「いぶき2号」による二酸化炭素分布の初解析

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地球が見える 2020年 パリ協定実現に向けた温室効果ガスの長期観測継続へ

2020-02-02   JAXA

温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」による全球温室効果ガス濃度分布の解析結果が得られました。「いぶき2号」により、2009年以降世界で唯一11年を超えて宇宙から温室効果ガス観測を継続している「いぶき」ミッションを継承し、パリ協定実現に不可欠な温室効果ガスの長期的な変動モニタができるようになりました。

※「いぶき2号」:2018年打上げ。環境省、国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)、JAXAによる3者共同プロジェクト

「いぶき2号」は、2009年に打上げられた「いぶき」(設計寿命を超えて運用中)のミッションを引き継ぎ、温室効果ガスの長期モニタを実現するとともに、温暖化抑制に向けた環境行政や国際的な取り組みに貢献することを目指し、2018年10月に打上げられました。「いぶき2号」では、「いぶき」からセンサ感度の向上を図るとともに、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)に加えて新たに一酸化炭素(CO)を観測する能力を備えた他、主要なガス発生源を重点的に観測する機能(特定点観測機能)の改良が行われています。

「いぶき2号」打上げ後、衛星の運用は順調に行われ、軌道上初期機能確認、センサが取得したデータの初期校正を行って、2019年8月より輝度スペクトルデータ及び画像データの一般提供を開始しました。

今回、「いぶき2号」のデータを用いた全球の二酸化炭素、一酸化炭素、メタン濃度の解析結果が得られましたので、ご紹介します。解析結果では、「いぶき2号」の捉えた二酸化炭素濃度分布と「いぶき」の観測結果が良く一致しており、2009年以降「いぶき」によって行われてきた温室効果ガス観測を継続し、長期的な変動モニタが可能となりました(図1)。さらに、センサ感度の向上により「いぶき」では捉えられなかった地域の二酸化炭素濃度を算出できた(図1)ほか、新たに一酸化炭素濃度を算出し(図2)、また特定点観測機能により高濃度のメタンを発生源別に捉える(図3)など、地域性を有する温室効果ガス分布を観測することが可能となりました。

今後も環境省、国立環境研究所と協力して、データの評価を進めるとともに、人為起源の大規模排出減別評価やインベントリ検証への有効性評価など、環境行政、パリ協定実現への貢献を目指して取り組みます。

「いぶき」「いぶき2号」が観測した全球二酸化炭素濃度(2019年9月)

図1 「いぶき」「いぶき2号」が観測した全球二酸化炭素濃度

(2019年9月)

パリ協定の実現には、10年以上の長期的な地球全体の二酸化炭素(CO2)モニタリングが不可欠です。2009年に打上げられ、現在も寿命を超えて運用されている「いぶき」により、日本は世界で唯一、11年を超える全球の二酸化炭素観測を実現し、2015年12月には二酸化炭素の全大気平均濃度が400ppmを超えたことを我々に伝えました。図1は、2019年9月に「いぶき」と「いぶき2号」が観測したデータをもとに解析した全球二酸化炭素濃度です。この結果から、両者の同じ地点の二酸化炭素濃度は良く一致しており、「いぶき2号」によって「いぶき」から一貫性のある長期的なデータ収集を途切れることなく継続することができるようになりました。さらに、アフリカ大陸、アマゾン、インド等では計測に誤差を与えるエアロゾルが大気中に多く含まれるために二酸化炭素濃度を算出することが難しく、「いぶき」ではあまり捉えられていませんでした。「いぶき2号」ではセンサの性能が向上し、こうした地域の二酸化炭素濃度も捉えられるようになりました。また海上もより広範囲で観測・解析できるようになりました。

「いぶき2号」では、二酸化炭素、メタンに加え、新たに、燃焼とともに発生する一酸化炭素(CO)の全球観測が可能になりました。図2は、2019年9月に「いぶき2号」の観測データから解析した全球一酸化炭素濃度の分布です。特に昨年夏、世界的に注目を集めたアマゾンの森林火災により、南アメリカ大陸の広範で低温燃焼に伴う高濃度の一酸化炭素が排出され、大気中に留まっている様子を捉えています。

「いぶき2号」が観測した全球一酸化炭素濃度(2019年9月)

図2 「いぶき2号」が観測した全球一酸化炭素濃度

(2019年9月)

主要な温室効果ガスの1つであるメタン(CH4)は、様々な発生要因が指摘されています。「いぶき2号」には、発電所や大都市、石油・天然ガス田・ごみ処理場・畜産など人為起源の大規模排出源を精度よく観測し、温室効果ガスの吸収・排出量をより的確に把握するため、観測対象となるエリアにあわせて地上観測点を可変に設定できる機能を備えています(特定点観測機能)。この機能を活かして、メタンモニタ上重要な地域の観測を行ってきました。図3は2019年9月に観測したメタンの様子です。石油・石炭・天然ガスの採掘によるものや、湿地によるものと推定される高濃度のメタンが捉えられています。

「いぶき2号」が観測した全球メタン濃度(2019年9月)

図3 「いぶき2号」が観測した全球メタン濃度

(2019年9月)

観測画像について

画像:観測画像について

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