2024-02-27 京都大学
図 : 開発した高出力・狭線幅フォトニック結晶レーザーの写真と内部の2次元フォトニック結晶共振器の走査電子顕微鏡写真(a)、電流光出力特性(b)、発振スペクトル (c) および 周波数雑音スペクトル(d)。8.0 Aの直流電流注入時に、5 Wという高出力と1kHzという狭固有スペクトル線幅を実現しました。
電子工学専攻の野田進 教授、森田遼平 同特定研究員、井上卓也 同助教、吉田昌宏 同助教、三菱電機株式会社の榎健太郎研究員らのグループは、フォトニック結晶レーザー (PCSEL)において、これまでの半導体レーザー素子単体では実現が困難であった高い出力と狭い固有スペクトル線幅の両立を実現しました。
スペクトル線幅とは、出力されるレーザー光の周波数(波長)の揺らぎを示す指標です。このスペクトル線幅が狭いほど、レーザー光の「純度」が高くなり、可干渉性(コヒーレンス)が増大し、光の周波数や位相などの光の波としての性質が利用しやすくなります。今回、研究グループは、直径1mmのPCSELにて、5Wという高い出力と1kHzという極めて狭い固有スペクトル線幅の両立を世界で初めて実現しました。この成果は、高出力・狭線幅なレーザー光源を必要とする、自由空間光通信(特に宇宙空間における衛星間通信)や人工衛星からの地表表面の観測(衛星搭載ライダー)などの宇宙応用、さらには、レーザー照射による原子冷却等、様々な分野の発展にPCSELが貢献可能であることを示しています。
本成果は、2024年2月26日(現地時間)に、米国科学誌Opticaのオンライン版にて掲載されました。
研究詳細
高出力と狭い固有スペクトル線幅を有するフォトニック結晶レーザーの実現 ―衛星間通信や衛星搭載ライダー等の各種応用に向けて―
研究者情報
野田 進
井上 卓也
吉田 昌宏
書誌情報
タイトル
Demonstration of high-power photonic-crystal surface-emitting lasers with 1-kHz-class intrinsic linewidths (和訳:1kHz級固有線幅高出力フォトニック結晶レーザーの実現)
著者
Ryohei Morita, Takuya Inoue, Masahiro Yoshida, Kentaro Enoki, Menaka De Zoysa, Kenji Ishizaki, Susumu Noda
掲載誌
Optica