2022-04-27 横浜国立大学,科学技術振興機構
ポイント
- 量子コンピューターを大規模化するためには、量子インターフェースによって量子ネットワークに接続し、分散処理化することが必要である。
- 分散処理にはタイミング制御が不可欠であり、一時的に量子状態を保持する量子メモリーを備えた量子インターフェースが必要である。
- 一時的に保持した量子メモリーに発生するエラーを自動的に量子誤り訂正することで、誤り耐性のある量子コンピューターやグローバルな量子インターネットへの道を開く。
横浜国立大学 大学院工学研究院/先端科学高等研究院の小坂 英男 教授らは、ダイヤモンド中の窒素および複数の炭素同位体からなる量子メモリーをゼロ磁場下で制御することで、量子誤り訂正に世界で初めて成功しました。
研究グループは、ダイヤモンド中の窒素空孔中心(NV中心)を構成する窒素原子とその周囲にある複数の炭素同位体原子の核スピン集団を、量子情報を長時間保持するための論理的な量子メモリーとして用い、操作エラーによって破壊された量子状態を自動的に訂正できることを実証しました。ゼロ磁場下のスピン集団を用いた量子誤り訂正は世界初です。
本研究により、ゼロ磁場下で動作する超伝導量子コンピューターを量子ネットワークに接続するために必要な量子インターフェースに、量子誤り耐性のある量子メモリーを内蔵することができ、誤り耐性のある分散型量子コンピューターや大規模量子コンピューターネットワーク、さらにはグローバルな量子インターネットを実現するために不可欠な量子中継器の実現に道を開きます。
本研究成果は、2022年4月27日(英国時間)に、Nature Portfolioが発行する「Communications Physics」のオンライン版で公開されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」(プログラムディレクター:北川 勝浩 大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授)研究開発プロジェクト「量子計算網構築のための量子インターフェース開発」(プロジェクトマネージャー(PM):小坂 英男 横浜国立大学 大学院工学研究院 教授/量子情報研究センター センター長)(課題番号JPMJMS2062)、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「量子状態の高度な制御に基づく革新的量子技術基盤の創出」(研究総括:荒川 泰彦 東京大学 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構 特任教授)(課題番号JPMJCR1773)のほか、日本学術振興会「科学研究費助成事業」(課題番号20H05661、20K20441)、総務省「ICT重点技術の研究開発プロジェクト グローバル量子暗号通信網構築のための研究開発」(課題番号JPMI00316)の支援を受けて行われました。
<論文タイトル>
- “Quantum error correction of spin quantum memories in diamond under a zero magnetic field”
- DOI:10.1038/s42005-022-00875-6
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
小坂 英男(コサカ ヒデオ)
横浜国立大学 大学院工学研究院 教授/量子情報研究センター センター長(兼務)
<JST事業に関すること>
犬飼 孔(イヌカイ コウ)
科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
横浜国立大学 学長室 広報・渉外係
科学技術振興機構 広報課