近年、地球環境をめぐってアンソロポシーンという新たな地質年代の時代区分が提起されている。それが、地質年代の区分だということは、それが地球全体を覆う時代だということだ。だが、しかし、地球すべてが、ある一つの時代で覆われることなどあるのだろうか。もし仮にそうだとしたら、人間の主体性はどのように測られるのだろうか。人間の主体性や自己が存在する仕方は文化によって異なる。アンソロポシーンという概念は、西洋に発達した人と自然の二分法の考え方に基づいているが、東アジアからの経験から見たとき、それは、しかし、別の仕方で定義されることもあるはずだ。地球上には、違った(あるいは、複数形の)環境主体性のあり方があるに違いないし、あるべきなのだ。アンソロポシーンについて考えることとは、われわれの環境という考え方を複数の場で再考することでもある。
- 日 時
- 2018年2月15日(木)13:00 – 17:00
- 場 所
- 総合地球環境学研究所 講演室 (⇒アクセス)
- 主 催
- 総合地球環境学研究所平成29 年度所長裁量経費グループ研究 地球研若手研究員連携プロジェクト「地域実務者連携セミナーの実施 地域に人をどう『巻き込む』か?――実践者と研究者、アーティストの協働による参与支援型研究」
- 申し込み
- 不要
- 言 語
- 英語/日本語
- 問い合わせ
- 寺田匡宏
++プログラム++
-
- 13:00 開会
- 13:05 – 14:05 [レクチャー1:方法] (英語)
本田江伊子(オックスフォード大学)
知と実践のエコロジー――日本学、環境人文科学からの視点
-
- 14:05 – 15:05 [レクチャー2とミニ展示:実践](日本語)
清水志郎(陶芸家)
土から焼き物へ――私の方法
-
- 15:15 – 16:15 [レクチャー3:主体性] (英語)
寺田匡宏(地球研客員准教授)
言語と感性から見た環境における主体性
-
- 16:15 – 16:30 [コメント] (英語)
ダニエル・ナイルズ(地球研准教授)
- 16:30 – 17:00 [総合討論]
- 17:00 閉会
【発表者プロフィール】
本田江伊子
英国オックスフォード大学セント・アントニーカレッジ/歴史学部博士課程
ヨーロッパと日本における非デカルト的・非二分法的な自然に関する知識史・文化史とその今日における知の実践および実践から生まれる知への関連性を探求。現在は、粘菌の専門家であり、マルチ学者である南方熊楠(1867-1941)の生涯と思想を通じて、トランス・ディシプリナリーとグローバルな知識生産の歴史的展開に焦点を当てた研究を実施。現代アートと思想のキュレーターおよび著述家としても活動をしてきた。
清水志郎
陶芸家
京都五条坂に陶器屋三代目として生まれる。 陶芸家である祖父・清水卯一(人間国宝)と、父・清水保孝のもとで育ち、自然と陶芸の道に進む。 祖父、父に師事し、2013年、松ヶ崎に独立。 土にこだわり、京都で自ら土を掘り、自作の炭窯で焼き物に仕上げる。 焼物とは何かを知るために、現在も日々追求し続けている。
寺田匡宏
総合地球環境学研究所客員准教授
歴史学、メタヒストリー。歴史と記憶の関係や、歴史という人間中心の概念が非-人間を扱う環境とどう関係するかを研究。また、メタヒストリーという記述の立場から、超長期の過去であるアンソロポシーンと未来史についても研究。
ダニエル・ナイルズ
総合地球環境学研究所准教授
人文環境地理学の観点から、人々が自然を理解する方法に興味を持つ。特に、古くからの農業生態学的な複合体にみられる物質的・非物質的な文化的要素の関係と、それらがどのように、アンソロポシーンを含む自然や環境、景観、農業、人々についての特定の理解に新たな洞察をもたらすかを研究。
この研究会は録画され、のちに地球研ウェブで公開される予定です。