光による磁気スイッチの新たな原理を発見 ~超低消費電力・超高速光磁気メモリーなどの実現に期待~

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2022-08-24 東北大学,科学技術振興機構,中央大学,名古屋大学

光による磁気スイッチの新たな原理を発見 ~超低消費電力・超高速光磁気メモリーなどの実現に期待~

ポイント
  • 量子揺らぎで各原子の電子スピンの向きが定まらない“量子スピン液体”物質において、スピンが交互に向いたまま凍結した“スピンの固体”である反強磁性体や弱強磁性体と同様に、光照射による逆ファラデー効果で磁化が生じることを発見した。
  • 量子スピン液体の光照射による逆ファラデー効果の大きさは典型的な反強磁性体(酸化ニッケル)の20倍にも達した。
  • 光磁化の発生機構は、従来の反強磁性体(電子スピンの配列によって磁化が発生)とは異なり、d電子の軌道角運動量が重要な役割を果たすと考えられる。この機構ではスピンを反転する必要がないため、より高速な応答が室温近傍でも期待される。

逆ファラデー効果は、光による磁化の発生や高速制御の原理として知られています。この効果は、次世代の光磁気メモリーなどに応用できると期待され、各国で研究が進められています。しかし、その対象物質は、主にスピンの方向が固定された反強磁性体や弱強磁性体などに限られおり、スピンの向きを変えるために比較的高いエネルギーが必要で、スピンの向きが変わる速度が低いことが問題でした。

東北大学 大学院理学研究科の岩井 伸一郎 教授、天野 辰哉 特任研究員、大串 研也 教授、今井 良宗 准教授、若林 裕助 教授、中央大学 理工学部の米満 賢治 教授、名古屋大学 大学院工学研究科の岸田 英夫 教授らの研究グループは、磁気秩序を持たないキタエフ量子スピン液体物質(α-RuCl)に光(円偏光)パルスを照射した瞬間、磁化が発生することを発見しました。発生した磁化の大きさは、典型的な反強磁性体の20倍にも達します。また、これまで反強磁性体などで提案されてきた機構よりも約1桁高速な磁化の制御が期待できます。

本研究成果は、米国物理学会の学術誌「Phys.Rev.Research (Letter)」に2022年8月19日にオンライン掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST 「キャリアエンベロープ位相制御による対称性の破れと光機能発現」(研究代表者 岩井 伸一郎JPMJCR1901)、および文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP) 基礎基盤研究「強相関量子物質におけるアト秒光機能の開拓」(研究代表者 岩井 伸一郎JPMXS0118067426)の助成を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Light-induced magnetization driven by interorbital charge motion in the spin-orbit assisted Mott insulator α-RuCl3
DOI:10.1103/PhysRevResearch.4.L032032
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
岩井 伸一郎(イワイ シンイチロウ)
東北大学 大学院理学研究科 物理学専攻 教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
東北大学 大学院理学研究科 広報・アウトリーチ支援室
科学技術振興機構 広報課
中央大学 広報室
名古屋大学 広報室

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