2020-06-29 京都大学
西村智貴 工学研究科特定助教、秋吉一成 同教授の研究グループは、温度応答性両親媒性グラフトポリマーを開発し、この高分子が自己組織化構造を記憶する事やそのサイズを自在に制御できることを見出しました。
天然のタンパク質は、ポリペプチド鎖が折り畳まれた自己組織体で、その構造は配列に依存して一義的な立体構造を取ります。一方で、人工高分子鎖の折り畳みによる自己組織化では、そのような構造形成は困難でした。本グループでは、多糖と温度応答性高分子からなる高分子が、自発的に折り畳まれて特定のサイズのベシクル構造を形成する事、そのサイズはポリマー濃度を変える事で自在に調整できる事を見出しました。さらに、このベシクルを冷却して崩壊させても、再度温めれば全く同じサイズのベシクル構造に復元し、ベシクル構造を記憶している事を明らかにしました。
今回開発した高分子の自己組織化法は、特定の構造の分子集合体を自在に作り分ける新しい分子組織化技術を提唱するもので、ドラッグデリバリーシステムにおける優れた薬物運搬体の創出につながると期待されます。
本研究成果は、2020年6月7日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究のイメージ図