養豚廃水の連続曝気式活性汚泥処理での窒素除去能力の大幅改善を小規模実験とシミュレーションにより確認

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低い溶存酸素濃度で処理すると、窒素除去効率が5倍以上に改善

2018/04/18 農研機構

ポイント

農研機構は、養豚廃水の処理に多く用いられている「連続曝気ばっき式活性汚泥処理1)」において、処理槽の溶存酸素濃度2)を低く保つことで、窒素除去率が5倍以上に改善されることを1/60,000の小規模実験とシミュレーションにより明らかにしました。今後、曝気槽中の溶存酸素濃度の測定・管理装置の付加という簡易な改修のみで、窒素除去能力を大幅に改善できる技術開発につながることが期待できます。

概要

養豚農家では、畜舎廃水に含まれる窒素を浄化処理により低減した後、処理水として排出しています。排水に含まれる窒素の濃度は水質汚濁防止法により制限されており、畜産農業については現在は暫定排水基準が適用されているものの、今後、一般排水基準の適用に向けて規制強化が見込まれています。処理施設としては、連続曝気式の活性汚泥処理施設が広く普及していますが、現行施設の窒素除去能力の向上が求められています。
そこで農研機構畜産研究部門では、IRSTEA(フランス国立環境・農業科学技術研究所)と共同で、標準的な施設の1/60,000の小規模実験とシミュレーションにより、連続曝気式活性汚泥処理における窒素除去の至適条件を調べました。その結果、処理槽の溶存酸素濃度を低く(0.04~0.08 mg/L程度)保つと、通常の処理条件(溶存酸素濃度:1.7~2.6 mg/L) に比べて窒素除去率が約50ポイント上昇し、60%以上になることを明らかにしました。
また、畜舎廃水の浄化処理では生物化学的酸素要求量(BOD3))も同時に低減する必要がありますが、溶存酸素濃度が低い条件でもBODは良好に除去されました。また、溶存酸素濃度が低い条件では曝気動力を抑えることができ、施設の運転に要するエネルギー消費量が抑制されるため、ランニングコストも削減できると考えられます。
本技術により、養豚現場にすでに普及している活性汚泥処理施設に対して、処理槽中の溶存酸素濃度の測定・管理装置の付加という簡易な改修のみで、窒素除去能力を大幅に改善できる可能性があります。現在、パイロットプラント4)での実験に取り組んでおり、平成31年度からの現場での実証実験開始を目指しています。

関連情報

予算:農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「活性汚泥モデルと新規窒素除去反応アナモックス5)の利用による畜産廃水処理技術の高度化」

お問い合わせ
研究推進責任者
農研機構畜産研究部門 研究部門長 塩谷 繁

研究担当者
同 畜産環境研究領域 和木 美代子

広報担当者
同 広報プランナー 木元 広実

詳細情報

開発の社会的背景

家畜ふん尿を主体とする畜舎廃水には、高濃度の窒素が含まれます。畜舎廃水を河川等に排出する場合、水質汚濁防止法により「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」の濃度を基準値以下にすることが定められています。畜産農業については現在は暫定基準値(600 mg/L、平成31年6月まで)が適用されていますが、可能な限り速やかに一律排水基準(100 mg/L)に移行すること、同時に農家における対策技術の確立が求められています。農研機構は畜舎廃水に含まれる窒素を減らす手段としてアミノ酸バランス改善飼料6)の活用法や、敷地面積に余裕のある農家を対象としたハイブリッド伏流式人工湿地ろ過システム7)の開発を行ってきました。一方で、すでに農家が所有している浄化処理施設をそのまま利用して、簡易・安価な改修等により、窒素除去能力を改善できる技術の開発が求められています。

