国内初、小規模酪農家向けの乾式メタン発酵プラント(バイオガスプラント)を開発

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2020-11-25 新エネルギー・産業技術総合開発機構,株式会社北土開発,エア・ウォーター北海道株式会社,帯広畜産大学

NEDOの「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業(現:新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業)」において、(株)北土開発、エア・ウォーター北海道(株)、帯広畜産大学は、北海道上川郡清水町での実証研究(2018年~2020年実施)で得た成果を基に、国内で初めて、小規模酪農家向けの乾式メタン発酵プラント(バイオガスプラント)を開発しました。このバイオガスプラントは、原料に半固形状の乳牛ふん尿を用い、メタンを約60%含むバイオガスを安定・効率的に発生させることができます。さらに、得られたバイオガスの一部を精製し、約98%以上のメタンを含む高純度メタンガスも製造できます。このバイオガスをガス発電機に、高純度メタンガスを燃料電池に供給すれば、酪農家が牛舎や住宅に使う電気・熱エネルギーの一部をバイオガスエネルギーで自給する仕組みを構築することも可能になります。

今後は、コスト面から従来の湿式・乾式メタン発酵プラントを導入できずにいた小規模酪農家を中心に提案し、小規模酪農家が多く営農する中山間地域に、系統電力に頼らない自給自足型のエネルギー分散型基地として普及させることを目指します。これにより酪農家の営農コストを低減するだけでなく、エネルギーを地産地消する仕組みの構築につなげます。

乾式メタン発酵プラントの概略

図1 乾式メタン発酵プラントの概略

1.概要

北海道では現在、酪農家向けに約100基のバイオガスプラントが稼働しています。ただ、その多くは乳牛100頭以上の中・大規模酪農家を対象にしたもので、敷料として粉状のオガクズなどを用いている牛舎から排出される液状ふん尿を扱う湿式メタン発酵プラントです。一方、本事業で対象とする100頭未満の小規模酪農家は、敷料として麦稈※1などの長尺有機性繊維を用いることから、排出されるふん尿は半固形状であり、メタン発酵する場合には、半固形状のふん尿を希釈する高額な大型設備を置いて機械への絡みつきや配管閉塞を避ける必要があります。また、原料に半固形状のふん尿を使う共同型のメタン発酵プラントもありますが、導入コストが高いという課題がありました。このため、バイオガスプラントの導入は乳牛など100頭以上を飼養し資金力のある中・大規模酪農家に限られており、北海道に所在する酪農家の約75%を占める小規模酪農家が導入するには、高いハードルがあるのが現状です。

株式会社北土開発、エア・ウォーター北海道株式会社、国立大学法人帯広畜産大学はこの課題の解決を目指し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業」において、2018年度から、半固形状のふん尿を加水せずに処理できる「乾式メタン発酵システム」※2の開発に取り組んできました。そしてこのたび、国内で初めて小規模酪農家にも導入しやすい乾式のメタン発酵プラントを開発しました。このプラントで発生させたバイオガスをガス発電機に、高純度メタンガス※3を燃料電池に供給することで、酪農家の牛舎や住宅に電気や温水を供給することができます。さらに、メタン発酵の際に発生する副産物の消化液や固形残渣を、酪農家の代替肥料や再生敷料※4として活用する取り組みも進めます。

今回開発したバイオガスプラントを、小規模酪農家が多い中山間地域のエネルギー分散型基地として普及させ、酪農家の営農コストを低減するだけでなく、地産地消型エネルギーの推進とCO2排出量の削減に寄与することを目指します。

2.今回の成果

本事業で開発したプラントは、原料自動投入装置、原料前処理槽、高温乾式メタン発酵槽、固液分離装置、ガス発電機、燃料電池などで構成されます。乳牛飼養頭数100頭未満の小規模酪農家に向けたエネルギー自給型のバイオガスプラントで、1日あたり約6.2トンのふん尿を処理することが可能です。

【1】麦稈混合乳牛ふん尿を適正に処理するための原料自動投入装置および原料前処理槽を開発

近年は、乳牛への濃厚飼料の給餌量増加や、堆肥化のための水分調整資材の高騰により、完熟堆肥の生産が困難になっています。これを受け、酪農家では家畜のふん尿処理を堆肥化処理からメタン発酵処理に切り替えようとする動きが活発となっているものの、上記の理由に加え、原料槽への麦稈混合ふん尿の投入や破砕処理を行うために多くの時間と労力が必要なため、小規模酪農家ではバイオガスプラントの導入が進んでいませんでした。

そこでNEDO、(株)北土開発、エア・ウォーター北海道(株)、帯広畜産大学は、麦稈が混合した原料の投入から破砕、混合を一括処理できる技術開発を進めてきました。このたび、一切の加水をせず、酪農家の作業負担もほとんどない原料の自動投入装置を完成し、乳牛ふん尿のバイオマスエネルギー利用についての適正処理技術を確立しました。

原料自動投入装置・原料前処理装置と、FRP製メタン発酵槽(高温乾式)

図2 原料自動投入装置・原料前処理装置と、FRP製メタン発酵槽(高温乾式)

【2】原料を無希釈でメタン処理できる高温乾式メタン発酵槽の実現

従来の湿式メタン発酵プラントが機械式撹拌機を持つコンクリート製あるいは鋼製の発酵槽を使い中温発酵(38℃程度)で運用するのに対し、本事業ではポンプ式撹拌機を持つFRP製の円筒横型発酵槽を採用し、高温発酵(50℃程度)で稼働させることに成功しました。これにより、発酵槽の小型化や低コスト化に加え、メタン発酵効率の向上(原料重量当たりバイオガス生成量約30%増)を実現しました。原料の破砕によりバイオマスをより分解しやすい形で投入できたこと、撹拌能力の高いポンプ式撹拌機により原料とメタン生成菌を確実に接触できたこと、さらに有機物分解能力の高い高温発酵を採用した結果、バイオガスが増産できることを実証調査の中で確認することができました。

3.今後の予定

現在の実証機では発生したバイオガスの多くを25kWガス発電機に供給しており、24時間の連続稼働・発電が可能で、生成した電気(三相200V)や温水を牛舎に安定的に供給できることが確認できています。蓄電池などを利用したエネルギーの最適化や再配分、長期連続運転による設備の安定性や製造コストの低減などに関する検証を通して、今後は余剰なバイオガスを精製し、製造した高純度メタンガスを燃料電池に圧送することで住宅への電気供給試験(単相100V)を実施する予定です。

【注釈】
※1 麦稈(ばっかん)
麦わらのこと
※2 乾式メタン発酵システム
乾式メタン発酵プラント、発電機、燃料電池から構成されるエネルギー自給システム
※3 高純度メタンガス
バイオガス(メタン約60%の混合ガス)を膜分離することによって得られるメタン含有率95%以上のガス
※4 再生敷料
メタン発酵残さを固液分離し、乾燥化させて牛舎内の牛の寝わら(敷料)として再利用するもの
4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO イノベーション推進部 担当:小神、西潟、高田
(株)北土開発 事業本部 担当:山田、小玉
エア・ウォーター北海道(株) 事業企画部 担当:保井、尾崎

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、鈴木(美)

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