世界最大規模の”模擬宇宙”を公開~宇宙の大規模構造と銀河形成の解明に向けて~

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2021-09-10 国立天文台

「Uchuu」で得られた現在の宇宙でのダークマター分布。図中の囲みは、このシミュレーションで形成した最も大きな銀河団サイズのハローを中心とする領域を、順々に拡大しており、最後の図は一辺約0.5億光年に相当する。(クレジット:石山智明) オリジナルサイズ(6.7MB)背景画像(20.8MB)左画像(5.3MB)中央画像(1.5MB)右画像(1.1MB)

国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイII」の全能力を使ったシミュレーションによって、世界最大規模の“模擬宇宙”を作ることに成功しました。この模擬宇宙のデータは誰もが使える形で公開され、宇宙の構造形成や天体形成の謎の解明に役立てられます。

私たちの宇宙は、数千億もの恒星の集団が作る銀河や、銀河が数百群れ集まる銀河団があり、さらにはその銀河団同士が宇宙の大規模構造を作り出すという、階層的な構造を成しています。この宇宙の構造形成の鍵を握るのが暗黒物質です。暗黒物質は重力のみが働く謎の物質で、この宇宙の質量の約8割を占めていることが分かっています。138億年前の宇宙誕生から現在までの間に、この暗黒物質が重力によって集まり、暗黒物質が多く集まった場所で星や銀河が形成されて、現在の宇宙の階層構造が作られたと考えられています。

このような構造の中で、銀河や、銀河中心に存在する巨大ブラックホールのような天体は、どのように生まれたのでしょうか。その誕生の歴史を、現在、国立天文台のすばる望遠鏡などを用いた観測で明らかにしようとしています。宇宙の構造形成の歴史の情報を観測の結果から引き出すためには、物理理論に基づいて作られた“模擬宇宙”との比較が必要になります。模擬宇宙を作るには、コンピュータを用いて、宇宙誕生から現在に及ぶ暗黒物質の重力相互作用のシミュレーションをしなければなりません。しかし、多大な計算資源が必要となるため、これまでの研究で用いられたコンピュータの能力では、観測との比較に必要となる空間的な大きさや精密さを達成できなかったのです。

国立天文台が2018年から運用を始めた天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイII」が、この問題を解決に導きました。千葉大学の石山智明(いしやま ともあき)准教授をはじめ、スペイン、米国など9カ国の研究者から成る国際研究チームによる研究成果です。研究チームは、アテルイIIに搭載された40,200個の全CPUコアを用いて、世界最大規模となる宇宙の構造形成シミュレーションに成功しました。「Uchuu(宇宙)」と名付けられたこの大規模シミュレーションは、暗黒物質を2.1兆体の粒子で表し、それらに働く重力を計算することで、暗黒物質が作り出す模擬宇宙の構造を詳細に描き出しました。「Uchuu」は、一辺が96億光年という空間的な広大さと、矮小(わいしょう)銀河から巨大銀河団に及ぶ、8桁にもわたる幅広い質量の天体の進化を追うことができる精密さを、実現できたのです。

「Uchuu」のシミュレーションのデータは、全体で3ペタバイト(1ペタは10の15乗)にも及びますが、研究チームは高性能計算技術によってこのデータを大幅に圧縮し、誰もが容易に使えるような形式でインターネット上に公開しました。模擬宇宙における暗黒物質の構造形成の情報に特化した、約100テラバイト(1テラは10の12乗)の基礎データです。このデータは、すばる望遠鏡などによる大規模天体サーベイ観測の結果との比較に用いられ、宇宙の大規模構造の進化や、銀河や巨大ブラックホールの形成の解明に向けた研究に、幅広く役立てられることが期待されています。

本研究成果は、Ishiyama et al. “The Uchuu simulations: Data Release 1 and dark matter halo concentrations”として、英国の『王立天文学会誌』2021年9月号に掲載されました。

シミュレーションで形成した、最も大きな銀河団サイズのハローを中心とする領域の、ダークマター分布を可視化したムービー。初期密度揺らぎが重力で成長し、無数のダークマターハローが形成する様子と(47秒まで)、現在時刻におけるそのハロー周辺の様子(47秒以降)。(クレジット:石山智明、中山弘敬、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト)

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