131億光年かなたに潜む超巨大ブラックホールの前兆を発見

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2022-04-13 国立天文台

コペンハーゲン大学の藤本征史さんを中心とする国際研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡などの宇宙・地上望遠鏡を用いて、地球から約 131 億光年かなたの遠方宇宙に潜む、塵に覆われた非常にコンパクトな天体を発見しました。この天体は、銀河の中で急激に成長しているブラックホールの特徴を示していました。理論的に予測されていながらも長年見つかっていなかったこのような天体の発見は、宇宙初期における超巨大ブラックホールの成長の謎に迫る重要な成果です。

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131億光年かなたに潜む超巨大ブラックホールの前兆を発見

図1:地球から約 131 億光年先で発見された、爆発的星形成銀河内部で急成長中のブラックホールの兆候を示す天体、「GNz7q」(右側の拡大図の中心にある赤い天体)。これまで最もよく研究されている天域のひとつ GOODS-North 領域で見つかりました。ハッブル宇宙望遠鏡による3色の観測データを合成することで、画像に色をつけています。高解像度版はこちら (3.7 MB)。(クレジット:NASA, ESA, G. Illingworth (University of California, Santa Cruz), P. Oesch (University of California, Santa Cruz; Yale University), R. Bouwens and I. Labbé (Leiden University), and the Science Team, S. Fujimoto et al. (Cosmic Dawn Center [DAWN] and University of Copenhagen))


ビッグバンに近い初期の宇宙で太陽の数億倍もの重さの超巨大ブラックホールが発見されて以来、天文学者は、宇宙誕生後の短い期間で超巨大ブラックホールがどのように誕生・成長したのかという問題に困惑してきました。理論的には、まず爆発的な星形成を起こしている活発な銀河の、ガスや塵に覆われた中心部で、ブラックホールが周囲の物質を飲み込み、急成長を始め、その過程で、ブラックホールの降着円盤から発生する強力なエネルギーが周囲のガスや塵などの遮蔽物を吹き飛ばし、最終的に超巨大ブラックホールとその降着円盤が姿を現すと考えられています。ガスの摩擦で光る降着円盤が、非常に明るく輝くコンパクトな天体として観測されるのがクェーサーです。このような明るいクェーサーの観測から超巨大ブラックホールの存在が知られてきました。
観測的には、爆発的星形成銀河と明るいクェーサーは、ビッグバンからわずか7-8億年後の宇宙で発見されています。しかし、超巨大ブラックホールの急成長の謎を解き明かす鍵となるような、過渡期の天体は、これまでに見つかっていませんでした。
研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡の大量のアーカイブデータを再解析することにより、まさに宇宙初期におけるミッシング・リンクであった、爆発的星形成銀河と明るいクェーサーを繋ぐ天体「GNz7q」を発見しました。電波望遠鏡を用いた分光観測から、GNz7q はビッグバンからわずか7億 5000 万年後に存在していたことが判明しました。
「この天体のX線から電波にいたる電磁波スペクトルの特性は、理論シミュレーションによる予測と非常によく一致していました。つまり、GNz7q が、このような宇宙初期の爆発的星形成銀河の中心部で、急速に成長しているブラックホールの最初の観測例であることを示唆しています」と、研究チームを率いた藤本さんは語ります。「GNz7q は、宇宙初期で見つかっている超巨大ブラックホールの先駆体だと考えられます」

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131 億光年かなたに潜む、超巨大ブラックホールの前兆を発見 図2

図2:超巨大ブラックホールの前兆を示す天体「GNz7q」の想像図。爆発的な星形成を起こす銀河の中心において、急激に成長している若いブラックホールが、周りを覆う濃いガスや塵を吹き飛ばし、姿を現しつつあります。高解像度版はこちら (0.9 MB)。 (クレジット: ESA/Hubble, N. Bartmann)


GNz7q は、超巨大ブラックホールの起源を理解する糸口となる重要な天体であるだけでなく、その発見が、これまで最もよく研究されている天域の一つ、GOODS-North 領域 (注1) でされたことも天文学者に驚きを与えています。
「GNz7q の発見は、最もよく研究されていた天域の中心で起きた出来事で、大発見がしばしば我々のほんの目の前に隠れていることを示しています」と、ハッブル宇宙望遠鏡のデータを解析したガブリエル・ブラマーさん (コペンハーゲン大学) は語ります。「GOODS-North という限られた探査領域で GNz7q が発見されたことは単なる偶然とは考えにくく、むしろ、このような天体の出現率は、これまで考えられていたよりもかなり高いかもしれません」
実際に GNz7q は、宇宙初期の明るいクェーサーを識別するために通常使われる特徴に欠けていましたが、GOODS-North 領域でこれまで取得されていた、他に類を見ないほど詳細な多波長のデータセットのおかげで、初めての発見につながりました (注2)。研究チームは今後、類似の天体を系統的に探索し、それらの天体をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の分光装置で詳細に調べたいと考えています。
「GNz7q のブラックホールや母銀河の成長過程、物理的な性質をより詳細に調べることが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で可能になります」と藤本さんは展望を語ります。「また、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam を用いた観測でも宇宙初期に大量のクェーサーが見つかっており (注3)、アルマ望遠鏡や、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での追観測が予定されています。これらの望遠鏡を組み合わせた、多波長での詳細な解析で、GNz7q のような天体が更に続々と見つかるかもしれません。つまり、急速に成長しているブラックホールが、実際にどの程度存在していて、宇宙初期での超巨大ブラックホールの急成長を支えていたかについて、統計的にも調べることが可能になっていくと期待されます」
本研究成果は、英国の科学誌『ネイチャー』に2022年4月13日付で掲載されました (Fujimoto et al. “A dusty, compact object bridging galaxies and quasars at cosmic dawn“)。
この研究は以下の支援を受けて行われました。
The Danish National Research Foundation under grant number 140; the European Research Council (ERC) Consolidator Grant funding scheme (project ConTExt, grant number 648179); Independent Research Fund Denmark grants DFF-7014-00017 and DFF-8021-00130; the Villum Fonden research grant 37440, ‘The Hidden Cosmos’.
(注1) GOODS (Great Observatories Origins Deep Survey) は、ハッブル宇宙望遠鏡、ハーシェル宇宙望遠鏡、XMM-ニュートンX線天文衛星、スピッツァー宇宙望遠鏡、チャンドラX線観測衛星、そして、すばる望遠鏡などの地上の強力な望遠鏡による多波長観測を組み合わせた探査で、北天と南天に探査天域 (GOODS-North、GOODS-South) があります。
(注2) すばる望遠鏡の MOIRCS で得られた Ks バンド (2.15 ミクロン) の深い撮像データは、GNz7q のスペクトルエネルギー分布の解析において、ブラックホールと、爆発的星形成を起こしている母銀河の成分を分離することに貢献しました。
(注3) 詳しくは、2019年3月13日付のハワイ観測所プレスリリース「超遠方宇宙に大量の巨大ブラックホールを発見」をご覧ください。発見された巨大ブラックホールを持つ銀河の数はこの発表時には 83 個でしたが、現在では 100 個以上にまで発見数が増加しています。

すばる望遠鏡について
すばる望遠鏡は自然科学研究機構国立天文台が運用する大型光学赤外線望遠鏡で、文部科学省・大規模学術フロンティア促進事業の支援を受けています。すばる望遠鏡が設置されているマウナケアは、貴重な自然環境であるとともにハワイの文化・歴史において大切な場所であり、私たちはマウナケアから宇宙を探究する機会を得られていることに深く感謝します。

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