研究の経緯

養豚農家では、畜舎廃水に含まれる窒素を浄化処理により低減した後、処理水として排出しています。処理施設としては、連続曝気式の活性汚泥処理施設が広く普及していますが、現行施設の窒素除去能力の改善が求められています。連続曝気では、曝気槽中の溶存酸素濃度は処理能力に影響する重要な項目であり、窒素規制導入以降、窒素除去を考慮した再検討が必要と考えられていました。そこで、農研機構とIRSTEAは共同で、標準的な施設の1/60,000の小規模実験とシミュレーションにより、連続曝気式活性汚泥処理の窒素除去における溶存酸素濃度の至適条件を調べました。

研究の内容・意義
  • 小規模実験の結果、曝気槽(処理槽)の溶存酸素濃度を0.04~0.08 mg/L程度の低い値に保つと、通常条件では13%以下の窒素除去率が、低酸素濃度条件では60%以上と、50ポイント以上向上することがわかりました(図1左のグラフ)。
  • そこでシミュレーションを行った結果(連続流入、連続曝気、BOD容積負荷0.5 kg/m3/day、流入水中BOD/N比3、水温20°Cの条件)、曝気槽(処理槽)の溶存酸素濃度を0.03~0.07 mg/L 程度の低い値に保つと、通常条件(溶存酸素濃度:2 mg/L)よりも、はるかに効率よく窒素除去が起こることが示されました(図2下のグラフ)。
  • 畜舎排水の浄化処理ではBODも低減する必要がありますが、溶存酸素濃度が低い条件でもBODの低減は良好であることが、小規模実験、シミュレーションの双方で確認されました(図1右、図2下のグラフ)。
  • 低酸素濃度条件で効率的な窒素除去が起こる理由は、溶存酸素濃度によって、微生物が窒素を代謝する経路が変化するためと考えられます(図2上の図)。通常条件(溶存酸素濃度 2 mg/L)では微生物反応によってアンモニアが亜硝酸まで酸化された後、亜硝酸が硝酸まで酸化されます。一方、低溶存酸素濃度条件ではアンモニアが亜硝酸まで酸化された後、専ら亜硝酸が窒素ガスに還元されることにより窒素除去が起こる、亜硝酸経由の窒素除去がおこることがわかりました(図2左上)。このプロセスは、一般的な、硝酸を経由する窒素除去(図2右上)に比べて、酸化のための酸素の供給と還元のための有機物(BOD)の消費の両方を節約することができます。
  • シミュレーションの結果から、低溶存酸素条件では通常条件(溶存酸素濃度:2 mg/L)と比べて消費される酸素量が少ないため、曝気に必要な消費エネルギー(消費電力量)が約3割減少することが示され、施設のランニングコストが削減できる可能性があることがわかりました。
今後の予定・期待

本技術により、養豚現場にすでに普及している活性汚泥処理施設に対して、曝気槽の溶存酸素濃度を測定し、ブロアー8)の曝気風量を制御して酸素の供給量を増減させるという簡易な改善のみで、窒素除去能力を大幅に改善できる可能性があります。現在、スケールアップした装置での最適溶存酸素濃度を明らかにするため、パイロットプラントでの実験に取り組んでいます。その後、平成31年度内の現場での実証実験開始を目指しています。なお、畜舎廃水の組成は農家間で異なっており、本技術が実用化された後も、農家によっては本技術のみでは一律排水基準を満たせない場合も生じると予想されます。そのような場合に備えて、アナモックス反応を用いた窒素除去技術の開発にも取り組んでいます。

用語の解説

1)連続曝気式活性汚泥処理
活性汚泥処理は微生物を用いて汚水(廃水を含む)を浄化する代表的な技術です。”活性汚泥”と呼ばれる、汚水を浄化する微生物等が凝集したフロック状のものを汚水中に保持し、”曝気”という酸素を水中に吹き込む手段により、酸素を供給することで生物反応により汚水を浄化します。曝気槽の曝気が連続して行われているものを連続曝気式と言います。活性汚泥処理において、空気の吹込みを行う水槽を曝気槽と言います。曝気槽に酸素を供給することで活性汚泥によって汚濁物質を分解します。

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