複雑形状のCFRP部品の生産性向上と輸送機器のCO2排出削減に期待
2020-02-25 新エネルギー・産業技術総合開発機構,津田駒工業株式会社
NEDOは、複雑形状に対する炭素繊維複合材料(CFRP)の自動積層技術開発に取り組んでおり、今般、津田駒工業(株)とともに、国産初となる小型ロボットタイプのCFRP曲面積層機(ロボットAFP)を開発しました。
本積層機は、高精度アームロボットに、津田駒工業(株)の小型積層ヘッドを搭載することで、曲面など複雑形状のCFRP部品の自動積層を、国産機として初めて実現しました。これにより、軽量で高強度なCFRP部品の生産性向上に加え、CFRP部品の適用拡大による航空機をはじめとする輸送機器の軽量化と二酸化炭素(CO2)排出削減が期待できます。
今後、津田駒工業(株)は本積層機を、航空機産業を中心に展開していきます。また、将来はCFRPの利用拡大が期待される自動車産業などへの展開も図り、国内の素材産業や加工・製造分野の国際競争力強化に貢献します。
図 開発したロボットAFPの積層ヘッド
1.概要
世界の人口増加や格安航空会社(LCC)の台頭によって航空需要が高まる中、航空機の省エネルギー化が求められており、その解決策として軽量新素材である炭素繊維複合材料(CFRP)※1の適用が期待されています。一方で、CFRPは曲面などの複雑形状になじみにくいため、その積層については、人の手作業が不可欠であり、大量生産に向けた課題となっていました。
このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2015年度から航空機産業の国際競争力の維持・拡大を目的とする要素技術開発プロジェクト※2に取り組んでおり、今般、同事業の中で、津田駒工業株式会社は小型ロボットタイプのCFRP曲面積層機(ロボットAFP)を開発しました。
今回開発したロボットAFPは、津田駒工業(株)が、既に国内外で航空機・自動車部品製造用途として適用実績のある独自の自動積層技術および周辺装置、工作機械関連装置の要素技術を展開し、高精度ロボットに小型積層ヘッドを搭載することで、航空機の胴体・翼などの構造部品(チャンネル部品)など複雑な形状のCFRP部品の自動積層を可能にしました。これにより、軽量で高強度なCFRPを使った部品の生産性向上が期待できます。
今後、津田駒工業(株)は今回開発したロボットAFPを、航空機産業(機体・部品メーカー)や研究開発機関を中心に展開していきます。また、将来はCFRPの利用拡大が期待される自動車産業などへの展開も図り、さまざまな産業での部材軽量化による温室効果ガス排出削減につなげるとともに、国内の素材産業や加工・製造分野の国際競争力強化に貢献します。
なお、津田駒工業(株)は、2020年3月3日から5日までフランスのパリで開催される複合材の国際展示会「JEC World 2020※3」で、本装置の詳細について説明します。
2.今回の成果
本積層機では、炭素繊維に樹脂を染み込ませた中間材料(熱硬化プリプレグ)を1/4インチ程度の細幅にカットした材料(スリットトウ)を用います。計16本のスリットトウを個別に制御して高速積層することにより、複合材部品の高生産性を実現しました。
また、高精度のアームロボットに、小型化した積層ヘッドを搭載することにより、これまでは適用が難しかった曲面のある複雑形状にも対応しました。さらに、CFRPの積層作業をロボットが自動で実施することにより、製造工程の低コスト化が見込めるため、航空機や自動車をはじめとする輸送機器分野などへのCFRP部品の利用拡大に貢献します。
3.今後の予定
津田駒工業(株)は、本積層機の初号機を川崎重工業株式会社へ納入する予定です。また将来は、炭素繊維複合素材の利用拡大が期待される自動車産業などへの展開も図り、国内の素材産業や加工・製造分野の国際競争力強化に貢献します。
【注釈】
- ※1 炭素繊維強化複合材料(CFRP)
- 「Carbon Fiber Reinforced Plastics」
引張強度を比重で割った比強度が鉄の約10倍である炭素繊維で樹脂を強化した複合材料です。CFRPの比重は鉄の約1/5であり、CFRPを適用することにより部品の軽量化を図れます。
- ※2 要素技術開発プロジェクト
-
- 事業名:次世代構造部材創製・加工技術開発
- プロジェクトリーダー:青木隆平氏(東京大学)
- 事業期間:2015年度~2019年度
- ※3 JEC World 2020
- 2020年3月3日から5日までフランスのパリ(会場:Paris Nord Villepinte)で開催される世界最大規模の複合材展示会です。「JEC World 2019」では1300以上の出展社が参加したほか、112カ国からの来訪者がありました。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:大中道、飯山
津田駒工業(株) コンポジット機械部 担当:坂井、西村
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:佐藤、坂本