的な問題にエンジニアとして取り組みたい」という気持ちが盛り上がってきました。
次第に話が具体化し、何か面白いプロジェクトを立ち上げようと、2009年に他の仲間も集めて、10人ほどで「サニー・サイド・ガレージ」という団体を設立しました。そこに参加していたのが、現在、最高経営責任者を務める杉江理さんです。杉江さんは自動車会社でデザインを担当していました。
さて何をしようか、と相談する中で、先進国が発展途上国に寄付した車いすが実は現地では使いにくいという話を耳にした内藤さんたちは、車いすについて調べ始めました。そして、実際に車いすユーザーの声を聞こうと、リハビリテーションセンターに行った時に聞いた言葉が、彼らを本気にさせました。
「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」
ちょっとした段差や悪路などがあると、たった100mの外出でも、いまの車いすではあきらめるしかない人たちもいるということが分かったのでした。内藤さんは、「ちょっとしたところでも気軽に使ってもらえる車いすを作るべきだと、そのとき思いました」と当時のことを語ります。
その後も車いすユーザーからヒアリングする中で、いかにも福祉用具といった外見ではなく、誰もが乗りたくなるようなデザイン性を持った車いすが求められていることも分かりました。こうして、スマートで高機能なパーソナルモビリティ作りをスタートさせることになりました。
内藤さん、福岡さん、杉江さんは、それぞれの会社を辞め、2012年、WHILLを設立しました。社名の由来は、未来や意志を表わす「will」と車輪の「wheel」の組み合わせで、起業への強い意志を込めました。
「当時、仕事にはとても満足していましたし、将来の不安もあまり感じてはいなかったのですが、やはり起業して、車いすユーザーのために製品化するべきだと思ったのです」(内藤さん)
すぐにでも商品化したいとNEDOの新事業に応募
実際に製品化に向けて動き出すと、たちまち資金不足という壁にぶつかりました。試作機を作っては利用者に試してもらい、改良を繰り返していくうちに、仲間内で資金をいくらかき集めても、あっという間に開発費へと消えていってしまいました。
資金不足に困窮する中、いろいろな支援や助成を探すうちに内藤さんは、NEDOの「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」を知りました。実績が重視される助成が多い中で、この支援事業は文字通り、過去にないイノベーションの実用化を目指す自由度の高いもので、「WHILL」の研究開発にはぴったりだったのです。
「すぐに製品化することを前提とした助成制度は数少ない中で、NEDOに応募しました。申請書をひとりでなんとか書き上げ、事業計画書には『来年、商品化したい』と明記しました」(内藤さん)
研究開発だけでなく実用化しなければ意味がないという思いは、3人の共同創業者の一致するところでした。「低振動型オムニホイールを利用したモビリティの開発」というテーマで、WHILLは2013年度の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」に採択されました。
最適な「オムニホイール」を生み出す
段差や悪路を乗り越え、小さな半径で回転できる車いすを作るにはどうしたらいいか、内藤さんらは考えました。こうした高機能を実現したのが、24個の小さなタイヤで構成される「WHILL」オリジナルの「オムニホイール(全方位タイヤ)」です。
24個のサブタイヤが進行方向と垂直にリング状に並べられた構造になっており、メインタイヤとサブタイヤがそれぞれ前後と左右の2軸で回転することで自由な方向転換を可能にしました。そのため、70cmの回転半径で方向転換ができます。これに4輪駆動のパワーを加え、段差や悪路を乗り越えるトルクを実現しました。
従来の車いすでは、エレベーターなどの狭い場所の中で方向転換できなかったので、後ろ向きにエレベーターに乗る必要がありました。しかし、車いすを1人で後進させるのは恐怖感もあり、危険も伴います。「Model A」ならば、エレベーター内で方向転換が可能です(写真2)。
「オムニホイール」は、車軸を動かすことなく、前後左右に自由に動かせる車輪として、主に電動台車や小型ロボットなどに使われていました。しかし、車いすのように屋外で使われることは、ほとんどありませんでした。
内藤さんは、「既存の車いすのイメージを壊す、新しいパーソナルモビリティに、キャスター型の車輪は似合いません。杉江と2人でデザイン案を描きながら、『オムニホイール』が使えないか、という発想にたどり着きました」と振り返ります。
「しかし、『オムニホイール』の製造企業は少なく、オーストラリアのメーカーを見つけてメールを送信しても、返事もありませんでした。さらにWEBで検索していると、個人で『オムニホイール』を研究開発している方のサイトにぶつかりました。自動車会社で開発に従事し、すでに定年退職したベテラン技術者が、趣味で研究開発していたのです。早速連絡を取り、会って話すと意気投合し、一緒に開発することになりました」
