衛星画像から過去35年間の国内全域の伐採・植栽箇所を可視化

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2022-04-05 森林研究・整備機構 森林総合研究所

ポイント

  • ⽇本全域での過去35年間の伐採箇所と、その後の針葉樹の植栽状況を衛星画像で推定しました。
  • 毎年の伐採面積は増加傾向でしたが、針葉樹林が伐採された後に針葉樹が再植栽された面積の割合は低いままでした。
  • 公開されたマップの利用により、各地域での森林の管理計画策定へ貢献することが期待されます。

概要

国⽴研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所は、衛星画像を用いて日本全域の過去35年間の伐採箇所をマッピングし、伐採の場所と時期、その後の植栽状況を明らかにしました。⽇本では近年針葉樹人工林を中心に伐採活動が活発になっています。しかし、いつ・どこで伐採が行われ、伐採後に植栽されたのかを把握するには伐採者や森林所有者の⾃⼰申告等による情報に頼らざるをえませんでした。本研究では、長期間観測を行っている衛星画像を利用して1985年から2019年までの毎年の伐採箇所を推定し、伐採後に針葉樹で植栽されているか、また、時系列的に伐採・植栽活動がどのように変化しているかを調べました。その結果、毎年の伐採面積は直近10年で増加傾向にあり、近年の伐採活動の活発化を裏づけました。針葉樹林が伐採された後、針葉樹が再植栽される割合は1980年代から減少傾向でしたが、2010年以降は下げ⽌まり、現在では5–6割程度は再植栽されていると判断できました。本研究成果は、各地域での伐採・植栽活動の把握と森林管理計画の策定に利用されることが期待されます。
本成果は、2021年12⽉15⽇にInternational Journal of Applied Earth Observation and Geoinformation 誌に掲載されました。

背景

近年、日本では利用期を迎えた人工林の増加に伴い伐採活動*1が盛んになっています。これらの伐採が行われた場所と面積、および伐採後に植栽されたかどうかを把握することは、森林資源の持続的な利用と、森林の多面的機能を発揮させるために重要です。日本では森林所有者などが届け出る伐採造林届等の情報を市町村が確認することにより、伐採や造林の状況が把握されています。しかし、自己申告による伐採造林届の情報のみでは、伐採の場所や面積、伐採後の植栽の状況については完全にはわかっていませんでした。

内容

そこで本研究では、長期間観測を続けているLandsat衛星画像を利用し、1985年から2019年までに伐採活動(ここでは皆伐とみなす)およびその他の森林撹乱(⼟地転⽤*2・間伐*3・⾃然撹乱*4)があった箇所を毎年推定するモデルを開発し、⽇本全域を対象に30m解像度でマッピングしました(図1)。さらに、伐採前後の植生を分類し、針葉樹林の伐採後に再び針葉樹林となった箇所は人工林として再植栽されたとみなし、植栽⾯積を調べました。
その結果、⽇本全域の伐採面積は2010年以降、年間約4万haから6万haへと増加傾向にあり、近年の伐採活動の活発化を裏付けました(図2)。針葉樹林が伐採された後、針葉樹人工林として再植栽されたと考えられる割合は、1980年代から減少傾向でしたが、2010年以降は約5–6割でほぼ横ばい傾向でした(図3)。政府の統計値と比較すると、誤差を補正した本研究による針葉樹の推定再植栽面積はほぼ⼀致しましたが、伐採面積は統計値よりも過小に推定されていました。本研究での針葉樹林伐採後の再植栽割合の定義には広葉樹の伐採と植栽面積が含まれていません。広葉樹林伐採後に植栽されることが少ないことを考慮すると、針葉樹・広葉樹どちらも含む伐採に対する植栽面積の割合は本研究の値よりも低い可能性があります。それでも、本研究の結果から伐採後少なくとも4–5割程度は針葉樹人工林として植栽されていないと考えられます。

衛星画像から過去35年間の国内全域の伐採・植栽箇所を可視化
図1. 日本全域の伐採および森林撹乱のマップと代表的地域の例示。
(a)宮崎県(伐採が近年増加している)、(b)兵庫県(1980年代から90年代にかけてゴルフ場や工業用地などの開発が行われた)、(c)北海道(2004年台風18号による大規模な風倒害およびその処理の後、近年伐採が再開している)。

図2 1985年~2019年頃の森林撹乱面積の推移を示すグラフ
図2. 全国の伐採およびその他の森林撹乱の推定面積の推移。誤差線は95%信頼区間を表し、利用したい手法の特性上、年ごとの変動には誤差を伴うが、数年間に渡るマクロなトレンドは再現できている。

図3 針葉樹人工林の再植栽の割合を、1980年代の減少傾向と2010年以降横ばい傾向を示したグラフ
図3. 針葉樹林の伐採後に針葉樹が再植栽された割合の推移。

今後の展開

今回作成した伐採およびその他森林撹乱の箇所を⽰すマップはオンラインで公開しています(下記URL。なお、今回のマップ作成にあたっては、全て公開されているデータを利⽤しました)。各地域での伐採・再植栽の状況がより迅速・正確に把握されることで、森林資源利用の現状に即した森林の管理計画策定に利用されることが期待されます。

https://doi.org/10.5281/zenodo.4654619
(元データと派生データがあり、内容の詳細は説明文書に記載されています。また、URL内のEarth Engine Apps のリンク先では、対話的にデータを閲覧できます。)

論文

タイトル:Country-wide mapping of harvest areas and post-harvest forest recovery using Landsat time series data in Japan(時系列Landsat画像を⽤いた⽇本全域を対象とした伐採地と伐採後の植⽣回復のマッピング)

著者:志水克人、齋藤英樹

掲載誌:International Journal of Applied Earth Observation and Geoinformation 104巻(2021年12月)

DOI:10.1016/j.jag.2021.102555

用語解説

*1 伐採活動
本研究では森林を構成する立木の大部分を伐倒し収穫する作業を指す。

*2 ⼟地転用
人為的活動により森林を森林以外の土地利用に転換すること。

*3 間伐
立木の⼀部を伐採し、残った立木の成長を促進させる作業

*4 自然撹乱
風倒や噴火、斜面崩壊などの人為的活動によらず発生し、森林の構造を大きく変える現象。

お問い合わせ先

研究担当者:
森林総合研究所 森林管理研究領域資源解析研究室 任期付研究員 志水克人

広報担当者:
森林総合研究所 企画部広報普及科広報係

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