異常要因を特定する世界初の時系列AI技術を開発 ~専門家でも気づきにくい異常の根本原因発見を支援~

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2021-07-16 富士通株式会社,Inria

富士通株式会社(注1、以下 富士通)とフランスの国立研究機関Inria(注2)は、このたび、時系列データにおいて、異常な状態と判定した要因を特定するAI技術を開発しました。

近年、ヘルスケアや社会インフラ、ものづくり分野をはじめとする様々な場面で多くの時系列データが収集され、AIを活用した状況判断や異常検知が行われています。その中でも、AIによる判定結果の根拠を説明することが求められていますが、時系列データの場合は、AIの判定要因が多種多様に存在するため、専門家であってもどのようなデータの変化が異常判定に影響したのかに気づきにくく、異常な状態への適切な対応や防止策につなげることが難しいという課題がありました。

今回、富士通とInriaは、Topological Data Analysis(注3、以下 TDA)技術をベースに、時系列データにおいてAIによる異常判定の要因を特定し、正常と異常間の判定の変化を視覚的にわかりやすく提示できる技術を世界で初めて開発しました。

これにより、様々な事象の時系列データにおいて、異常判定の要因分析を支援し、異常が起こるメカニズムの解明や新たな解決策の発見などへの貢献が期待できます。

なお、本技術は、7月18日(日曜日)よりオンラインで開催される、機械学習分野で最も権威ある国際会議「ICML2021(The Thirty-eighth International Conference on Machine Learning)」において、採択率3%の論文(Long Talk)として発表します。

背景と課題

現在、様々な研究機関や企業で説明可能なAIに関する技術の研究開発が行われています。時系列データについては、AIの判定要因が多種多様でそれぞれの要因が複雑に関係しているため、異常と判定されたデータを見るだけでは、要因の特定が難しく、実際に起きた事象と照らし合わせた原因究明やそこからさらに新たな知見の発見につなげることが困難でした。

共同開発した技術

富士通とInriaは、AIによる時系列データの異常判定において、その異常の要因を特定できるAI技術を開発しました。

  1. 富士通が開発した時系列データを特徴ごとに分類して異常検知する解析技術(注4)を用いて、AIにより異常と判定されたデータから、異常判定の要因となった特徴と、そうでない特徴を平面(TDA空間)上にマッピングします。
  2. その平面上で、要因となった特徴の点データを、要因でない特徴の点データ群に近づける変換を行います。
  3. 変換後の点データ群の特性に基づいて、時系列データを復元し、正常と判定されるデータを生成します。

これにより、正常と異常の時系列データの形状を比較でき、ユーザーは異常の原因究明を視覚的に行うことができます。

図1. TDAをベースとした異常を特徴づける要因を特定する技術

外部研究機関の協力を得て、脳波の実データを活用(注5)したせん妄(注6)検出に本技術を適用したところ、時系列データの波形の特徴がせん妄状態に現れるSlowing現象(注7)と一致することが確認できました。これらの結果から、時系列データの読影(注8)を通じて病気の原因を推定する際の参考にすることが期待できます。また、これまで困難だった病気の予兆判断や予防的な治療法の発見、解明されていない病態のメカニズム解明への応用など、医学的発展につながることが期待されます。

図2. せん妄状態の脳波データ(青線)と本技術で生成した正常と判定される脳波データ(赤線)

図2. せん妄状態の脳波データ(青線)と本技術で生成した正常と判定される脳波データ(赤線)

スタンフォード大学 医学部精神科 准教授 篠崎元氏のコメント

一般的に、乱雑な信号の性質をもつ脳波は、多くの疾患を定量的かつ正確に判定するために利用することは困難とされてきました。近年、AIを代表とするデータ処理技術の進歩により、微細な脳波の特徴的な変化を把握することが可能となってきました。こうした進歩は、様々な疾患を診断するだけでなく、治療への反応性や発症メカニズムを解明する上で重要になります。今回、富士通とInriaが開発した技術により、せん妄で特徴的な脳波を捉えることができました。この検証を通じて、今後はせん妄以外の疾患についても、より正確な診断や治療の効果判定、病態の解明などにつながる可能性を感じており、さらなる技術改良と実用化に期待しています。

今後の展望

富士通とInriaは、今回共同開発した技術について、企業の業務現場や研究機関の実験などでの活用を促し、技術検証していきます。また、本技術の改良を重ね、富士通は、2021年度中にAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」の一つとして実用化し、幅広い分野への展開を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

注1 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁。

注2 Inria:
本部 ロカンクール ドメーヌ ド ヴォルソー、CEO ブルーノ スポルティス。
今回の技術開発は、DATASHAPEチーム(リーダーFrederic Chazal教授)が担当。

注3 Topological Data Analysis (TDA):
データをある空間内に配置された点の集合とみなし、その集合の幾何的な情報を抽出するデータ分析手法のこと。

注4 時系列データを特徴ごとに分類して異常検知する解析技術:
時系列データの異常検知を行うAIモデルの自動作成技術を共同開発 (2020年3月16日プレスリリース)

注5 外部研究機関の協力を得て、脳波の実データを活用:
アイオワ大学にて脳波によるせん妄検出の研究していた篠崎氏に依頼し、同意を得た延べ約600名のせん妄患者の脳波データを活用してせん妄の症状を検出する際に、今回富士通とInriaが開発した技術を適用。なお、篠崎氏は2021年6月よりスタンフォード大学准教授。

注6 せん妄:意識障害の一種。

注7 Slowing現象:せん妄発症時の脳波に徐波と呼ばれる緩やかな波が混入した状態。

注8 読影:データを観察して診断に必要な情報を取り出すこと。

本件に関するお問い合わせ

富士通株式会社

研究本部 人工知能研究所

Inria

Project-team DATASHAPE

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