2018-03-06 国立天文台
渦巻銀河NGC 4651は、かみのけ座の方向およそ6200万光年の距離にあり、天の川銀河とよく似た渦巻きの腕を持っています。およそ11等級の明るさの銀河を小口径の望遠鏡で捉えるのは難しいですが、大口径望遠鏡で撮影した画像に精細な処理を施した結果、銀河円盤の両端から外側に延びる細い腕とその先に淡い円弧状の広がりが見つかりました。まるで傘を広げたような姿から、この銀河はアンブレラ銀河(Umbrella Galaxy)という愛称で呼ばれるようになりました。
小さな銀河の残骸が大きな傘に
宇宙に広げられた巨大な傘を作ったのは、アンブレラ銀河の周りを巡る小さな衛星銀河だと考えられています。衛星銀河が親銀河に接近すると、その強大な重力によって飲み込まれてしまいます。飲み込まれるまでの間に親銀河の重力で衛星銀河からはガスと星が剥ぎ取られ、その連なりが親銀河の周囲に残りますが、それが衛星銀河で繰り返された結果、この不思議な構造ができあがったのでしょう。この大きな傘は衛星銀河の残骸なのです。大きな銀河が小さな銀河を飲み込む「宇宙の食物連鎖」はすでによく知られていますが、その過程を探ろうにも、手がかりとなる小さな銀河の残骸はとても淡く観測が困難でした。すばる望遠鏡の主焦点カメラSuprime-Cam(シュプリーム・カム)が捉えたアンブレラ銀河の姿が、宇宙の食物連鎖を明らかにする鍵になるかもしれません。
文:小野智子(天文情報センター)
画像データ
天体 | NGC 4651 |
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望遠鏡 | すばる望遠鏡 |
観測装置 | Sprime-Cam |
クレジット | NAOJ and R. Jay GaBany |