超微細加工、高精度光センシング、バイオイメージング等への応用に向けて
2021-03-29 京都大学
野田進 工学研究科教授、井上卓也 同助教、森田遼平 同博士課程学生、メーナカ デ ゾイサ 同講師、石崎賢司 同特定准教授らの研究グループは、短パルス(数10ピコ秒以下)かつ高出力(数10~100ワット以上)で動作可能な新しいフォトニック結晶レーザーの開発に成功しました。
製造現場における無人化が進む中、加工条件を自動的かつ精密に最適化するスマート加工の実現のため、熱の影響を受けない超精密加工が可能な短パルス・高ピーク出力レーザー光源の実現が求められています。また、車の自動運転に代表されるスマートモビリティ分野においては、アイセーフかつ高分解能な光測距(LiDAR)を実現するため、数10ピコ秒以下の極めて短いパルス幅をもつ高ピーク出力光源が必要とされています。さらに、バイオ分野においても、高分解イメージングを可能とするため、短パルス・高ピーク出力光源が必須とされています。特に、小型、安価、可搬、高制御性という特徴をもつ半導体レーザーで、このような短パルス・高ピーク出力動作を実現することは、システムの大幅な小型化・低コスト化を実現する上で極めて重要と言えます。
本研究グループは、高出力・高ビーム品質(=高輝度)を有し、極めて狭い拡がり角をもつビーム出射が可能な半導体レーザー:フォトニック結晶レーザーの開発を進めて来ましたが、今回、さらにデバイス内部に、利得領域と吸収領域を2次元的に分布させるという新しいコンセプトに基づき、数10ピコ秒以下という短パルスかつ、数10W~100W(将来的にはキロワット級も可能)という高ピーク出力動作が可能な新しいフォトニック結晶レーザーの開発に成功しました。
本研究成果は、スマート加工を可能とする微細加工や、高精度光センシング、バイオイメージングなどの幅広い応用にとって極めて重要な成果であり、今後の超スマート社会実現の鍵を担う光源として期待されます。
本研究成果は、2021年3月4日に、国際学術誌「Nature Photonics」のオンライン版に掲載されました。
図:(a)利得と吸収を2次元的に配置した短パルスフォトニック結晶レーザーの模式図。(b)吸収領域の2次元的な配置の例。
研究者情報
研究者名:野田進
研究者名:井上卓也
研究者名:メーナカ デ ゾイサ
研究者名:石崎賢司