2025-02-17 京都大学
アクリル酸Naランダム共重合体の吸湿性を活かしたミクロ相分離と水を含むラメラ構造材料
高分子化学専攻の寺島崇矢 准教授、堀池優貴 修士課程学生、大内誠 教授らのグループは、アクリル酸ナトリウムをベースとする汎用的な共重合体を用いて、水を含み湿度に応答するラメラ構造をもつポリマー(高分子)材料の創出に成功しました。
寺島 准教授らのグループでは、親水性と疎水性の側鎖をもつランダム共重合体が側鎖の集合により10 nm以下のミクロ相分離構造を形成することを見いだしてきました。アクリル酸ナトリウムは、紙おむつなどに使われる高吸水性高分子の原料であり、水をよく吸う親水性基としての機能が期待されます。そこで、この特徴に着目して、アクリル酸ナトリウムと疎水性アルキルアクリレートのランダム共重合体を合成し、ミクロ相分離挙動を調べたところ、この共重合体は、外部環境から効率的に水を吸収し、水を含む親水性層と油の性質をもつ疎水性層が交互に配列したラメラ構造を形成することを見いだしました。さらにこの共重合体は、湿度に応じて可逆的に水を吸収・放出する性質をもち、それに伴いラメラ構造の間隔が1 nm以下のレベルで拡大・縮小する特徴を示しました。また、日本原子力研究開発機構J-PARCセンター/高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の青木裕之 研究主幹/特別教授との共同研究により、湿度環境においてラメラ層間に水が吸収され、それと同時にラメラ構造が形成されることを明らかにしました。このラメラ構造ポリマーは、水を含んだ状態で柔軟な膜になり、湿度に応答して可逆的に形態が変化するフィルム材料として応用できることもわかりました。今後、水を含む親水性層を活かした様々な機能材料への展開が期待されます。
本研究成果は、2025年2月14日に米国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。
研究詳細
水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料―高吸水性高分子の特性を活かした自己組織化―
研究者情報
寺島 崇矢
大内 誠
書誌情報
タイトル Water-Intercalated and Humidity-Responsive Lamellar Materials by the Self-Assembly of Sodium Acrylate Random Copolymers(アクリル酸ナトリウムランダム共重合体の自己組織化による水を含み湿度に応答するラメラ構造材料)
著者 堀池優貴、青木裕之、大内誠、寺島崇矢
掲載誌 Journal of the American Chemical Society