ドイツで大規模ハイブリッド蓄電池システムを完成、11月に実証運転開始

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2種類の蓄電池の併用により、電力系統の安定化に貢献

2018/10/31  新エネルギー・産業技術総合開発機構,日立化成株式会社,株式会社日立パワーソリューションズ,日本ガイシ株式会社

NEDOと日立化成(株)、(株)日立パワーソリューションズ、日本ガイシ(株)は、ドイツのニーダーザクセン州ファーレル市で大規模ハイブリッド蓄電池システムを完成させ、2018年11月1日より実証運転を開始します。

本システムは、特性の異なる2種類の蓄電池(リチウムイオン電池とナトリウム硫黄電池、合計容量11.5MW/22.5MWh)から構成されます。高出力・大容量で充電・放電が可能なシステムとすることで、電力需給バランスの調整をより経済的に実現し、再生可能エネルギーの大量導入が進んだ電力系統の安定化に貢献することを目指します。

実証運転は、近年、風力発電の導入量が拡大しているニーダーザクセン州で行い、本システムの効果を検証します。また、本システムを用いた新しい電力取引の事業モデルも検証します。

実証運転を開始する大規模ハイブリッド蓄電池システムの写真

写真 実証運転を開始する大規模ハイブリッド蓄電池システム

1.概要

ドイツは、2050年までに国内電力需要の80%以上を再生可能エネルギーに代替するエネルギー転換政策「Energiewende」を掲げ、風力発電や太陽光発電などの導入を積極的に進めています。それら再生可能エネルギーの利用拡大に伴い、これまで一定の周波数を維持する役割などを担っていた火力発電などが使われなくなってきており、火力発電の役割を代替する技術へのニーズが急速に高まっています。

このニーズに対応すべく、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とドイツのニーダーザクセン州経済・労働・交通省、同州内の電力供給を担う管理組織EWE-Verband、および同社の子会社であるEEW Holdingは「大規模ハイブリッド蓄電池システム実証事業」を実施することとし、2017年3月19日に実証事業開始に向けた基本協定書(MOU)を締結しました。同時にNEDOの委託先として選定された日立化成株式会社、株式会社日立パワーソリューションズ、日本ガイシ株式会社の3社と、ドイツ側の協力企業で地域電力会社のEWE AGが協定付属書(ID)を締結し、2017年4月より本実証事業を開始しました。その後、同州ファーレル市より大規模ハイブリッド蓄電池システムの設置許認可を取得し、基礎工事や機器の搬入・設置を経て、システムの完成と試運転が完了したことで、2018年11月1日より実証運転を開始します。

なお、実証運転の開始に先立ち、2018年11月1日10時(現地時間)に、ファーレル市のファーレル変電所で運転開始式を行います。式には在ドイツ日本国大使館の八木毅特命全権大使を来賓として迎え、ドイツ連邦交通・デジタルインフラ省Enak Ferlemann政務次官ほか関係者が多数出席する予定です。実証事業は2020年2月まで行います。

2.実証内容

実証運転では、高出力の充電・放電が可能な日立化成(株)のリチウムイオン電池(容量7.5MW/2.5MWh)と、大容量で長時間の充電・放電が可能な日本ガイシ(株)のナトリウム硫黄電池「NAS®電池」(容量4MW/20MWh)の2種類の電池と、(株)日立パワーソリューションズの系統情報制御システム※1を用いて構築した大規模ハイブリッド蓄電池システムが、電力安定化に有効であることを検証します。系統情報制御システムは、両電池の運用管理に加え、EWE AGの電力取引システムと連携して電力需給情報をやりとりすることで、各機能の効率的な運用を可能にします。

また、本システムを稼働し、従来の火力発電代替機能としての需給調整(Primary Control Reserve※2供給、Secondary Control Reserve※3供給)、バランシング・グループ※4内でのバランシング※5、ローカルな電圧安定化に寄与する無効電力供給※6の各機能を実現し、EWE AGグループの電力取引システムを通じた電力取引を行います。さらにeneraプロジェクト※7と連携し、ドイツ側の需給リソースと組み合わせたVirtual Power Plant(VPP)※8を構成することで、その電源も電力取引に活用します。

本システムにより、電力需給バランスの調整をより経済的に実現し、再生可能エネルギーの大量導入が進んだ電力系統の安定化に貢献することを目指します。

【注釈】

※1 系統情報制御システム
電力系統からの電力の需給バランスの情報を解析し、蓄電池の充電・放電を制御するシステムです。
※2 Primary Control Reserve
需給状況の変化に応じ、需給調整のために計画的に確保される電力で、自動応答30秒以内で発動する機能です。
※3 Secondary Control Reserve
需給状況の変化に応じ、需給調整のために計画的に確保される電力で、送電事業者の指示により5分以内で発動する機能です。
※4 バランシング・グループ
ドイツには発電事業者や電力需要家で構成される電力需給調整を行うグループが複数存在し、グループごとの需給調整責任者は電力の需要と供給が一致するよう調整しています。このグループをバランシング・グループといいます。
※5 バランシング
事前の電力需給計画に対し、実際の需給バランスとの偏差を低減し、バランシング・グループ内のインバランス電力を低減する機能です。インバランス電力とは需要量と供給量の差で、この差にペナルティーが課せられます。
※6 無効電力供給
電力系統の周波数および電圧安定化などの代表的な系統安定化サービスのうち、ローカルな電圧安定化を行う機能です。
※7 eneraプロジェクト
EWE AGが代表幹事を務めるニーダーザクセン州におけるドイツ・エネルギー政策に取り組む大規模再生エネルギー導入対策プロジェクト。(ドイツ連邦経済エネルギー助成プロジェクト)
※8 Virtual Power Plant(VPP)
各地に分散している発電システム、蓄電システム、省エネシステムなどを、IoTを活用して統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させること

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO スマートコミュニティ部 担当:出脇、横溝、楠瀬、藤本、廣瀬

日立化成株式会社 コーポレートコミュニケーションセンタ 広報・IRグループ
担当:小泉

株式会社日立パワーソリューションズ 経営企画本部 経営企画部 広報グループ
担当:佐藤、藤田

日本ガイシ株式会社 コーポレートコミュニケーション部 担当:澤藤、松永

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:藤本、髙津佐、坂本

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