メートル規模の岩石摩擦実験により大地震発生前の前震活動の特徴を明確化

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2021-07-21 防災科学技術研究所

国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:林春男) は、地震発生メカニズムの解明を目的として、大型振動台を活用したメートル規模の岩石摩擦実験を行い、大地震発生前に観測される前震活動の特徴を明らかにしました。

1.概要:(詳細は別紙資料を参照)
国立研究開発法人防災科学技術研究所は、我が国の防災力・減災力の向上を目指し、地震発生メカニズムの解明に向けた研究を進めています。
特に、地震の始まり方に関する研究は、これまでも世界中で進められており、現在、“プレスリップ型”と“カスケードアップ型”の二つの有力なモデル(型)が提唱されています。
今般、これら二種類のモデルで示される地震の始まりをメートル規模の模擬断層面の状態を制御した岩石実験によってそれぞれ再現し、さらに、二種類のモデル毎に発生する前震活動のパターンが大きく異なることを明らかにしました。
今後、本研究をさらに進めていくことで、各々の断層における地震の始まりの時期及び形態をより的確に推定できるようになる可能性があり、地震発生の予測精度向上に貢献できると期待されます。
2.論文情報:「Nature Communications」
(7月14日付:UK時間10時、日本時間18時)オンライン版
Futoshi Yamashita, Eiichi Fukuyama, Shiqing Xu, Hironori Kawakata, Kazuo Mizoguchi,and Shigeru Takizawa(2021) Two end-member earthquake preparations illuminated by foreshock activity on a meter-scale laboratory fault,

Nature Communications. https://doi.org/10.1038/s41467-021-24625-4<?XML:NAMESPACE PREFIX = “[default] http://www.w3.org/2000/svg” NS = “http://www.w3.org/2000/svg” />

(別紙資料)メートル規模の岩石摩擦実験により大地震発生前の前震活動の特徴を明確化
1.はじめに
地震がいつ・どのように始まるのかを解き明かすことは、基礎研究の観点のみならず、防災・減災の観点からも極めて重要です。国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下「防災科研」という。)は、その解明に向け、プロジェクト研究「巨大地震発生メカニズム研究」を進めており、大型岩石試料を用いた摩擦実験によりその研究課題に取り組んでいます。
これまで世界中の研究者により、地震の始まりについての様々なモデルが提案されてきており、その中でも、断層の一部で始まったゆっくりとしたすべり(いわゆるプレスリップ)が加速しつつ断層全体に広がって本震に至るという“プレスリップ型”と、小さな地震がより大きな地震を次々と誘発して本震に至るという“カスケードアップ型”の二つのモデルが有力視されています。
しかし、これまで、前震活動(本震前の地震活動)等からプレスリップ型あるいはカスケードアップ型で発生したと主張されている地震がそれぞれ報告されており、どちらのモデルが現実の大地震の発生をより適切に表現しているかについては今でも明らかになっていません。特に、プレスリップ型は元々、岩石摩擦実験の結果に基づいて提案されたモデルであり、これまで数多くの地震研究で採用されていますが、未だにこのモデルに従うプレスリップ自体が自然の地震前に明瞭に観測された例はありません。室内実験においてプレスリップ型ばかりが選択的に発生する理由として、模擬断層面を自然と同様に不均質にすることが難しく、特に、小さな規模の岩石試料ではほぼ不可能であったため、カスケードアップ型が発生しづらかったと考えられます。
本研究では、防災科研つくば本所の大型振動台を活用した岩石摩擦実験により、メートル規模の模擬断層面の状態を制御することで二つのモデルに従う地震の始まりを再現することに成功し、さらにそれぞれの条件における前震活動の詳細な比較を可能にしました。
2.研究成果
本研究では、メートル規模の岩石試料2本(上側1.5m長、下側2.0m長)を上下に積み重ね、下側の試料を振動台上に固定する一方、上側の試料は振動台外側に設置したバーによって動かないよう固定し、振動台を一定速度で移動させることで試料間を相対変位させました(図1)。この時、試料間はスムーズにはすべらず、固着すべりと呼ばれる固着と高速のすべりを繰り返す現象を引き起こしました。この固着すべりは、自然の断層で地震が繰り返し発生するメカニズムと同等と考えられています。本研究でも岩石試料の接触面を模擬断層面、高速のすべりを本震と見なして解析を行いました。過去の岩石摩擦実験と同様、模擬断層面を比較的均質にした状態では、プレスリップ型の始まりが再現されることを確認しました。一方、模擬断層面上に一つ前の実験で不均質に生じた摩耗物をそのままの状態に配置して実験を開始することで自然の環境に近い不均質性を設定し、カスケードアップ型の始まりを再現することに成功しました。これらの結果により、地震の始まり方には断層面の均質性が大きく関わっていることが具体的に示されました。
また、それぞれの条件の実験において前震が多数観測され、模擬断層面の状態によって地震の規模の相対的な発生割合を示すb値と呼ばれる統計量が有意に異なることが示されました。さらにカスケードアップ型の場合の前震活動を詳細に調査したところ、その活動パターンから本震の発生時期を予測できる可能性が示されました。実際の自然断層は、本実験で設定した両極端な均質・不均質のどちらかではなく両方者の特性を含んでおり、均質性の度合いによってプレスリップ型もしくはカスケードアップ型どちらかの特性が強く出ているものと考えられます。
3.今後の展開
本成果は二種類の地震の始まりを実験によって再現したに留まらず、それが断層面の均質性によって制御されていることを具体的に示すとともに、それぞれの状態で発生する前震のパターンが異なることを明らかにしました。
今回は、防災科研つくば本所の大型振動台を活用した岩石摩擦実験を行いましたが、今後、兵庫耐震工学研究センター等において更に大きな規模での岩石摩擦実験を行い、地震発生メカニズムの解明に向けた研究を進めていくこととしています。
今後も当該の実験研究を進めつつ、自然地震活動の解析結果との比較研究も推進することで、日常的な微小地震活動から断層の均質性を診断することが可能となり、いつ・どのように大地震が始まるかをより的確に推定できるようになる可能性があります。さらにそれらの知見を導入することで地震発生の物理モデルが高度化され、それに基づく地震発生の予測精度が大きく向上すると期待されます。
4.論文情報
上記の成果に関する学術論文は令和3年7月14日に英国科学雑誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました:
Futoshi Yamashita, Eiichi Fukuyama, Shiqing Xu, Hironori Kawakata, Kazuo Mizoguchi, and Shigeru Takizawa (2021) Two end-member earthquake preparations illuminated by foreshock activity on a meter-scale laboratory fault,Nature Communications. https://doi.org/10.1038/s41467-021-24625-4
*著者情報(和名)
  1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所 山下太 主任研究員
  2. 京都大学大学院/国立研究開発法人防災科学技術研究所 福山英一 教授/主幹研究員
  3. 南方科技大学(中国) 徐慶世(Shiqing XU) 助教
  4. 立命館大学 川方裕則 教授
  5. 一般財団法人電力中央研究所 溝口一生 主任研究員
  6. 国立研究開発法人防災科学技術研究所 滝沢茂 客員研究員
図1

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