日本の高温ガス炉技術の高度化、国際標準化に向けて

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英国国立原子力研究所と高温ガス炉技術の研究開発協力を開始

2020-10-16 日本原子力研究開発機構

【発表のポイント】

  • 英国では、新型モジュール炉(AMR)の一つである高温ガス炉の実用化に注目。
  • 政府間の高温ガス炉開発の取組を支援するため、原子力機構と英国国立原子力研究所(NNL)との間で締結している包括的な技術協力取決めを改定、新たに「高温ガス炉技術分野」を追加し、同分野の協力を開始することに本日合意した。
  • 原子力機構はNNLとの協力を通じて、高温ガス炉の実用化に向け日英間の連携を強化し、高温工学試験研究炉(HTTR)で培った我が国の高温ガス炉技術の高度化及び国際標準化を進める。
  • 今後は、具体的な共同研究プロジェクトを実施するため、次のステップである実施取決めの締結に向けて協議を進める。

【本発表の背景】

● 日英の高温ガス炉に関する協力

2019年7月、経済産業省(METI)と英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は「日本国経済産業省と英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省との間のクリーンエネルギーイノベーションに関する協力覚書」に署名し、高温ガス炉を含む新型炉の開発や展開の協力を奨励しています。

また、本年6月、英国政府の諮問機関である原子力イノベーション研究諮問委員会(NIRAB)は原子力政策に関する報告書「Achieving Net Zero : The role of Nuclear Energy in Decarbonisation」(炭酸ガス排出量ネットゼロ達成に向けて:脱炭素化に向けた原子力エネルギーの役割)を公表し、BEISに対して、炭酸ガス排出削減に向けてより幅広い用途への原子力の利用等の政策を提言しました。具体的には、NIRABは炭酸ガス排出削減への貢献に向けて新型モジュール炉(AMR)の導入が求められる時期に展開可能と想定される高温ガス炉を開発すべき技術と位置付けるとともに、英国において高温ガス炉の実用化を加速する方法として原子力機構との協力をBEISに提言しています。

更に本年7月、BEISはAMR成立性・開発プロジェクト(AMRプロジェクト)として、英国におけるAMRの成立性評価(フェーズ1)から開発(フェーズ2)に進む企業3社を公表し、そのうちの一つとして高温ガス炉開発を進めるU-Battery社が選定されました

原子力機構は、U-Battery社の親会社であるURENCO社と2017年に「高温ガス炉技術に関する協力のための覚書」を締結しています。

こうした背景の下、原子力機構とNNLは、政府間の高温ガス炉開発の取組みを支援するため、高温ガス炉技術分野における先進燃料開発や安全性研究等に関する協力を進める予定としており、原子力機構とNNLの協力の成果がU-Battery社の開発に反映されることで、英国におけるAMRプロジェクトを通して高温ガス炉の実用化が大きく前進することが期待できます。

原子力機構は、高温ガス炉の実用化に期待が高まっている英国と協力し、高温工学試験研究炉(HTTR)の建設及び運転を通じて培った我が国の高温ガス炉技術の高度化と海外での実証を進め、国際標準化を図り、国際競争力の強化を目指します。

今後は、具体的な共同研究プロジェクトを実施するため、次のステップである実施取決めの締結に向けて協議を進めます。

● 日英の高温ガス炉開発

高温ガス炉は、安全性が高く、さらに900℃を超える高温の熱を取り出せることから、水素製造等の発電以外の利用も可能な原子炉であり、高温ガス炉に関する研究開発が各国で積極的に進められています。原子力機構は、HTTRの建設及び運転を通じて培った世界最高レベルの高温ガス炉技術を有しています。

日本のエネルギー基本計画においては、「水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ、固有の安全性を有する高温ガス炉等、安全性の高度化に貢献する技術開発を、海外市場の動向を見据えつつ国際協力の下で推進する」とされています。

原子力機構では、国のエネルギー基本計画や原子力機構の中長期計画等に基き、国際協力を戦略的に活用しつつ、新型炉の研究開発を進めています。高温ガス炉に関しては、HTTRの建設及び運転の経験により培った国産高温ガス炉技術の高度化、国際標準化、高温ガス炉技術の国際競争力の強化を、国際協力を通じて進めています。

英国では、2050年までに炭酸ガス排出量を実質ゼロにすることが法制化されており、炭酸ガスを排出しない原子力(大型軽水炉、小型軽水炉、AMR)の導入/開発を重点化しています。こうした取組の一環として、高温ガス炉を含むAMRについて、民間企業からの提案を受けてBEISが競争的な研究開発を推進するAMR成立性・開発プロジェクト(AMRプロジェクト)を行っています。2018年6月、BEISは21件の応募から8件のプロジェクトを選定(うち、3件が高温ガス炉)し、総額400万ポンド(約5.4億円)*1を配賦して成立性評価を実施しました(フェーズ1)。また、本年7月には、8件のうち3件を選定(うち、1件が高温ガス炉)し、最大4,000万ポンド(約54億円)*1を配賦してAMRの開発(フェーズ2)を進めています。

*1 1ポンド=134円で換算

【用語解説】

1)英国国立原子力研究所(NNL)
燃料製造及び発電から再処理や廃棄物処理・処分を含む、全ての核燃料サイクルを網羅する幅広い研究開発を実施し、原子力業界全体に技術サポートを提供できる英国で唯一の機関です。原子力機構(当時は核燃料サイクル開発機構)は、2001年にNNL(当時は英国核燃料会社(BNFL))との間で以下の分野を含む包括的な技術協力取決めを締結しています。

① 原子力研究開発に係る先進技術のプログラム、計画、戦略
② 先進核燃料サイクル技術
③ 高速炉技術
④ 放射性廃棄物管理技術
⑤ 高温ガス炉技術(※今回追加)

https://www.nnl.co.uk/

2)新型モジュール炉(AMR; Advanced Modular Reactor)
英国では、小型モジュール炉(SMR; Small Modular Reactor)は軽水冷却によるもののみを意味します。他方、高温ヘリウムガス、ナトリウム、溶融塩等、軽水以外を冷却材として利用するものは新型モジュール炉(AMR)として分類し、SMRとAMRを明確に区別しています。

3)高温ガス炉<
① 化学的に不活性なヘリウムガスを冷却材として用いており、冷却材が燃料や構造材と化学反応を起こさないこと、
② 耐熱性に優れたセラミック被覆粒子燃料を用いており、1600℃の高温まで核分裂生成物(FP)を保持する能力に優れていること、
③ 出力密度が低く(軽水炉に比べ1桁程度低い)、炉心に熱容量の大きい黒鉛等を大量に用いているため、万一の事故に際しても炉心温度の変化が緩やかで、燃料の健全性が損なわれる温度に至らないこと、
④ 黒鉛構造物の高い熱伝導、原子炉圧力容器内の冷却材ヘリウムガス及び原子炉圧力容器外の空気による自然対流、さらに外表面からの熱放射によって、炉心の崩壊熱を除去することが可能なこと、

等の特長を持つ、安全性に優れた原子炉です。

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