形成中の太陽系を超新星爆発から守ったもの

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2023-06-22 国立天文台

本研究の概念図
本研究の概念図。形成されつつある太陽系は、分子雲フィラメントによって超新星爆発の衝撃波から守られる。さらに分子雲フィラメントは、超新星爆発に由来する放射性元素を太陽系の形成現場に取り込む助けとなっている。(クレジット:国立天文台) オリジナルサイズ(4.7MB)


私たちの太陽系の形成途中に近くで発生した超新星爆発の影響を、太陽系の形成現場となった分子雲フィラメントが盾となって防いだことが、理論的研究によって示されました。これは太陽系の形成過程を理解する上で重要な知見です。

私たちの太陽系が形成されつつあるとき、近くで起こった超新星爆発に由来する放射性元素がその形成現場へ降り注いだことが、隕石の同位体組成から明らかになっています。ところが、超新星爆発で発生する衝撃波は太陽系の形成を妨げるため、今のような太陽系は作られていない可能性があります。以前から指摘されていたこの矛盾をどのように解決するかは、これまで定説がありませんでした。

国立天文台の研究者を中心とする国際研究チームは、星が作られる現場の違いに着目しました。星は、「分子雲」と呼ばれる星間ガスが特に濃い領域で作られます。分子雲の中には、星間ガスがひも状に集まった「分子雲フィラメント」が存在し、太陽のような小質量星は、この分子雲フィラメントの中で作られます。一方、超新星爆発を起こすような大質量星は、分子雲フィラメントどうしが重なった場所で作られます。研究チームが理論的に調べた結果、分子雲フィラメントが重なる場所で起こった超新星爆発の衝撃波は、分子雲フィラメントに吸収されて形成途中の太陽系にはほとんど影響を与えないこと、また爆発で放出された放射性元素は、一度分子雲フィラメントに降り注いだ後に、フィラメントから太陽系形成現場へと間接的に運ばれることで、効率的に集められることが明らかになりました。つまり、我々の太陽系も分子雲フィラメントの中で形成されたと考えることができるのです。

この研究成果は、Arzoumanian et al. “Insights on the Sun Birth Environment in the Context of Star Cluster Formation in Hub–Filament Systems” として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に2023年4月25日付で掲載されました。

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