2023-12-25 IHI技術情報
IHIは,新たな水素製造技術として開発を進めている天然ガス熱分解による水素製造の試作機における実験を開始します。12月からIHI横浜事業所において試作機(水素製造量10kg/日相当)の運用を開始し,商用化に向けた様々な基礎データの取得を始めます。
今回,開発に着手した天然ガス熱分解による水素製造技術は,天然ガスを加熱し水素と固体の炭素に分解する技術です。従来の水蒸気改質による水素製造技術に比べ,単位当たりの水素を生成するために必要なエネルギーが約4割削減できることを特徴としています。また,熱分解によって生じた炭素は90%以上を固体として回収されるため,CO2排出量の大幅な削減が期待されます。
横浜事業所に設置した試作機のイメージ図
左) 触媒として使用する鉄鉱石
右) 左の鉄鉱石に炭素が析出したもの
触媒には鉄鉱石を使用し,鉄鉱石のハンドリングには,IHIが長年保有してきた流動層技術を活用することで,最大で100 ton/日の水素製造を目指します。
この仕様より,従来の水素製造技術に比べて低廉でCO2排出量の少ない水素製造技術の確立を目指します。
また,固体化した炭素については貯留を想定している他,土壌改質や水質改善などに用いるなどの有効利用についても検討を進めています。
<天然ガス熱分解水素製造の特徴>
・わずかな再エネ電力を熱源に天然ガスを分解し,炭素を固体として回収可能
・炭素をほぼ全量回収することで, CO2排出量の大幅削減が可能
・触媒に鉄鉱石を使用することで,低コストで水素製造が可能
本技術は,再生可能エネルギー由来の電力を熱源として,鉄鉱石と天然ガスの産出国である米国,豪州において2020年代後半の実用化を目指します。
この技術は,将来,大幅な普及が期待されている水電解による水素製造に先駆けた,既存の天然ガス設備を利用した過渡的な技術と考えており,水素および燃料アンモニアの普及に大きく貢献する技術として期待されます。
水素製造方法の比較
IHIは,今後も燃料アンモニアの利用技術開発や将来の需要増大へ対応すべく,燃料アンモニアサプライチェーンの構築を進め,カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。