そのベテラン技術者は、現在、WHILLの社員となっている坂東一夫さんです。情熱的な性格の坂東さんは、内藤さんたちの志の高さに共感し、個人的に社外で1年間、研究開発を行い、独自の「オムニホイール」の試作品を完成させました。
個人的な協力では限界があると内藤さんらは考え、坂東さんに社員になってもらうことを懇願しました。板東さんはそれを受け入れ、さらに1年数ヶ月をかけてパーソナルモビリティ用「オムニホイール」を仕上げました。
WHILLの「オムニホイール」の特長は、24個のサブタイヤを大小組み合わせて円形に並べたこと。サブタイヤの隙間を埋め、振動を抑制しています(写真3)。
内藤さんは、「耐久性と振動吸収性があり、同時に量産しやすく、しかもコスト性にも優れた構造を追究することに苦心しました」と話します。この開発によって坂東さんは、WHILLを出願人として3件の特許を取得しています。
写真3 進行方向に垂直に設置された大小のサブタイヤが特色のWHILLの「オムニホイール」
「オムニホイール」の開発とともに、電動車いす全体の機能やデザインを何度も改良していきました。ユーザーの声を聞いて付け加えた機能にもかかわらず、試作機の評判が良くなく、がっかりさせられることも、少なくありませんでした。
「開発の初期の頃、走るときに肘掛けの腕が伸びる機能も加えたのですが、役に立ちませんでした。ユーザーの声を反映するだけでは、使い勝手のよい製品にならないことが次第に分かってきました。開発というのは、品質、性能、価格のバランスを取りながら、機能を削ることが大切で、最終的にはかなりシンプルなデザインになっていきました」(内藤さん)
こうして、2014年9月に試作6代目が商用第1号となり、「WHILL Model A」として発売にこぎ着けました。
分解可能で、軽くなった普及版「Model C」を開発
「Model A」はユーザーの高い評価を得ましたが、内藤さんはそれだけでは満足しませんでした。出荷が始まると、早速、利用者たちの声を集めて、普及をより進めるためのスタンダードタイプの開発に取りかかります。
後に「Model C」と名付けられるこの製品(写真4)は、現状の課題を解決する普及型の福祉用具として開発されました。
内藤さんは、「『Model A』は私たちの理想を形にしましたが、新モデルではよりユーザーの声に耳を傾けることにしました」と言います。
「分解して運べるポータビリティがそれです。分解機能は国内だけでなく海外のお客様からの要望が多くありました。自動車で移動することが多いので、車に『WHILL』を乗せたいという要望でした。また、販売価格を手の届きやすいレベルまで下げるには、製造コストの大幅見直しも必要でした」(内藤さん)
「Model A」発売直後から、「分解してタクシーに乗せたい」などのユーザーの要望がありましたが、その声に応えるには、ボディ素材、モーター、バッテリーなど、「Model A」を根本的に見直すことが必要でした。
内藤さんが、どのように研究開発資金を調達しようかと考えていたときに、目に飛び込んできたのが、NEDO配信のメールでした。そこには支援事業の紹介があり、中でも「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」が、この研究開発には最適なのではと、内藤さんは考えました。
そこで、2015から2016年度に、上記の支援事業に「軽量で走破性に優れる電動車椅子の前輪とモーターの開発」として応募、採択され、WHILLにとって2度目となるNEDOプロジェクトがスタートしました。
研究開発に当たっては、コンパクトかつ低コストにするため後輪のホイール中に小型モーターを組み込み、2輪駆動でも十分な性能が発揮できるように設計を更新しました。しかし、そのためにはゼロからモーターを開発しなければなりませんでした。そこで、モーターメーカーの日本電産株式会社に協力を求め、小型でパワーのあるモーターの開発に取り組みました。
内藤さんは、「開発できたとしても当初の生産量は小さなロットになることは分かっていたのですが、日本電産は全面的に協力してくださり、私たちの細かい要求を聞いてくださいました。新しいカテゴリーの製品を作りたいという思いを伝え、それに技術者の皆さんが共感してくれたのだと思います」と内藤さんは語ります。
WHILLの技術者も日本電産に出向き、一緒に検討を重ねました。「小型でもトルクが大きく、しかも滑らかに動くことが大切です。ハードルは高かったのですが、最終的には私たちが満足するスペックのモーターが完成しました」(内藤さん)
