貴重な南極隕石を微量で同定する新手法を開発

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2020-11-13 国立極地研究所

南極で採取される微隕石や、宇宙探査で宇宙から持ち帰った小惑星の岩石のかけらなどの貴重なサンプルは、損失を極力少なくして分析することが求められます。本研究では、分析によるサンプルロスをなるべく少なくし、かつ、容易で低コスト、迅速に分析できる手法を新たに開発しました。この成果はMeteoritics & Planetary Science誌に掲載されました。

地球には微隕石(直径約2mm以下の地球外物質。宇宙塵とも呼ばれる。)が降り注いでおり、その量は年間約4万トンになります。微隕石の成分を研究することは太陽系の進化の秘密を解き明かす鍵となります。微隕石は地球上のあらゆる場所に落下しますが、落ちてしまうと普通のチリと区別がつきません。しかし、南極にはチリが少ないために微隕石が見つけやすく、採取に適した場所です。とはいえ、南極での微隕石採集は容易ではないため、南極で採取された微隕石は大変貴重なものとなっています。

本研究では微隕石の分析に向けて、これまでとは異なる、ある意味古典的な手法を用いました。この方法はサンプルの損失が少ないだけでなく、これまでの方法よりも簡単で、低コストの分析につながります。

実験科学の1分野であるX線結晶学では、さまざまな物質からできた結晶の分子構造を分析して、材料の研究を進めます。この分野では1960年代後半、2方向に回転する『ガンドルフィ(Gandolfi) X線回折カメラ』を使ったX線結晶構造解析法が使われ始めました。

これまで、ガンドルフィ装置は地球外物質の同定にはあまり用いられていませんでした。本研究では、極地研に導入されたばかりのX線回折装置にガンドルフィ装置を取り付け、非常に隕石の小片(0.2-0.8ミリメートル)の分析を行いました。この隕石(石質隕石)は分析・同定に重要な2つの鉱物(かんらん石と輝石)を含んでいます。

また、この装置は、比較的大きな結晶のかたまりを分析したときに比べ、粉末状のサンプルの分析で最も機能を発揮することが分かりました。

(左)ガンドルフィX線回析法で測定された隕石の小片。Yamato-86051。H4普通コンドライトに分類される。電子顕微鏡画像(NIPR)。
(右)南極のとっつき岬で採取された微隕石。電子顕微鏡画像(パリ南大学)。

既知の隕石サンプルでの分析に成功したことから、研究グループは今後、南極産微隕石や、探査機「はやぶさ2」が2020年12月に持ち帰る予定の「リュウグウ」のサンプルの分析に、このガンドルフィ装置を用いたいと考えています。

発表論文

掲載誌:Meteoritics & Planetary Science
タイトル:New measurement technique for characterizing small extraterrestrial materials by X-ray diffraction using the Gandolfi attachment
著者:
今栄直也(国立極地研究所 地圏研究グループ 助教)
木村眞(国立極地研究所 極域科学資源センター 特任教授)
DOI:10.1111/maps.13491
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/maps.13491
公開日:2020年5月21日

研究サポート

本研究はJSPS科研費17K05721、18K03729の助成を受けました。また、一部は極地研のプロジェクト研究KP307として実施されました。

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