アルマ望遠鏡がとらえた宇宙を漂う銀河の尾

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2019-10-15 国立天文台

天文学者たちのチームは、アルマ望遠鏡と欧州南天天文台のVLT望遠鏡を用いて、宇宙を漂うクラゲのような「銀河の尾」をとらえました。この尾は、じょうぎ座銀河団のESO137-001と呼ばれる渦巻銀河から外に向かって流れ出すガスの流れです。

ALMA explores a Cosmic Jellyfish

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), P. Jachym (Czech Academy of Sciences) et al.

この「宇宙クラゲ」は、美しく細部まで描写されています。この画像は、3つの異なる望遠鏡で観測されたデータをもとに作成されたものです。渦巻銀河とその周辺はNASA / ESAのハッブル宇宙望遠鏡によって、明るい紫色で示された水素の流れはVLT望遠鏡に搭載されたカメラMUSEによって、オレンジ色で示された銀河内から流出する一酸化炭素はアルマ望遠鏡によって撮像されました。

このような銀河の尾は、「ラム圧」と呼ばれる圧力によって銀河に含まれるガスがはぎ取られることで作られます。銀河団を構成する銀河の間は空っぽではなく、高温ガスで満たされています。銀河がこの抵抗の大きい環境を通過すると、銀河からガスがはぎ取られ、ESO 137-001の周りに見られるような美しく複雑な尾を作り出します。銀河は通常、銀河団の中心に向かって落下していきますが、このような銀河の尾があると、銀河が動いていく道筋がはっきりわかります。

今回の画像は、銀河の尾に潜む低温分子ガスの分布を初めて高解像度で示したものです。ESO 137-001は、ラム圧で作られた尾を持つ銀河の中では、地球に最も近いもののひとつです。さらに、長く伸びるガスの尾は爆発的な星形成が起こる「火の玉」と呼ばれる領域を含んでおり、特に興味深いものです。尾の中で星が形成されるメカニズムは正確には分かっておらず、今回のような低温分子ガスの分布図は、激しく変化する環境で星形成が起こる条件を知るための手がかりを与えてくれます。

この観測結果は、P. Jáchym et al. “ALMA Unveils Widespread Molecular Gas Clumps in the Ram Pressure Stripped Tail of the Norma Jellyfish Galaxy”として、天文学専門誌「アトロフィジカル・ジャーナル」に2019年9月30日付で掲載されました。

この記事は、欧州南天天文台のPicture of the Week 2019年9月30日版をもとに製作しました。

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