「Model A」は4輪駆動でしたが、「Model C」は2輪駆動になったにもかかわらず、最大5cmの段差を乗り越え、斜度10度の登坂力を持ち、フル充電で16kmの走行が可能です。最小回転半径は76cmと、「Model A」に比べて6cmだけ大きくなっています。
次にバッテリー開発です。「Model A」では内蔵型の鉛電池でしたが、軽量化と使い勝手をよくするために小型軽量のリチウムイオン電池で、なおかつ簡単に交換できるようにしました。
WHILLではパナソニック株式会社の協力を得て専用電池を開発し、バッテリーだけで、30kgもの軽量化に成功しました。外出先での交換も容易なので、予備バッテリーを付属のバスケットに入れておけば、電池切れの心配も軽減できるようになりました(写真5)。
ボディも鉄からアルミ主体に切り替えました。軽さと耐久性、振動の吸収性を同時に実現するために何度も試験を繰り返しました。前輪部の車体にはサスペンションを入れ、後輪部車体ははしご形の構造にし、両方で振動を吸収します。(写真6)
また、新規開発のきっかけとなった分解・組み立て時の負担軽減にも力を入れました。工具を一切使わずに、本体のレバーを動かすだけで、力の弱い女性の手でも簡単に三つのパーツに分けられ、また逆に組み立てることができます。
それぞれのパーツ重さが、15kg、15kg、20kg程度になっており、1人でも車への積み下ろしが可能で、パーツを縦置きすると、狭いスペースでも収納できます(写真7)。
こうして新型モデルの「Model C」を、2017年4月に無事発表することができました。「Model C」 は、「Model A」の改良というよりは全く新しい製品となりました。
コンパクト化、軽量化を進めた結果、重量は約52kgと「Model A」の116kgに比べて半分以下となりました。デザイン面でも6色のカラーバリエーションを用意、ショッピングバスケットをボディ下に標準装備しています。
また、電動車いすとしては日本で初めて3G通信モジュールを搭載し、スマートフォンなどを使って種々の設定や遠隔操作が可能になりました。この通信機能を使い、製品の状態を確認して消耗品の交換を案内したり、利用状況をユーザーにメールで連絡したりする、スマート診断のサービスも開始しています。
「Model A」がフラッグシップモデルであるのに対して、「Model C」はスタンダードモデルとして価格も半額以下に抑え、WHILLでは一気に普及拡大を図ろうとしています。
出荷累計で1,000台を突破、アメリカなど海外市場へも進出
現在、「WHILL」シリーズは台湾の協力工場で生産されており、内藤さんが頻繁に現地に赴いて生産および品質管理の指導を行っています。
「Model A」は2015年度グッドデザイン大賞を受賞し、「Model C」も2017年度グッドデザイン賞を受賞しました。グッドデザイン賞ホームページによれば「既存の車いす製品とは異質の圧倒的な軽快さをアピールしている。スタートアップ企業の製品とは思えない高いレベルの作り込みに迫力が感じられた」と審査委員も高く評価しています。
写真8 2017年10月に開催された「東京モーターショー」に展示された「Model C」。カラフルなカラーバリエーションと洗練されたデザインが注目を集めた
2017年の夏からは、「Model C」の出荷が始まりましたが、既存の電動車いすの乗り換えに加えて、手動車いすから「WHILL」に乗り換える人も多いと言います。
それまで自宅近くにある踏切の溝を越えられず、妻が必ず付き添わないと外出できなかった男性が「Model C」を購入、「オムニホイール」のおかげで溝を気にせずに1人で出かけられるようになったという喜びの声も届いていると内藤さんは話します。
手動・電動からの乗り換えだけでなく、これまで車いすを利用していなかった人たちの購入も多く、ある30代男性の声が、その長所を雄弁に語っています。
「車いすは何かと目立ちますが、『WHILL』に乗っている姿だと、周囲の見る目が明らかに違います。それで『WHILL』で出かけるときは、いつもよりさらにオシャレしたり、まず何でもやってみようという気持ちにさせてくれます。障害を負ったことで『できない』とあきらめていたことが、『できる』に変わります」
また、60代の女性は、1人でマンションのエントランスにさえ行けなかったのに、「WHILL」で生活が変わったと言います。
「『WHILL』は小回りがきくので室内でも移動しやすいのですが、4年ぶりに室外の郵便受けに手紙や新聞を取りに行けたときは、本当に嬉しかったです。また、シートを前にずらすことができるため、レストランなどでは前屈みにならずに食事を楽しめ、設計された方の優しさを身に感じ、大きな感動です。外に出ることの大切さを『WHILL』は実現してくれました」
出資や提携に当たってもNEDOの支援が効果を発揮
当初は開発資金に困っていたWHILLですが、実績が評価されるに従って、投資や業務提携も相次いでいます。2016年5月には複数のファンドやベンチャーキャピタルから総額1,750万ドル(当時のレートで約19億円相当)の資金を調達しました。
