2024年2月の地震活動の評価

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2024-03-11 地震調査研究推進本部地震調査委員会

1.主な地震活動
目立った活動はなかった。

2.各領域別の地震活動
(1)北海道地方
目立った活動はなかった。

2)東北地方
目立った活動はなかった。

3)関東・中部地方
○ 石川県能登地方の地殻内では 2018 年頃から地震回数が増加傾向にあり、2020 年 12 月から地震活動が活発になり、2021 年7月頃から更に活発になっていた。一連の地震活動において、2020 年 12 月1日から 2023 年 12 月 31 日までに震度1以上を観測する地震が 506 回発生した。また、2020 年 12 月頃から地殻変動も観測されていた。1月1日 16 時 10 分に石川県能登地方の深さ約 15km でマグニチュード(M)7.6 の地震が発生した。
1月1日 16 時から3月8日 08 時までの間に、最大震度1以上を観測した地震は 1,727 回(震度7:1回、震度6弱:2回、震度5強:8回、震度5弱:7回)発生した。
1月1日に発生した M7.6 の地震から2か月以上が経過した現在も、M7.6 の地震の発生前と比較すると依然として地震活動は活発な状態である。昨年 12 月までと比べて地震活動の範囲は広がっており、現在も広い範囲で地震を観測している。2月 1 日から3月 11 日 08 時までに震度1以上を観測した地震は 173 回(震度4:3回、震度3:14 回)発生し、このうち最大規模の地震は、2月7日 06 時 08 分に発生した M5.2 の地震(最大震度4)である。また、1月1日の M7.6 の地震の後、およそ2か月間に能都観測点で北西方向に約3cm の水平変動など、能登半島を中心に富山県や新潟県、長野県など広い範囲で1cm を超える水平変動、能登半島北部では輪島観測点で約4cm の沈降が観測されるなど、余効変動と考えられる地殻変動が観測されている。
能登半島西方沖から北方沖、北東沖にかけては、主として北東-南西方向に延びる複数の南東傾斜の逆断層が活断層として確認されている。この領域で 2024 年1月から3月にかけて取得した水深データと 2008 年のデータを比較した結果、能登半島北部の活断層帯の猿山沖セグメントと珠洲沖セグメントでは、断層トレース南東側の海底でそれぞれ約4m と約3m の隆起が観測されている。これら隆起は1月1日の M7.6 の地震に伴う変動を示している可能性が高く、南東傾斜の逆断層の活動が原因と推定される。
また、
2024 年2月と 2023 年5月に取得した水深データを比較した結果、能登半島の東方約 30km にある海底谷の斜面が複数箇所で崩壊していることが分かった。その内、最も大きく崩壊した箇所では長さ約 1.6km、幅約 1.1km 崩れ、最大で約 50m 深くなっていた。この崩壊は M7.6 の地震により生じたものと考えられる。 2024 年と 2010 年に調査された富山湾の海底地形を比較した結果、富山市沖約4km の海底谷の斜面が、南北約 3.5km、東西約1km にわたって崩れ、最大 40m 程度深くなっていることが確認された。M7.6 の地震発生の3分後に富山検潮所で観測された津波と関係した可能性がある。
1月1日に発生した M7.6 の地震発生当初に比べ、地震活動は低下してきているものの、地震活動は依然として活発な状態が継続している。また、陸のプレート内で発生した大地震の事例では、平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震(M6.8)、平成 28 年(2016 年)熊本地震(M7.3)、平成 30 年北海道胆振東部地震(M6.7)のように、最大の地震発生後数か月経って、地震の発生数が緩やかに減少している中で大きな規模の地震が発生したことがある。
これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、2020 年 12 月以降の一連の地震活動は当分続くと考えられ、M7.6 の地震後の活動域及びその周辺では、今後強い揺れや津波を伴う地震発生の可能性がある。
○ 2月 12 日に硫黄島近海の深さ約 270km で M6.5 の地震が発生した。この地震の発震機構は太平洋プレートが沈み込む方向に張力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。
○ 2月 26 日 23 時頃から、千葉県東方沖を中心にまとまった地震活動が継続している。3月 11 日 08 時までに震度1以上を観測した地震は 42 回(最大震度4:4回、最大震度3:6回)発生し、最大規模の地震は、3月1日 05 時 43 分に発生した M5.3 の地震である。これらの地震の発震機構は、概ね北北西-南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、いずれの地震もフィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
GNSS・傾斜データによると、房総半島では2月 26 日頃からわずかな地殻変動を観測している。これまでにGNSSで検出された地殻変動は、大きいところで約2cm である。これらは、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界におけるゆっくりすべりに起因するものと考えられる。
この付近では、過去にも数年に一度程度の頻度でゆっくりすべりを伴う地震活動が観測されており、今回も同様の現象と考えられる。このような現象は、これまでに、1996 年、2002 年、2007 年、2011 年、2014 年、2018 年に見られており、1週間から数か月間程度地震活動が継続することがある。また、2007 年には最大震度5弱を観測している。
過去の地震活動を踏まえると、今後も引き続き地震が発生し震度5弱程度の強い揺れが観測される可能性があるため、強い揺れに注意が必要である。

(4)近畿・中国・四国地方
○ 2月7日に和歌山県北部の深さ約5km で M4.1 の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 2月 14 日に京都府南部の深さ約 10km で M4.4 の地震が発生した。この地震は地殻内で発生した地震であった。
○ 2月 26 日に伊予灘(*1)の深さ約 45km で M5.1 の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東-西南西方向に張力軸を持つ型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。

5)九州・沖縄地方
目立った活動はなかった。

(6)南海トラフ周辺
○ 南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていない。

補足(3月1日以降の地震活動)
○ 3月2日に宮崎県北部平野部の深さ約 15km で M4.3 の地震が発生した。この地震は地殻内で発生した地震であった。

*1:気象庁が情報発表に用いた震央地名は「愛媛県南予」である。
注:GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称である。

詳しい資料は≫

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1702地球物理及び地球化学
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