脳型人工知能の実現に向けた新理論の構築に成功~ヒントは脳のシナプスの「揺らぎ」~

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2022-10-24 京都大学

寺前順之介 情報学研究科准教授、坪泰宏 立命館大学准教授の共同研究グループは、生物の脳のように揺らぐニューロンとシナプスで学習を実現する新たなニューラルネットワークの構築に世界で初めて成功しました。ニューラルネットワークは現在発展を遂げている人工知能の基盤技術であり、生物の脳をヒントに提案されましたが、最適化という緻密な計算を必要とするため、脳のニューロンやシナプスが示す強い「揺らぎ」とは整合しない問題がありました。この「揺らぎ」とは、脳ではニューロンやシナプスが、あたかもランダムに、つまり確率的に動作することを意味し、最適化のような緻密な計算とは一致しないようにみえます。

本研究では「脳の学習は最適化ではなく、適切な具体例を生成するサンプリングではないか」と考えることでこの問題を解決し、揺らぎによって最適化なしで学習するニューラルネットワークの構築に成功しました。さらに、この新しいニューラルネットワークが脳の幾つもの実験結果を再現することも発見しました。今後、脳のような高い柔軟性を持ち省エネルギーで動作する脳型人工知能の開発や、私たち人間を含む生物の脳の仕組みの解明への波及効果が期待されます。

本研究成果は、2022年10月21日に、国際学術誌「Physical Review Research」にオンライン掲載されました。

脳型人工知能の実現に向けた新理論の構築に成功~ヒントは脳のシナプスの「揺らぎ」~
脳のように揺らぐニューロンとシナプスによって学習するニューラルネットワークの概念図
ネットワークを構成するニューロン(丸)とシナプス(三角)が全て確率的に動作するにも関わらず、ネットワーク全体としては安定した学習が実現される。

研究者のコメント

「なぜ、脳のニューロンやシナプスが強い揺らぎを示すにも関わらず、私たち人間を含む動物が安定した記憶や学習を実現できるのかは、生物学的にも工学的にも重要な未解決課題でした。今回その答えにつながる理論ができ嬉しく思っています。本研究で用いた「学習とは最適化ではなく具体例を作り続けること」という考えも、生き物らしい柔らかさと相性が良く気に入っており、今後の発展が楽しみです。」(寺前順之介)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:寺前 順之介

1600情報工学一般
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