内藤さんは、「こうした出資や提携に当たっては、NEDOからの支援を受けていたことが技術面の評価で効果的でした」と語ります。また、「NEDOが国内外の展示会に参加する機会を多く提供していることもありがたい」と言います。
「NEDO主催の展示会は一般の展示会よりも研究者が多いので、レスポンスが高いですね。2017年10月にはタイでの展示会に招待してもらい、そこで知り合った会社から商談の話も来ています」(内藤さん)
今後の展開について内藤さんは、「もっと世界にマーケットを拡大したいと思っています。アメリカでも、2018年1月に米国向けモデル『WHILL Model Ci』を発表し、コンシューマ・エレクトロニクス分野での世界最大級の見本市「CES 2018」の「Accessible Tech」部門で「Best of Innovation Award」も受賞しました。この受賞を皮切りに、アメリカ市場を少しずつ広げていくつもりです」
初めて商品化に成功した「Model A」、アメリカ向けに「Model A」の一部を改良し米国食品医薬品局(FDA)の認可を取った「Model M」、そして最新の「Model C」を合わせて、現在、「WHILL」は世界で累計1,000台以上が出荷され、順調にその数字を伸ばしています。日本発のパーソナルモビリティが世界中で走る日が近づいています。
利用者のニーズがだんだん見えてきた
1人の車いす利用者が言った「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」から始まった「WHILL」開発でしたが、内藤さんはいま利用者のニーズがさらに見えてきたと言います。
「多くの人たちに使ってもらうようになり、パーソナルモビリティのニーズを大きく把握できるようになりました。それに従って、やりたいことがどんどん増えており、まだまだ『WHILL』は発展途上だと感じています」
2011年の東京モーターショーに試作1号機を出品してから丸6年、内藤さんは「利用者が困っていること、求めていることに気づいてきた」と言います。その実現のためには、単に機能だけでなく、価格、スタイル、重さ、メンテナンスサービス、アフターケアも含めてバランスの取れた製品作りが大事になります。
「『WHILL』を使っているお客様には、これまで車いすの利用を考えもしなかった人や、乗りたくなかった人もかなりいると実感しています。その意味では、マーケットに新しい刺激を与えることができたのかなと思います」
WHILL株式会社
代表取締役・共同創業者
内藤 淳平 さん
高い走破性と小回りを両立したオムニホイール 「段差もラクラク」なのに「その場でも回転」
一般的な電動車いすが乗り越えられる段差は2~3cmと言われており、お店の入り口や歩道と車道の間にある「ちょっとした段差」も、車いすユーザーにとって大きなバリアとなってきました。
前輪を大きくすれば、より高い段差を乗り越えやすくなりますが、シニアカーやバイクのような大回りになり、小回りが利かなくなってしまいます。
段差も乗り越えられ、狭い場所でもスムーズに動けるようにするための解決方法の一つが、「オムニホイール」です。
いくつかの車輪が組み合わさって一つのタイヤを構成している「オムニホイール」なら、横方向に回る小さい車輪(サブタイヤ)を使って方向転換するので、前輪が大きくてもその場での回転が可能です。
また、前輪の向きが固定されていることによって、一般的な車いすの前輪キャスターにありがちな、方向転換の際にタイヤが足に当たるといった不便も解消されます。
「オムニホイール」はもともと主に、コンテナなどの搬送手段、電動台車、ロボットなどの駆動輪として利用されてきたため、人が乗る製品への応用には、振動低減が大きな課題でした。
「WHILL」は、大小24個の車輪を組み合わせ、サブタイヤ間の隙間を狭くすることで、振動を抑えることに成功しました。
「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」 (2015~2016年度)
(NEDO内担当部署:イノベーション推進部)
NEDOは、より社会のニーズに沿った福祉用具の実用化を後押しするため、課題解決型福祉用具実用化開発支援事業の助成対象を選定する際に、(1)新規性・研究開発要素を持っていること、(2)利用者ニーズに適合するものであること、(3)具体的な効用が期待され、一定の市場規模を持ちユーザーにとっても経済的に優れていること、を支援の前提として、公正に支援企業を決定しています。
また採択された企業に対しては、開発状況を確認するとともに、展示会への開発品の出展も支援するなど、ビジネスマッチングを後押ししながら、市場の声やユーザーニーズを踏まえた支援を行っています。
WHILL株式会社は、本事業にて研究開発を行い、軽量で走破性に優れる電動車いすの前輪とモーターを開発しました。