最適なアクションプランを提案、「Wide Learning」の新技術を開発

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購入を高めるマーケティング施策や不良品を削減する機械制御方針などをAIが立案

2019-09-13 株式会社富士通研究所

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、富士通株式会社(注2)(以下、富士通)のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の中核技術である「Wide Learning(ワイドラーニング)」を拡張し、最適なアクションプランを提案するAI技術を開発しました。

例えば、従来のマーケティングの分野では、商品を購入する見込みが高い顧客を予測するためにAIが活用されてきましたが、実際の現場では、予測だけではなく、購入の可能性を高めるアクションの決定にもAIを活用したいという課題があります。そのため、今回、富士通研究所が2018年9月に発表したAI技術「Wide Learning」を拡張し、購入者の割合が高く、顧客数が多いセグメントとアクションの組み合わせを抽出する技術を新規に追加しました。

新技術により、重要な顧客を判断するだけでなく、最適なマーケティング施策までも自動で決定することが可能になるため、マーケティング業務の自動化が期待されます。また、マーケティング分野以外にも、製造現場での不良品を減らすための機械の自動制御や、金融分野における債務不履行を防ぐための借入限度額の自動設定、ヘルスケアでは健康を維持するための運動や食事の提案など、様々な業務でのアクション決定の自動化を促進します。

開発の背景

近年、様々な業務にAIを活用して効率化を図る事例が増加しています。例えば、商品を購入する可能性の高い顧客の予測や、製造ラインでの不良品発生の予測などでAI活用が進んでいます。今後は、予測された顧客層や製造装置の状態などに対して、実際に購入につながる可能性が高いアクションや不良品を減らすためのアクションをAIが適切に提案することで、売上の伸長や安定した生産などに貢献することが期待されています。

課題

マーケティング分野の顧客へのプロモーションを例とした場合、一般的な従来のやり方として、データ項目(「顧客の属性」、「過去の行動履歴」、「アクションの実施履歴」)の組み合わせを使って過去のデータを分析します。アクションプランを決める際には、購入率が高く顧客数が多いセグメント(「顧客の属性」、「過去の行動履歴」のデータ項目からなる組み合わせ)に対して、購入につながると思われるアクションを推定しています。

ただし、通常、マーケティングには50種類以上のセグメントに関わるデータ項目があるといわれており、その組み合わせは1,000兆通り以上(注3)となります。従来は、その中から数十個のセグメントを選別した上で、それぞれのセグメントに対し有効なアクションを推定するに留まっています。今後は、最小限のアクションで、より多くの顧客に対し購入率が高まるような最も効率的なデータ項目の組み合わせを見つけることで、これまで以上に有効なマーケティング施策を行うことが必要です。

最適なアクションプランを提案、「Wide Learning」の新技術を開発
図1. 一般的なマーケティング施策立案のイメージ

開発した技術

富士通研究所では、2018年9月に、大量のデータを取得できない場合においても、データ項目のすべての組み合わせに対して、重要度の高い組み合わせを高精度に算出できるAI技術「Wide Learning」を開発しました。

今回、大量に算出された重要度の高い組み合わせをさらに絞り込み、効率的かつ効果が高いアクションプランを提案する新技術を「Wide Learning」に追加します。新技術の特長は以下の通りです。

  1. 効果の高いセグメントとアクションを特定「Wide Learning」の従来の機能で大量に算出された重要度の高い組み合わせを比較して、その組み合わせに該当する数が多く、影響が大きいデータ項目を抽出し、再度組み合わせていきます。例えば、マーケティングでは、算出された数百個から数万個におよぶ複数の購入率の高い組み合わせを比較し、購入率を下げることなく、該当人数が増加するデータ項目の組み合わせを見つけていきます。これを繰り返すことで、最も該当人数と購入見込み率が高い数個に絞られた組み合わせを見つけ、セグメントとアクションを特定します。

    図2. 「Wide Learning」の新技術のイメージ
    図2. 「Wide Learning」の新技術のイメージ

     

  2. 目的に合わせたアクションを抽出データ項目の組み合わせを絞り込んでいく際に、「購入者の割合」、「該当者の数」、「抽出するアクションの数」など、それぞれ条件に優先度を付加することができます。これにより、ボリュームゾーンやニッチを狙うといった現場のターゲティングの目的に沿ったアクションの抽出が可能となります。

効果

富士通のマーケティングにおいて、従来より使用しているマーケティングオートメーションツール(注4)内の匿名化データ(属性21項目、行動履歴49項目、アクション14項目)を使用し、購入確度の高い顧客を増やすアクションを抽出する実験を行いました。

マーケティングの専門家が人手でデータ分析を行った場合に、14個のセグメントで顧客の17%をカバー、購入見込み率が平均55%となる複数のアクションを抽出したのに対して、本技術では3個のセグメントで顧客の47%をカバー、購入見込み率が平均92%となる複数のアクションを抽出できることを確認しました。

今後

2019年度中に、本技術を用いて、富士通が主催するイベントの案内や製品・サービスの情報提供を自動決定し、お客様にとって最適な情報の発信を行っていきます。また、2020年度には、インターネットでの広告配信を行う「FUJITSU Intelligent Data Service AD Drive 運用型マーケティングサービス」での活用を目指します。

さらに、マーケティング分野だけでなく、ものづくり、金融、ヘルスケア分野などで、セグメントとアクションの関係を分析することで、効率的なアクション抽出による業務改善の実践を進めていきます。本技術を追加した「Wide Learning」を、富士通の様々な製品・サービスに組み込み、2020年度にZinraiソリューションとしての提供を目指します。

図3. 「Wide Learning」利用イメージ
図3. 「Wide Learning」利用イメージ

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 古田 英範。
注2 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁。
注3 その組み合わせは1,000兆通り以上:
1項目には最低でも2分類あり(男性か女性かなど)、2を50乗した場合、1,000兆通りを超える。
注4 マーケティングオートメーションツール:
見込み顧客の属性やイベント参加、Webのアクセスログなどのデータを一元管理し、メール配信などのマーケティング施策を実行するツール。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
人工知能研究所


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。

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