2020/7/22 アメリカ合衆国・マサチューセッツ工科大学(MIT)
・ MIT が、熱硬化性樹脂のリサイクルを可能にする技術を開発。
・ 熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂、ポリウレタンやゴムが含まれ、車輌や電化製品等の耐久性・耐熱性製品に広く利用されるが、強力な化学結合による構成のためリサイクルが困難となっている。
・ 今回開発の技術で、リサイクル前の強度を維持しながら容易に分解できる、pDCPD(ポリジシクロペンタジエン)と称する熱硬化性樹脂を作製。分解し粉末化した pDCPD により、新しい pDCPD を再度作製できる。また、ゴム等の他のポリマーやプラスチックへの同技術の応用可能性を示す理論モデルを提案。
・ 熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂と並ぶ主要なプラスチックの種類。後者には、プラスチック袋や食品のラップ等のシングルユーズプラスチックに使用されるポリエチレンやポリプロピレンが含まれる。世界のプラスチック生産量の約 75%を占める熱可塑性樹脂は、加熱によりリサイクルできる。
・ 熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂と同様なプロセスで作製されるが、一度固体になると液体に戻すことが困難。これは、開裂しにくい強力な化学結合である共有結合でポリマーの分子間が形成されるため。加熱すると再成形できず燃焼する。
・ 2019 年にシリルエーテルを含んだモノマーを取り入れた、薬物送達用の生分解性ポリマー製造技術を開発。これに倣い、pDCPD を形成する液体の前駆体にシリルエーテルモノマーを添加したところ、同モノマーが材料の 7.5~10%を構成する場合には、pDCPD が機械的強度を維持しながらもフッ化物イオンに曝されると可溶性の粉末に分解されることを発見した。同粉末から新たに作製した pDCPD では、リサイクル前のものに比べて強度が若干向上することも確認。
・ 今回の技術は、分解性モノマーでポリマーの個々の鎖を形成する方法が、架橋による結合よりも効果的であることを示唆。このような開裂鎖のアプローチは他の分解性材料の作製にも適用可能で、適切な分解性モノマーを特定できれば、同技術によりアクリル樹脂、エポキシ樹脂やシリコーン等の他の熱硬化性樹脂の分解可能バージョンの作製も可能と考える。
・ 現在、同技術のライセンス供与と商業化のため企業の設立を検討中。主要な産業関係者らが、同技術によるバリューチェーンを通じた各ステークホルダーへの有益性について言及。
・ 部品製造業では低コストのリサイクル材料の入手、自動車メーカー等の機器製造業ではサステナビリティーの目標達成、そしてリサイクル業界では熱硬化性樹脂による新たな収益の獲得、消費者ではコストの節約が可能となり、全体的によりクリーンな環境の実現につながる。
・ 本研究には、米国立科学財団(NSF)と米国立衛生研究所(NIH)が資金を提供した。
URL: http://news.mit.edu/2020/tough-thermoset-plastics-recyclable-0722
<NEDO海外技術情報より>
(関連情報)
Nature 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Cleavable comonomers enable degradable, recyclable thermoset plastics
URL: https://www.nature.com/articles/s41586-020-2495-2
Abstract
Thermosets—polymeric materials that adopt a permanent shape upon curing—have a key role in the modern plastics and rubber industries, comprising about 20 per cent of polymeric materials manufactured today, with a worldwide annual production of about 65 million tons1,2. The high density of crosslinks that gives thermosets their useful properties (for example, chemical and thermal resistance and tensile strength) comes at the expense of degradability and recyclability. Here, using the industrial thermoset polydicyclopentadiene as a model system, we show that when a small number of cleavable bonds are selectively installed within the strands of thermosets using a comonomer additive in otherwise traditional curing workflows, the resulting materials can display the same mechanical properties as the native material, but they can undergo triggered, mild degradation to yield soluble, recyclable products of controlled size and functionality. By contrast, installation of cleavable crosslinks, even at much higher loadings, does not produce degradable materials. These findings reveal that optimization of the cleavable bond location can be used as a design principle to achieve controlled thermoset degradation. Moreover, we introduce a class of recyclable thermosets poised for rapid deployment.