超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の運用状況について

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2018-06-01  宇宙航空研究開発機構

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成29年12月23日に打ち上げた超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)※1の「初期段階フェーズ」※2を今年の3月に完了し、大気抵抗を用いて少しずつ軌道高度を降下させていく「軌道遷移フェーズ」へ移行しました。
現在は、380km付近の高度で順調に運用を続けており、以下に示す3種類のミッション機器を用いて観測運用を行っています。

  1. (1) 小型高分解能光学センサ(SHIROP)
  2. (2) 光学センサ(OPS)
  3. (3) 原子状酸素モニタシステム(AMO)

今後も大気抵抗を用いて除々に高度を降下させていき、イオンエンジンを用いて軌道保持を開始する超低高度268kmに到達するのは、平成31年4月頃になる見込みです。

※1
超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS):
超低高度での新たな衛星利用の可能性を拓くことを目的として、小型高分解能光学センサによる撮像や、超低高度域における大気データの取得等の技術実証を行う。打ち上げ時の質量は383kg。

参考情報:http://www.satnavi.jaxa.jp/project/slats/

※2
初期段階フェーズ:
打ち上げ後に衛星の機能性能を確認し、またロケットによる投入高度から軌道遷移フェーズを開始する高度まで「つばめ」のガスジェットを用いて軌道変換をする運用を行った。

[別紙]

 

【「つばめ」外観】

超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の運用状況について

【運用軌道プロファイル】

(1)小型高分解能光学センサ(SHIROP)

小型高分解能光学センサ(SHIROP)は、超低高度(200km~300km)からの観測によって分解能を大幅に向上できることを技術実証するためのセンサです。今後、さらに「つばめ」の高度を下げることで、より精細な観測画像の取得を目指しています。

図1-1は、SHIROPが2018年3月25日午前11時19分頃(日本時間)に愛知県名古屋市付近を撮像した画像です。撮像時の衛星の軌道高度は398kmです。図1-2は、東名高速道路の上社(かみやしろ)ジャンクション付近を拡大したもので、乗用車や車線を識別できます。SHIROPは、質量19.4kg、口径20cmの小型の光学センサですが、2006年1月に打ち上げた陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)※3に搭載した口径30cmの光学センサ(PRISM)の観測画像(図1-3)と比べて、精細に地表の様子を捉えています。

(2)小型光学センサ(OPS)

小型光学センサ(OPS)は、口径2cmの小型軽量の広域撮像用光学センサで、取得する画像はカラー画像です。図2は、OPSが2018年3月25日午前11時19分頃(日本時間)に愛知県名古屋市付近を撮像した画像です。撮像時の衛星の軌道高度は398kmです。

図2 OPSによる愛知県名古屋市付近の画像

(3)原子状酸素モニタシステム(AMO)

超低高度軌道(200km~300km)における大気の主成分である「原子状酸素」は、反応性が高く、衛星の外表面に使用される金色の断熱フィルムを損傷させることが知られています。原子状酸素モニタシステムを用いて、原子状酸素の量を計測し、また、衛星材料サンプルの劣化状況を観察しています。

※3
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS):
2006年1月24日に打ち上げた大型の地球観測衛星。軌道高度は692km、打ち上げ時の質量は4,000kg。光学センサ(PRISM)の分解能は2.5m。2011年に運用を終了した。

0300航空・宇宙一般
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