トポロジカル量子物質のスピン機能開拓に成功~電気的スピン生成・計測を室温で実現~

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2022-10-19 京都大学

電子工学専攻の大西康介 修士課程学生、白石誠司 同教授らのグループは名古屋大学の竹延大志 教授と共同で、21世紀の新しい物質「トポロジカル量子物質」の一種である「ワイル半金属」を用いて、室温でスピン情報を電気的に生成・計測できる素子を実現しました。

「トポロジカル量子物質」とは、その電子状態がトポロジカル(伸ばす、曲げると言った変形を加えてもその前後で性質が変わらないこと)に「捻れた」物質であり、20世紀までに発見されてきた半導体・金属・磁性体などとは根本的に異なる性質を持つ物質です。2016年のノーベル物理学賞がこの研究分野の草分けとも言うべき研究に与えられたことは、トポロジカル量子物質の極めて高い重要性を示すものです。今回の研究では、このトポロジカル量子物質の一種であるワイル半金属であり、かつ、これも近年盛んに研究されている原子層物質でもあるWTe2(二テルル化タングステン=タングステンダイテルライド)を用いて、その結晶構造に由来した熱ゆらぎに対して強靭なスピン状態を、新開発の素子により電気的に生成・計測することに成功しました。このスピン情報は室温でも生成・計測できることから、スピンを用いた新しい情報伝播・計測素子への応用が可能です。

本成果は2022年10月18日(現地時刻)にドイツの科学誌であるAdvanced Electric Materials誌にオンライン掲載されました。

トポロジカル量子物質のスピン機能開拓に成功~電気的スピン生成・計測を室温で実現~

図:ワイル半金属であるWTe2におけるスピン状態生成の概念図。
非磁性の(スピン情報を持たない)金属から電流をWTe2に注入すると、WTe2の結晶構造に由来した効果によるスピン情報が生成できる。スピン情報が生成できるのは結晶構造におけるa軸方向に電流を流した場合であり、例えばb軸方向に電流を流してもスピン情報は生成できない。

研究詳細≫

研究者情報

白石誠司

書誌情報

タイトル
All-electric spin device operation using the Weyl semimetal, WTe2, at room temperature
(ワイル半金属WTe2を用いた室温における全電気的スピン素子動作)

著者
K. Ohnishi , M. Aoki , R. Ohshima , E. Shigematsu , Y. Ando , T. Takenobu , M. Shiraishi

掲載誌
Advanced Electronic Materials

DOI
10.1002/aelm.202200647

1700応用理学一般
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