磁場に負けない超伝導

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ウラン化合物で現れる、磁場に強い超伝導の仕組みを解明

平成30年1月13日 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

  • 核燃料物質の電子状態を、極低温・超高精度で測定することに成功。
  • 磁場に強い超伝導の仕組みを解明。より実用的な超伝導体探索への道を開く。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 (理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。) 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター 重元素材料物性研究グループの服部泰佑研究員らは、核燃料物質であるウラン化合物URu2Si2の低温での特異な超伝導状態を初めて明らかにしました。

従来の超伝導は、ある温度以下で電気抵抗がなくなることが知られていますが、強い磁場で壊れてしまう欠点がありました。ところが、ウラン化合物URu2Si2の超伝導は磁場に強いため、なぜ特別な超伝導が実現しているのか興味がもたれていました。

そこで、原子力機構の施設を活用し、核燃料物質において超高精度の物性測定を実現し、ウラン化合物URu2Si2の物性を詳細に調べました。その結果、超伝導を作る電子の状態が磁場でまったく変わらないことを明らかにしました。これはウランが起源となって現れる新しい状態と考えられます。

今回の研究成果は超伝導現象の理解を深めるとともに、今後より強い磁場まで耐えることができる実用的な超伝導体探索の指針を与えるものと期待されます。本研究成果は2018年1月12日(米国時間)に米国物理学会誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載される予定です。

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【研究開発の背景と目的】

超伝導現象は電気抵抗が完全にゼロとなるため、リニヤモーターカーを始め、実用的な現象として利用されています。しかし、とても低い温度を作らなければならないことや、強い磁場で超伝導が壊れることが強い磁場を発生する超伝導磁石開発を困難にしているといった問題があります。そのため、より実用的な超伝導体の研究が現在も盛んに行われています。現在原子力機構で精力的に研究を進めているウラン化合物1) URu2Si2は、磁場に非常に強いという性質を持っており、その原理の解明が重要な課題となっていました。

【研究の手法】

核燃料物質であるために取り扱いが難しく、これまでの研究では十分な精度の測定ができていませんでした。そこで、原子力機構の施設を活用することで、超純良な単結晶ウラン化合物URu2Si2を新たに合成し、測定に最適な形状に加工しました(図1)。本試料を用いることで、極低温(約-273℃)領域における超高精度での核磁気共鳴測定に成功しました。核磁気共鳴法は物質中の核スピン2)を通して、核周りの電子をミクロ3)に調べる手法で、超伝導を作りだす電子の状態を知ることができます。

図1. 単結晶URu2Si2の写真(左)。 測定用に円柱状に切り出した試料(右)

【得られた成果】

物質中には、スピンと呼ばれる磁石のような性質を持つ電子がたくさんあり、普段はバラバラの方向を向いています。その電子同士が引き合うことでクーパー対と呼ばれるペアを作り、整列した波のような状態を作ることで抵抗がなくなる超伝導が実現します(図2)。ここに強い磁場を近づけると、通常は電子スピンが倒れてしまい、クーパー対が壊れてしまうため超伝導は壊れることが知られています(図3左)。しかし、今回の研究で、URu2Si2では強い磁場でも電子スピンが倒れない新しい電子状態となっていることが明らかとなり、磁場に負けない強い超伝導が実現している事を解明しました(図3右)。この成果は超伝導現象の理解を深めるとともに、より実用的な超伝導体の探索に指針を与えるものと期待されます。

図2. 超伝導の概念図。黄色の球が電子を表し、矢印は電子が持つ磁石のような性質(スピン)を表す。電子がペア(クーパー対)を作り、整列した波のような状態を作ることで抵抗がなくなる。

図3. 超伝導に磁場を近づけた時の様子。通常の超伝導は磁場でスピンが倒れてしまい、ペアが壊れてしまうが(左)、URu2Si2ではスピンが全く倒れない新しい電子状態が実現し、強い超伝導がつくられている(右)

【今後の予定】

電子スピンが全く倒れない新しい電子状態はどうすれば作り出せるのか、超伝導を成すペアを作るにはどうすればいいのかを明らかにします。それにより、基礎物性物理学の進展、将来の原子力基礎科学の充実を図ります。

【論文名・著者名】

“NMR Evidence for Spin Singlet Pairing with Strong Uniaxial Anisotropy in URu2Si2”

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