再生可能エネルギーの大量導入を目指して電力需給安定化に貢献
2018/06/28 新エネルギー・産業技術総合開発機構 ダイキン工業株式会社
NEDOとダイキン工業(株)は、ポルトガルのリスボン市で2016年11月から構築を進めてきた空調自動デマンドレスポンス実証システムを完成させ、2018年7月から運転を開始します。
本実証においては、現地の電力小売事業者や複数の中小規模の再生可能エネルギー発電施設をとりまとめるバーチャルパワープラント(VPP)事業者と協業し、電力の供給状況に応じて空調の電力消費を自動で制御し、再生可能エネルギーを安定して使用するための検証を実施します。また、夏季など電力需要が高まる時期の再生可能エネルギー利用率の最大化に向けた電力需給調整や電力小売事業者向けの事業モデルも検証します。
実証にあたっては、リスボン市庁舎など市内4カ所の施設に、電力の需給状況に応じて電力消費の上限を自動で制御できるデマンドレスポンス機能および蓄冷機能を付加したビル用マルチエアコンを設置しました。
ダイキン工業(株)は、本実証事業の結果を踏まえて、ポルトガルおよび欧州他地域での空調自動デマンドレスポンスシステムの展開を目指します。
図 実証システムのイメージ
1.概要
ポルトガルでは、風力発電や水力発電など再生可能エネルギーの導入を積極的に進めており、欧州でも有数の大量導入国となっています。2017年の実績では、総電力消費量のうち約44%を再生可能エネルギーで賄っています。2016年4月には、4日間にわたり再生可能エネルギーが国内の全電力需要を満たしたほか、2018年3月には、同国の一カ月分の全電力需要を上回る発電量を記録しました。一方で、再生可能エネルギーの発電量は自然環境にも左右されるため、電力需要ピーク時の安定供給が課題だと考えられています。
このような背景の下、2016年11月21日にNEDOとポルトガルの国立エネルギー地質研究所(LNEG)は、電力の需給状況に応じて需要を自動創出・抑制する自動デマンドレスポンス(ADR)※1実証事業開始に向けた基本協定書(MOU)を締結しました。同時にNEDOは、リスボン市とリスボン市庁舎などの施設を実証サイトとすることに合意し、施行協定書(IA)を締結するとともに、委託先としてダイキン工業株式会社を選定し、実証事業に着手しました。
今般、NEDOとダイキン工業(株)は、2016年11月から構築を進めてきた空調自動デマンドレスポンス実証システムを完成させ、2018年7月から運転を開始します。
本実証事業では、業務用ビル等において電力消費の約4割を占めると言われるエアコンに着目し、リスボン市庁舎などリスボン市内4カ所の施設にデマンドレスポンス機能および蓄冷機能付きのビル用マルチエアコン※2を設置し、電力需給調整機能の実証など再生可能エネルギー利用率の最大化に向けた事業モデルの検討を行います。具体的には、電力の需給状況に応じて、蓄冷機能も活用して空調機器の電力消費量の上限を自動制御し、大量の再生可能エネルギーの導入により必要となる需要の創出・抑制を行い、室内環境も考慮したうえで需給調整運転の検証を行います。そのために、前日の天候や日々のエアコンの使用状況などから当日の電力需要の推移を予測して運転を自動で調節する制御システムを構築し、ADRシステムおよびバーチャルパワープラント(VPP)※3システムのパートナー※4からの電力需要の創出・抑制指令に基づき、空調機器の電力消費量の自動制御を通じて電力需給のバランスを調整して、その効果を検証します。
なお、実証運転の開始に先立ち、6月29日16時(現地時間)に、リスボン市庁舎で運転開始式を行います。
【注釈】
- ※1 自動デマンドレスポンス(ADR)
- 利用者に通知を送り、電力使用の調整を利用者側の対応に委ねていた従来のデマンドレスポンスに対して、需要家の所有機器が自動で電力消費の調整を行うデマンドレスポンスのこと。
- ※2 ビル用マルチエアコン
- 1台の室外機で容量の異なる複数の室内機を個別運転可能な空調機器で、必要な部屋だけを個別に空調できるシステム。
- ※3 バーチャルパワープラント(VPP)
- 分散設置されたエネルギーリソース(発電設備、蓄電設備、需要設備等)を遠隔・統合制御し、あたかもひとつの発電所のように機能させること。
- ※4 パートナー
- ADRシステムは、ポルトガルのEDP社、EFACEC社、everis Portugal社、VPPシステムは、三井物産株式会社、イギリスのARUP社、ドイツのVPP事業者であるNext Kraftwerke社の協力を得て進めている。
2.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容について)
NEDO スマートコミュニティ部 担当:出脇、楠瀬、横溝、寺門
ダイキン工業(株) コーポレートコミュニケーション室 広報グループ 担当:渡辺
(その他NEDO事業について)
NEDO 広報部 担当:藤本、坂本、髙津佐