2022-12-13 国立極地研究所,東京大学大気海洋研究所,海洋研究開発機構
第64次南極地域観測隊(伊村智隊長)および第63次南極地域観測隊越冬隊(澤柿教伸越冬隊長)のうち16名で構成される旅行隊は、南極・昭和基地を2022年11月10日に出発してドームふじ基地に12月4日に到着しました。
この度、国立極地研究所の川村賢二准教授、東京大学大気海洋研究所の阿部彩子教授、海洋研究開発機構の齋藤冬樹研究員らで構成される、第3期ドームふじ観測計画推進委員会(注1)掘削点選定小委員会は、これまでに蓄積した氷床レーダー探査データやシミュレーション等から、今後新たにアイスコアを掘削する「ドームふじ観測拠点II」の場所を、ドームふじ基地から南南西約5kmの地点(南緯77度21分40秒、東経39度38分38秒、下図)に決定しました。南極地域観測第IX期計画における国際共同を含む3度の現地調査の結果と、新たに開発された氷床流動モデルによる多数の数値実験とを組み合わせ、最古級の氷が安定して存在することが期待される地点を複数の候補から絞り込み、6年あまりの議論を経て最終決定に至ったものです。これを受けて、旅行隊はドームふじ基地を出発して12月8日に同地に到着し、「ドームふじ観測拠点II」の建設作業に着手しました。
図:(左)南極大陸図。(右)ドームふじ付近詳細図。★がドームふじ観測拠点II。
本観測は、南極地域観測第X期計画の重点研究観測サブテーマ1「最古級のアイスコア採取を軸とした古環境研究観測から探る南極氷床と全球環境の変動」として行われます。このサブテーマでは、古環境の解明により地球環境の将来予測の高精度化に繋げるべく、これまで人類が手にしたことのない、100万年を超える最古級のアイスコア掘削を目指しています。今後2028年にかけ、毎年夏(南半球の夏)に旅行隊を「ドームふじ観測拠点II」に派遣し、掘削拠点の建設、掘削準備、アイスコアの掘削を進める予定です。
注
注1:第3期ドームふじ観測計画推進委員会
氷床深層掘削の立案から実施、解析の推進を主な目的として、日本雪氷学会、アイスコアコンソーシアム、国立極地研究所等を繋ぐための、研究者を中心とした連携組織。
第3期ドームふじ観測計画推進委員会 掘削点選定小委員会
*は委員長
川村賢二*(国立極地研究所 気水圏研究グループ 准教授)
専門:古気候学
主な役割:全体統括、浅層コア掘削、データ解析、古環境シグナル保存検討
藤田秀二(国立極地研究所 気水圏研究グループ 教授)
専門:雪氷物理学
主な役割:氷床レーダー観測、内部層・基盤地形解析、底面融解推定
阿部彩子(東京大学大気海洋研究所 教授)
専門:気候学・氷床力学
主な役割:氷床モデル統括、入力データ検討、年代・温度分布の解析
齋藤冬樹(海洋研究開発機構・研究員)
専門:氷床力学
主な役割:氷床モデル開発
小長谷貴志(東京大学大気海洋研究所 特任助教)
専門:気候学・氷床力学
主な役割:氷床モデル実験、年代・温度推定、レーダー解析
中澤文男(国立極地研究所 気水圏研究グループ 助教)
専門:雪氷学
主な役割:内陸雪氷観測、浅層コア掘削
津滝俊(国立極地研究所 南極観測センター/気水圏研究グループ 助教)
専門:雪氷学
主な役割:氷床レーダー観測、基盤地形解析、内部層解析
大藪幾美(国立極地研究所 気水圏研究グループ 特任研究員)
専門:古気候学
主な役割:浅層コア掘削、涵養量復元、ガス拡散検討
お問い合わせ先
国立極地研究所 広報室
東京大学大気海洋研究所 附属共同利用・共同研究推進センター 広報戦略室
海洋研究開発機構 海洋科学技術戦略部 報道室