2018/06/06 国立天文台
「創造の柱」の磁場構造。磁場の向きは、柱に沿った方向にそろっている。
夏の天の川には、恒星が生み出されている現場が数多く潜んでいます。そのひとつ、わし星雲M16は、太陽よりもずっと重い星が誕生しつつある場所です。わし星雲の中心部には、柱状の形をしたガス塊、「創造の柱」と呼ばれる構造があります。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した高精細画像を目にしたことがある方も多いことでしょう。
生まれたての重い星は紫外線を放ち、自分を生み出した星雲に影響を及ぼします。星雲に生じた波によって、星雲内には柱状などの複雑な構造が作られます。しかし、柱状の構造がどのように形成され成長していくか、観測的にも理論的にも明らかになっていません。
ハワイ島マウナケア山頂付近に設置されたジェームズ・クラーク・マックスウェル電波望遠鏡(James Clerk Maxwell Telescope、JCMT)では、恒星の誕生現場における磁場を観測するビストロサーベイ(BISTRO survey)が進められています。今回、ビストロサーベイでわし星雲の「創造の柱」を観測したところ、内部の磁場構造が初めて明らかになりました。観測された磁力線の向きは柱に沿って平行で、周囲の星雲内の磁場とは違う向きになっていたのです。
柱の成長具合や寿命は、磁場によって大きく左右します。観測された磁力線の向きは、弱い磁気を帯びたガスが圧縮されて柱状になったという仮説を支持するものです。推定された磁場の強さは、柱が圧力や重力によってつぶれるのを防ぐのにちょうど必要な程度でした。「創造の柱」は、磁場の助けによってその形を保ち続けているのです。
JCMTは東アジア天文台(East Asian Observatory、EAO)が運営している望遠鏡です。ビストロサーベイは、東アジア天文台に参加する多くの国と地域およびイギリス、カナダから100名を超す研究者が参画する国際研究プロジェクトで、日本からは筑波大学、東京大学、国立天文台、宇宙科学研究所、名古屋大学、京都大学、関西学院大学、徳島大学、香川大学、広島大学、鹿児島大学の研究者が参加しています。