2021-09-23 アメリカ合衆国・カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)
・ UCSD と LG Energy Solution が、固体電解質と全シリコンアノードを利用した、安全、長寿命でエネルギー高密度のシリコン全固体電池を開発。電力系統でのエネルギー貯蔵や EV での利用が期待できる。
・ シリコンアノードは現在商用のリチウムイオン電池で利用されているグラファイトアノードの 10 倍のエネルギー密度を有するが、充放電時の膨張・収縮による容量損失と液体電解質との界面との相互作用による劣化の課題がある。
・ エネルギー高密度を提供する次世代固体電池では金属リチウムアノードの使用が必須だが、充電速度と充電時の温度(通常 60℃以上)が制限される。
・ また、シリコン合金アノードの商業化に向けた過去の試みで重視されたシリコンとグラファイトの複合材料やナノ構造微粒子とポリマーバインダの組合せでは、安定性に課題があった。
・ 全シリコンアノードではこれらの制限を克服し、エネルギー高密度を維持した室温~低温度でのより速い充電速度を実現。研究室規模の電池で室温下 500 回の充放電サイクルと 80%の容量維持を実証した。
・ シリコンアノードから炭素とバインダを取り除き、ナノサイズのシリコンに比べて低処理・低コストのミクロシリコンを利用した全シリコンアノードを採用し、電解質を液体から硫化物ベースの固体に変換。アノードが有機液体電解質に触れることで起こる一連の課題を解決した。
・ アノードから炭素を除去することで、固体電解質との界面接触と不要な副反応を大幅に減少させ、液体電解質で起こりやすい容量損失を回避。低コスト、高エネルギーで環境負荷の低いシリコンの利点を最大限に活用する。
・ 硫化物ベースの固体電解質は安定性に欠けると考えられているが、これは液体電解質システムで利用される従来的な熱力学的解釈に基づいており、固体電解質の優れた動力的安定性が考慮されていいない。このような反直感的特性を活用することで、高安定なアノードを開発した。
・ スタートアップの UNIGRID Battery に同電池技術のライセンスを供与。本研究は、電池関連技術開発を積極的に支援する LG Energy Solution のオープンイノベーションプログラムが支援した。
URL: https://ucsdnews.ucsd.edu/pressrelease/meng_science_2021
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Science 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Carbon-free high-loading silicon anodes enabled by sulfide solid electrolytes
URL: https://www.science.org/doi/10.1126/science.abg7217