新しい触媒、光機能材料、抗菌・抗ウイルス剤などへの応用に期待
2020-07-10 東京大学,科学技術振興機構
ポイント
- 微小な銀ナノクラスターは幅広い応用が期待される材料でありながら、その安定性に課題があった。
- 筒状に結合したタングステン酸化物の内部空間を利用することで、世界で初めてわずか7個の銀原子から構成される安定な銀ナノクラスターの合成に成功した。
- 化学品の効率的な合成を行うための触媒や、光機能材料、抗菌・抗ウイルス剤などへの応用が期待される。
東京大学 大学院工学系研究科の鈴木 康介 准教授(JST さきがけ研究者)、山口 和也 教授らの研究グループは、同 大学院総合文化研究科の横川 大輔 准教授らと共同で、わずか7個の銀原子から構成される安定な銀ナノクラスターの開発に成功しました。
微小な銀ナノクラスターは、金属としての銀や単一の銀イオンとは全く異なる性質を示し、多様な触媒特性や物性の発現が期待される材料です。構造や電子状態が制御された銀ナノクラスターの合成が望まれていますが、数個の原子からなる銀ナノクラスターは安定性に課題があり、その合成や利用が困難でした。本研究では、筒状に結合した分子状タングステン酸化物の内部空間を利用することで、「超安定な極小サイズの銀ナノクラスター」の製造法を発見しました。これにより、銀原子が表面に露出しているにもかかわらず、前例のない高い安定性を示す銀ナノクラスターの開発が可能になりました。本成果により、銀ナノクラスターと金属酸化物を組み合わせた多様な構造や用途の材料設計ができるようになります。
今後、この新規材料を利用した能動的な反応制御による化学品の合成や、光機能材料、抗菌・抗ウイルス剤などへの応用が期待されます。
本研究成果は、2020年7月10日(ドイツ時間)に、ドイツ学術誌「Angewandte Chemie Internal Edition(アンゲヴァンテ・ケミー国際版)」のオンライン版に、Very Important Paper(重要論文)として掲載される予定です。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究事業 さきがけ研究領域「電子やイオン等の能動的制御と反応」(研究総括:関根 泰)における研究課題「金属酸化物クラスターによる多電子・プロトン移動触媒の創製」(研究者:鈴木 康介)、日本学術振興会 科学研究費助成事業(20H02749,20H04659)及びCore-to-Core Programによる支援を受けて行われました。
<論文タイトル>
- “An Ultrastable, Small {Ag7}5+ Nanocluster within a Triangular Hollow Polyoxometalate Framework”
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
鈴木 康介(スズキ コウスケ)
東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻 准教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
科学技術振興機構 広報課